2月8日、法務大臣の諮問機関である法制審議会は、罪を犯した未成年への厳罰化を求める意見を受けて、少年法で定める有期刑の上限を15年から20年に引き上げることなどを盛り込んだ少年法の改正案を答申しました。少年に対する厳罰化の流れが今も続いています。
保育園の子どもの声がうるさいと苦情が出たり、電車内にベビーカーを入れるのはマナー違反だという声が出たりして、日本は今や子ども迫害社会」と化してしまったようです。
 
それにしても、少年に対する厳罰化はどういう理念に基づいているのでしょうか。厳罰化が正しいことなら、少年法にスライドさせて「大人法」(こんな言葉はありませんが)も厳罰化させないといけないはずです。少年だけ厳罰化して、自分たちはそのままというのは大人の身勝手でしょう。
 
少年と大人を平等に扱うべきだという理念なのでしょうか。だとすると、少年にも選挙権を与え、酒・タバコも許可し、わいせつ図画も自由に見られるようにしないといけません。権利は与えず厳罰化だけするというのは、やはり大人の身勝手でしょう。
 
法制審議会のメンバーというのは当然法曹界の人が多いのですが、犯罪者にも少年にも冷酷であるようです。おそらく今ヒット中の映画「レ・ミゼラブル」も見ていないのでしょう。「レ・ミゼラブル」を見れば、厳罰化がどういう結果を招くかわかるはずです(映画「レ・ミゼラブル」については「『レ・ミゼラブル』における寛容対不寛容」で書いています)
 
もっとも、法曹界といっても、大きくふたつに分けることができます。
ひとつは警察官、検察官、裁判官であって、これは犯罪者を刑務所に送り込む側です。
もうひとつは、保護観察官、保護司であって、これは刑務所から出た人間を世話して更生させる側です。
 
今、マスコミで取り上げられるのは警察官、検察官、裁判官という刑務所の入口のほうばかりです。刑務所の出口のほうにいる保護観察官、保護司のことはまったくニュースにもなりません。
そのため、保護観察官、保護司のことをほとんど知らない人もいるのではないでしょうか。
ウィキペディアを見ると、保護観察官は全国で約1000人しかいなくて、現場で保護観察に従事する者は約600人だそうです。これでは知られていなくて当然です。
保護司は全国で約4万9000人いるそうですが、これは無償のボランティアです。
 
保護司は刑務所を仮釈放になった者や少年院を仮退院した者の更生を手助けするわけですが、ヤクザや殺人犯の相手もしなければならず、それでいてまったく日の当たらない仕事です。最近は保護司の高齢化が進んでいるそうです(ちなみに私の母方の伯母が長年保護司をやっていたので、私にとっては比較的なじみのある仕事です)
 
刑務所の入口側は注目され、お金も人手もかけられているが、出口側はまったく注目されず、ほとんどお金もかけられていないということになります。金融危機のときに行われる異例の金融緩和を終わらせることを「出口政策」と言いますが、刑務所については「入口政策」だけあって、「出口政策」がないというわけです。その結果、犯罪は必ずしもふえているわけではないのに、厳罰化が進んで刑務所は満杯になっています。
 
ほんとうにたいせつなのは、刑務所の入口政策ではなく出口政策です。犯罪者を更生させて二度と犯罪を起こさせないようにすれば、社会の治安もよくなりますし、入口側のコストをへらすこともできます。
 
 
ところで、少年法と「大人法」を平等にするべきだと考えるなら、少年犯罪の厳罰化のほかにもうひとつやり方があります。
少年法の精神というのは「刑罰よりも保護更生」というものですから、「大人法」もこの精神に則って、「刑務所の少年院化」をはかればいいのです。こうすれば少年の犯罪と大人の犯罪が平等に扱われることになります。
 
法務省のホームページの「少年院」のトップにはこう書かれています。
 
少年たちは,少年院での教育を通して,自らの問題を見つめ,改善して社会に戻っていきます。二度と犯罪・非行を犯さないという決意を実現するためには,本人の努力のほかに,社会の人々の温かい心と 援助が不可欠です。
立ち直りつつある少年たちへの御理解と御支援をお願いします。
 
「少年」を「大人」に、「少年院」を「刑務所」に書き換えると、こうなります。
 
大人たちは,刑務所での教育を通して,自らの問題を見つめ,改善して社会に戻っていきます。二度と犯罪・非行を犯さないという決意を実現するためには,本人の努力のほかに,社会の人々の温かい心と 援助が不可欠です。
立ち直りつつある大人たちへの御理解と御支援をお願いします。