訪米した安倍首相は2月23日、オバマ大統領と会談し、共同声明を発表しました。新聞には喜色満面の顔でオバマ大統領と並んでいる写真が出ています。しかし、実際のところはどうだったのでしょうか。
 
安倍首相にとっての“成果”は、TPP交渉参加に「聖域」が認められると共同声明にうたわれたことです。これで安倍首相はTPP反対派を説得しやすくなりました。しかし、アメリカはTPPへの日本の参加を望んでいるのですから、これはアメリカにとって譲歩でもなんでもありません。
あと、北朝鮮制裁で一致したとか、原発ゼロを見直すと表明したとか、ハーグ条約加盟を約束したとか、どうでもいいようなことばかりです。
逆にマイナスなのは、普天間飛行場の早期移設を言明したことです。辺野古を埋め立てるというのは、地元も反対していますし、国際的な環境保護団体も黙っていませんし、現実にはほとんど不可能です。肝心のことで交渉することを放棄しています。
 
それでも安倍首相は、「日米同盟の強い絆は完全に復活した」と誇らしげですが、これは勘違いというしかありません。朝日新聞はこう書いています。
 
 ●「野田前首相を評価」
  安倍首相が民主党を批判して「日米の絆を取り戻す」と語る姿にも、米側は違和感をぬぐいきれない。
 
 「我々は野田佳彦前首相を評価している」。米政府関係者から異口同音に聞かれる受け止めだ。オバマ氏は任期の大半を、民主党の首相たちと付き合ってきた。最初の鳩山由紀夫元首相とは普天間問題で関係がこじれたが、菅直人元首相とは東日本大震災への対応で連携。野田前首相に対しては、普天間、TPP、ハーグ条約、エネルギーなどの問題を実務的に進めたという評価が、米政府内で定着している。これを引き継ぎ、さらに前進させて欲しいというのが米国の本音だ。
 
アメリカの安倍首相に対する評価は、今回の訪米における安倍首相の扱い方を見ればわかります。
たとえばちょうど1年前、中国の習近平氏が国家副主席の肩書きで訪米しましたが、アメリカはこんな扱いをしています。
 
ワールドウオッチ:WASHINGTON D.C. 訪米した習近平副主席と米政府の静かな駆け引き
 20120227
 中国の習近平件国家副主席(58)が2月、米国を公式訪問した。11月の米大統領選で再選を目指すオバマ大統領と、次期最高指導者と目される習副主席が、米中新時代を見据え、いかに対峙するかが1つの見所となった。
 
 ワシントンでは14日、バイデン副大統領、オバマ大統領、パネッタ国防長官との各会談や盛大な昼食会、晩餐会が用意され、「国賓」に近い厚遇となった。
 
一方、今回の安倍首相の扱いについて、中国系のニュースサイトはこんなふうに書いています。
 
安倍首相の訪米 "冷遇"される?
2013-02-23 15:13:18   
 日本の安倍晋三首相は現地時間の22日午前、アメリカのワシントンにあるホワイトハウスに赴き、オバマ大統領と会見しました。しかし、意外なことに安倍首相の今回の訪米は、一国の政府首脳の公式訪問だというのに、オバマ大統領との共同記者会見の時間も予定より短縮され、アメリカのメディアはそのライブ映像すら出していないことです。その原因はどこにあるのか?そして双方の会談はどんな結果がえられたのか?今日の時事解説は、これらのことについての当放送局記者のリポートをご紹介しましょう。このリポートは次のように書いています。
  通常では、ホワイトハウスのホームページやアメリカのニュースチャンネルは大統領と安倍首相の会見、特にこの二人の指導者の共同記者会見を生中継するはずですが、今回、この世界一の経済国と世界三の経済国の首脳の会見は、ありえないようなくらいに簡単に報道され、ホワイトハウスのホームページやアメリカのニュースチャンネルもその模様を生中継していません。
 
 米日指導者の会談後の共同記者会見の時間も短縮され、オバマ大統領と安倍首相はそれぞれ1問答えただけで、会見は幕を閉じたのです。つまり参加人数の限られた記者会見では、質問は二つだけでした。1つは、朝鮮核問題と中日間の釣魚島問題についてです。これに安倍首相は、日本とアメリカが朝鮮の挑発行為に強烈に対応し、米日同盟を基盤にして領土問題を解決したいと表明しました。そしてもう1つの質問は、アメリカ政府の財政支出の自動的削減についてだったのです。このことから、今回の安倍首相の訪米は「日帰り旅行のようで慌しくて注目されていない」と評価されました。
 
習近平氏と安倍首相を比較しては安倍首相が気の毒かもしれません。
では、野田前首相と比較したらどうでしょうか。野田前首相が昨年4月訪米したときは、オバマ大統領主催の昼食会、クリントン国務長官主催の晩餐会が行われました。なにもない安倍首相と比べると明らかに厚遇されています。
 
しかし、日本のマスコミは、昨年3月にイギリスのキャメロン首相が訪米したときはオバマ大統領主催の晩餐会が開かれたことと比較し、さらには201110月に韓国の李明博大統領が訪米したときもオバマ大統領主催の晩餐会が開かれたことと比較して、野田首相はアメリカに冷遇されたと書き立てました。
 
とすると、今回の安倍首相の訪米についてマスコミは野田前首相よりも冷遇されたと書き立てなければなりません。公式訪問ではなく非公式訪問の扱いだからこれでいいのだという考え方もあるかもしれませんが、首相の初の訪米が非公式扱いされたとすれば、やはりそれは冷遇ですし、副主席の肩書きでも国賓並みの厚遇を受けた習近平氏と比較しても明らかでしょう。
しかし、マスコミは冷遇されたとは書きません。たとえば2月24日付読売新聞社説の書き出しはこうです。
 
安倍首相に対する米政府の期待の大きさが鮮明になった。首相は政治、経済両面で「強い日本」を復活させ、その信頼に応えるべきだ。
 
なぜ現実と反対のことを書くのでしょうか。
安倍首相がアメリカから冷遇されたのは、おそらく安倍首相の尖閣問題や従軍慰安婦問題についての右翼的な姿勢がアメリカに嫌われているからでしょう。
ですから、日本の右寄りのマスコミにとっては“不都合な真実”なので書けないのです。
 
今回の安倍首相の訪米をはっきりと「冷遇」と書くかどうかで、そのマスコミの立場がわかります。