朝日新聞とベネッセが共同で行った小中学校保護者意識調査によると、土曜日も授業をする「週6日制」に賛成の回答が80.7%にのぼりました(「完全週5日制」に賛成は17.9)
こういう調査結果を見ると、「親は子の幸せを願っている」という常識がもはや通用しないと思わざるをえません。
 
学校週6日制、8割賛成 公立小中の親、教育格差6割容認 朝日新聞社・ベネッセ調査
 
もっとも、授業時間をふやすことが子どもの将来の幸せになるのだという理屈で親は自分を正当化するのでしょう。
しかし、労働と余暇もそうですが、勉強と遊びにもバランスがあります。勉強時間をふやせばいいというものではありません。
学校を週6日制に戻すなら、労働環境も週6日労働制に戻してもいい理屈です。長く働けば日本経済のためになりますし、本人も経済的に潤うはずです。
しかし、本人はいやだと言うでしょう。
子どもも同じことです。学校週6日制はいやだと言うでしょう。
 
ここには自分のことは自分で決めるという原則がありません。
親も教師も文部科学省も子どものためを考えてやっていると言うでしょうが、子どもの意志を尊重するのがほんとうの子どものためです。
 
ところで、朝日新聞とベネッセの共同調査はなぜ保護者だけを対象にして子どもを対象にしなかったのでしょうか。
いや、これは朝日とベネッセだけのことではありません。これまで文部科学省、中央教育審議会、臨時教育審議会、教育再生国民会議などが教育改革について論議してきましたが、その議論に役立てるために保護者や教員を対象にアンケートが行われたことはあっても、小学生や中学生や高校生を対象にアンケートが行われたことは一度もないはずです。
 
子どもにアンケートしても回答が信用できないからという理屈はありません。というのは、イジメや体罰などの事実関係を把握するためのアンケートは行われ、その結果は信用されているからです。
つまり、事実関係については子どもの声を聞くが、子どもの意見や要望は聞かないというのがこれまでの大人のやり方です。
 
これは明らかにおかしなことです。日本も批准している「子どもの権利条約」は「子どもの意見表明権」を規定しているからです。国を挙げて子どもの意見を無視しているのは条約違反です。
 
 
ところで、朝日新聞とベネッセの共同調査の結果が発表されたのと同じ日の朝日新聞教育欄に、ちょうど参考になる記事が載っていました。高校生に政治や社会の問題について意見を言わせるという授業が行われているという記事で、そこから大阪府立緑風冠高校の教諭佐藤功(52)の授業の部分だけ引用します。
 
(教育あしたへ 先生の挑戦:4)改憲・竹島、直球で議論 考える主権者育てる
 佐藤には定番の手法がある。新聞記事やビデオで説明し、意見を書かせる。自分の考えは述べない。生徒の声のいくつかを選び、賛否に分かれて紙上討論を重ねる。
 橋下徹が大阪府知事時代に主導した府教育基本条例案を取り上げた一昨年秋の授業でも、この手法を使った。当時の条例案は学力テストの学校別の結果公表や、保護者による校長、教員の評価を盛り込んでいた。生徒は書いた。
 「他国との競争に勝たないといけない。学力向上は必要」「『格差を受け入れてでも秀でた者を育てる必要がある』というのはおかしい」
 多くの生徒の賛意を集めた意見は「一番影響を受ける高校生に話もせずに条例案を通そうとするのが、一番意味不明」だった。
 「では、実際に条例を作った人に聞いてみよう」と佐藤が昨年企画したのが、大阪維新の会の府議と条例の内容を懸念する教師とのシンポジウムだ。高校生からも意見が出た。「学校評価を僕らがやっちゃダメなんですか?」
 
大人よりも子どものほうがよほどわかっています。
 
大人だけで教育改革を議論していても、これまでがそうだったように絶対にうまくいきません。
女性の生き方を男性だけで議論して決めようとしても絶対うまくいかないのと同じです。
 
いや、これは奴隷制にたとえたほうがいいかもしれません。
奴隷農場の農園主は奴隷の待遇について頭を悩ましたでしょう。あまりに悪い待遇では奴隷の働きが悪くなりますし、よい待遇にすると利益が少なくなります。そんなとき、農園主同士で話し合うことはしたでしょうが、奴隷に要望を聞くことはしなかったでしょう。一度要望を聞くと、奴隷がどんどん要望をエスカレートさせてくるかもしれないからです。
 
今、子どもに教育についての要望を聞かないのも、今の教育制度は子ども奴隷制みたいなものだからです。
 
教育改革を議論するなら、まず子どもの意見表明権を尊重して、さらに子どもを人間として尊重する制度にしていかなければなりません。