安倍首相はなかなかやります。表情を見るとお腹の調子もいいようです。私は彼を見くびっていました。反省します。
しかし、歴史認識は相変わらずお粗末です。安っぽい右翼雑誌で読んだことを鵜呑みにしているからでしょうか。
 
安倍首相は国会答弁で「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と述べました。「言葉の定義」を持ち出すのは、「証拠がない」と並んで、真実を認めたくないときの常套手段です。
 
これについては朝日新聞の読者投稿欄「声」(4月30日朝刊)にこんな意見が載っていました。
 
安倍首相は侵略解釈を改めよ 無職 三浦永光(埼玉県志木市 74)
 
 安倍晋三首相は22日、先の日本のアジア諸国に対する侵略と植民地支配の責任を認めた村山談話を「そのまま継承しているわけではない」と述べ、また23日、「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国の関係でどちらから見るかで違う」と語った。
 
 しかしこれは事実に反する。国連総会は1974年に「侵略の定義に関する決議」を採択しており、「侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全もしくは政治的独立に対する……武力の行使であって……」など、8条にわたって規定している。これは諸国間で「侵略した」「いや、侵略していない」の争いが生ずるのを防ぐために、統一的な定義を定めたものだ。
 
 また、日本は51年のサンフランシスコ講和条約でアジア太平洋戦争での日本の侵略を裁いた極東国際軍事裁判の判決を受け入れることを明言した。安倍首相の発言はこれらの事実を無視するものだ。中国・韓国が、安倍首相が日本の侵略を否認した発言として反発したのも無理はない。安倍首相は日頃、各国が「国際社会のルール」や「国際法」にのっとって行動すべきことを内外に語っている以上、今回の発言を訂正すべきではないだろうか。
 
国連の「侵略の定義に関する決議」については簡単に検索できます。
 
「侵略の定義に関する決議」
 
また、この決議があるのだから安倍首相の言っていることは間違っていると指摘するブログもいくつもあります。
しかし、マスメディアはこのことを指摘していないのではないでしょうか。おかしな話です。
 
 
安倍首相はまた、こんなふうにも語りました。
「韓国では、靖国について抗議をし始めたのは、いったい、いつなんですか。盧武鉉(ノ・ムヒョン)時代が顕著になったわけでございまして。金大中(キム・デジュン)時代にも、少しありました。それ以前には、ほとんどないんですから。中国においても、そうです。いわゆるA級戦犯が合祀された時も、彼らは、その時の総理の参拝について、抗議はしていなかった。ある日突然、抗議をし始めたわけであります」
 
しかし、これについては韓国の「中央日報」がすぐさま反論する内容の記事を書きました。
 
しかし安倍首相の主張は事実に反する。日本首相の靖国参拝は、初めて公式参拝を宣言した1985年8月15日の中曽根康弘首相から01年の小泉純一郎首相までの16年間、96年の橋本龍太郎首相の1回を除いて一度もなかった。それも自分の誕生日(7月29日)に私的に参拝した。副総理と外相がこの期間に参拝した例も2回にすぎない。
 
  韓国政府も85年の中曽根首相の靖国参拝を、当時の李源京(イ・ウォンギョン)外交部長官が正式に問題に取り上げた。96年の橋本首相の参拝当時は、外務部が公式的に遺憾論評まで出した。
 韓国政府のある当局者は「行かない時は(問題提起)せず、行くから問題提起したが、『以前は抗議せず最近になって抗議を始めた』というのは話にならない」と述べた。
 
安倍首相はなぜ事実を確かめもしないで国会で答弁したのでしょうか。
私の記憶でも、中国や韓国が「ある日突然、抗議をし始めた」などということはありません。すべては中曽根康弘首相の靖国神社公式参拝から始まったのです。
 
それ以前にも三木武夫首相が「私人として」参拝したり、福田赳夫首相が「私人として」と断りながら公用車を使って「内閣総理大臣」と記帳して参拝したりして、多少は問題になっていましたが、その後、靖国神社がA級戦犯14人を合祀し、自民党が1980年の参院選の公約に「公式参拝」「国家護持」を掲げたことで政治の争点となり、1985年8月15日、中曽根康弘首相が「公式参拝」を公言して玉串料を公費から支出して参拝したことで大問題になりました。
(「靖国神社をめぐる出来事についての年表」を参照しました)
 
つまり、そもそもは自民党の仕掛けで日本で問題になったので、それを見て中国、韓国も問題にするようになったのです。
 
中には「日本のマスコミが騒ぐので、中国、韓国が抗議するのだ」ということを言う人もいますが、「首相が公式参拝をしたために、日本のマスコミが騒ぐので、中国、韓国が抗議するのだ」というのが正しい表現です。
 
安倍首相の間違った認識について、韓国の「中央日報」はすぐにそれを指摘しましたが、日本のマスコミは、私の知る範囲ですが、指摘していないように見えます。
 
「選択」5月号に『安倍とメディアの醜悪な「蜜月」』と題する記事があり、今既存メディアは、安倍内閣が驚異的な支持率を維持していることと、「安倍批判」をしてアベノミクス効果で上昇に転じた景気を悪化させたら「戦犯」と批判されかねないという不安があるために「安倍批判」がしにくくなっていると書かれていました。
 
むりに「安倍批判」をすることはありませんが、安倍首相が間違ったことを言ったら、それを指摘するのは当然です。そして、安倍首相も間違った発言を訂正するべきです。そうでないと、国民は間違ったことを正しいと思い込んでしまいます。