私は前に、小選挙区制だと二大政党制ではなく一大政党制になるはずだと書いたことがありますが、ほんとうにそうなってしまいました。
小選挙区制は優勢な党が総取りにできるという制度ですから、一大政党制になるのが自然です。アメリカやイギリスが二大政党制なのは、そうなるような文化風土があるからです。日本にそういうものはなく、むしろ「長いものには巻かれろ」という国民性ですから、どうしても一大政党制になってしまいます。
 
選挙制度というのは一長一短で、どれがよいとはなかなか決められません。それなのに最終的に小選挙区制(正確には小選挙区比例代表並立制)にしたのは、二大政党制がいいということになったからです。なぜ二大政党制がいいということになったかというと、結局のところアメリカやイギリスに対するコンプレックス、とりわけアメリカに対するコンプレックスからではないでしょうか。
 
対米コンプレックスや対米従属は、日本の政治を理解するときの最大のキーワードです。
 
たとえば、日本維新の会は「首相公選制」を公約に掲げていますが、これはアメリカの大統領制に対するコンプレックスでしょう。日本は長年議院内閣制でやってきたのですし、イギリスだってそうなのですから、首相公選制などというへんな制度にする必要はないと思われます。
「官邸主導」ということもよくいわれますが、これもやはり首相官邸をホワイトハウスのようにしたいということでしょう。
 
また、「道州制」ということもよくいわれます。これは日本維新の会だけでなくみんなの党も公約にしています。道州制にしたらなにがどうよくなるのかわかりません。やはりこれも対米コンプレックスではないでしょうか。
 
安倍内閣は「国家安全保障会議」の設置を目指しています。これは別名「日本版NSC」といわれるように、アメリカのNSC(National Security Council)を模したものです。日本にはすでに「安全保障会議」があるのですから、わざわざ「日本版NSC」をつくる理由がよくわかりません。安全保障に関してはアメリカのほうが進んでいるという、やはり対米コンプレックスでしょうか。
 
ちなみに1992年に「証券取引等監視委員会」という機関がつくられましたが、これは「日本版SEC」といわれるように、やはりアメリカの組織を模したものです。
 
また、日本は先進国では珍しく死刑制度を維持している国ですが、これもアメリカの真似としか考えられません。
 
きわめつけは「日本版海兵隊」の構想でしょう。こんな報道がありました。
 
自衛隊に海兵隊機能整備=新大綱へ中間報告-防衛省
 新たな防衛計画大綱の策定に向け、防衛省がまとめた中間報告の概要が24日、分かった。自民党が6月に出した提言に沿って、離島防衛のための「海兵隊的機能」を整備する方針を明記。一方で、提言にあった「敵基地攻撃能力」については具体的な言及を避けた。省内検討委員会の委員長を務める江渡聡徳副大臣が26日、小野寺五典防衛相に報告する。
(後略)
 
旧日本軍には「海軍陸戦隊」というのがありました。上海事変などで活躍しています。日本の伝統を無視して「海兵隊」などという言葉を使うのは情けない限りです。ちなみにウィキペディアによると、中国や台湾では今でも「海軍陸戦隊」という言葉を使っています。
もっとも、アメリカの海兵隊というのは世界でも特殊なものですから、この場合は「海兵隊」という言葉がふさわしいのかもしれません。しかし、今ではアメリカでも海兵隊というのは時代遅れと見なされています。なんでもアメリカの真似をすればいいというものではありません。
 
今の日本人は、アメリカのものがなんでも優れているという感覚はないと思います。これは日本の政治家と官僚における特殊な感覚ではないでしょうか。
 
私は宮崎駿監督の「風立ちぬ」を見て、あのころはなんでも欧米の真似をしていたのだなということを改めて思いました。
日本の海軍はイギリス式で、陸軍はドイツ式でした。そのため海軍と陸軍は水と油みたいになってしまいました。
帝国憲法はドイツ式ですし、郵便制度はイギリス式です。
要するに明治以来の日本は、何でも欧米から学んで取り入れていたのです。それが政治家と官僚の習い性となって、今も残っているのではないでしょうか。
 
もっとも、昔はイギリス、ドイツ、フランスなどから、いちばんよいと思われるものを取り入れていました。
今はもっぱらアメリカから取り入れています。
 
優れた組織や制度なら取り入れていいのですが、二大政党制のようなものは、国民性とか国の文化風土とかにかかわってきますから、うまく取り入れられません。一神教と善悪二元論の国と、八百万の神がいて「善人なおもて往生すいわんや悪人をや」という国ではぜんぜん違います。
今の選挙制度は、対米従属しか考えない政治家や官僚の失敗作ではないでしょうか。
 
ところで、対米関係においては、「年次改革要望書」というものがあり、日本が毎年アメリカから出される要望に応え続けてきたというのは、知る人ぞ知るですが、今回調べてみると、「年次改革要望書」は鳩山政権のときに廃止されていました。
鳩山由紀夫氏が徹底的に叩かれる理由と、安倍政権が集団的自衛権などでアメリカへの忠勤に励む理由がわかった気がします。