前回の「気恥ずかしい『おもてなし』」という記事を書いたあと、いろいろと考え直すことがありました。
 
その記事で、滝川クリステルさんがプレゼンで言った「おもてなし」という言葉に違和感があると書きましたが、そのときは自分自身が国際感覚のない人間なので、もしかして自分の感じ方がおかしいかもしれないという気がして、歯切れの悪い書き方になってしまいました。しかし、よく考えてみると、やはり「おもてなし」という言葉をプレゼンで打ち出すのはへんです。
 
そもそも日本人は外国人と接するのが苦手です。親切心はあっても、シャイな上に英語が下手なのです。英語で道を聞かれると逃げてしまう人もいるぐらいです。庶民的な飲食店や商店も外国人に対応できない場合が多いと思います。「おもてなし」を期待した外国人がたくさん来日すると、多くの日本人が困ってしまいます。そういう意味で、「おもてなし」の言葉や、それを外国人にアピールするクリステルさんの姿に違和感を覚えてしまうのです。
 
それに、わざわざ日本語の「おもてなし」という言葉を使ったのは、外国人の持つゲイシャ・ガールのイメージや、映画「ショーグン」の島田陽子さんのイメージなどを利用しようという狙いがあったのではないでしょうか。つまり外国人の持つ日本人のイメージに合わせているわけで、そういう意味では、長友選手がお辞儀パフォーマンスをするのに通じるものがあり、それも不愉快に感じる理由だと思います。
 
ですから、私が「おもてなし」に違和感や恥ずかしさを覚えたのは、それなりに正当性があると思います。
 
 
それから、私は1964年の東京オリンピックの経験を念頭にいろいろ考えたのですが、さすがに50年近くたつと世の中変わってしまいます。なにが変わったかというと、昔の東京オリンピックのときは日中も日韓も国交回復以前だったので、中国や韓国からの来訪客はほぼゼロでした。ほかのアジアの国も貧しかったので、ゼロに近かったでしょう。要するにオリンピック観戦にくる外国人のほとんどは欧米人だったのです。
そのため私は、オリンピックにくる外国人というとどうしても欧米人を連想してしまいました(クリステルさんらのプレゼンも主に欧米人を意識したものでした。IOC委員は欧米人が多いからです)
 
しかし、2020年の東京オリンピックに来る外国人は、圧倒的に中国韓国を中心とするアジア人になるはずです。
ちなみに今年の1月から7月までの訪日客の国別ランキングは次のようになっています。
 
韓国 26.3%
台湾 21.3%
中国 11.4%
米国 7.9%
香港 7.1%
 
7年後にはもっとアジア人の比率がふえているはずです。
ですから、「おもてなし」の対象も、ほとんどアジア人になるのでした。
 
ともかく、2020年の東京オリンピックは、2018年に韓国の平昌で行われる冬季オリンピックと併せて「アジアの時代のオリンピック」と位置づけられるでしょう。
ですから、日本はオリンピックのためにも中国韓国との関係改善をはからねばなりませんし、すでにそういう動きも出ています。しかし、これは嫌韓・嫌中の人にはがまんができないようです。
 
 
日韓が五輪で「全面協力」の報道、18年冬季と20年夏季 ネットでは「ふざけるな!」と大荒れ「祭り」に
 
   日本と韓国が2018年に韓国の平昌(ピョンチャン)で開催される冬季五輪と、20年の東京オリンピックで成功に向け「全面協力」を行うと2013910日に報道された。
 
   ネットではこの報道に対し批判が渦巻いていて、掲示板「2ちゃんねる」では「ふざけるな!」「韓国に食い物にされるだけ!」などといった書き込みが大量にあふれ盛大な「祭り」に発展している。
 
冬季オリンピック2度開催の日本は韓国にノウハウを提供
 
   共同通信などによれば、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長と韓国オリンピック委員会(KOC)の金正幸会長が1399日にブエノスアイレスで会談し、18年の冬季五輪と20年の夏季五輪を成功させるため全面的に協力することで合意した、と報道した。日本は冬季オリンピックを2度開催しているためそのノウハウを韓国に提供。韓国は12年のロンドン五輪で日本の倍近い金メダルを獲得した実績があり、両国の選手の交流を進めることで日本選手の実力アップを図ることなどが狙いだと書いている。
 
   両国の政治的関係がしっくりいっていない現状はあるが、スポーツは別で、むしろこうした協力は、
 
「両国の関係を好転させることができると確信する」
 
と韓国の金正幸会長が述べているのだ。
 
   朝日新聞も同日付の社説で、五輪は「平和の祭典」だから外交関係が揺れる中国や韓国ともわだかまりなく交流できる雰囲気作りは欠かせないし、18年には平昌で冬季五輪があるからこの好機を逃さずに官民挙げての友好をめざしたい、と手を取り合って互いのオリンピックを成功させようと呼びかけている。
 
   ところがネットでは、朝日新聞の社説とJOCKOCの「全面協力」の記事について大反発が起こっていて、掲示板「2ちゃんねる」の「祭り」に発展。JOCや共同通信、東京都庁、文部科学省の電話番号やついったーアカウントを晒して「抗議をしよう」など大荒れの状況だ。
 
韓国では今も「東京五輪は中止させるべき」と言っていると反発
 
   ネットには、
 
「日韓戦で日本人が韓国人から暴行受け続けている。今回も五輪招致で妨害受け、いままでの借金もかえさない連中に、なに媚売ってんだ!」
 「韓国は東京五輪をボイコットするんじゃなかったの?あれだけ妨害活動しておいて、今でもクサしているじゃないか」
 「竹田会長はバカですか?後ろからバットで殴ってきた国となに協力なの??」
 「また金を融資してもらい、ほとぼりが冷めたら反日を繰り返すだけの連中。その前に仏像を返せ」
 
などといった書き込みが出ている。
 
   また、東京オリンピック開催が決まった1398日から韓国内で「東京五輪は中止させるべき」「世界各国にボイコットさせよう」などといった呼びかけが起こり、福島第一原発の汚染問題を皮肉った東京五輪を蔑むようなパロディポスターが作られているとネットで取りざたされ、いくつもの写真がアップされている。夏季オリンピック開催地の決定直前に韓国は、東京電力福島第1原発の汚染水漏洩問題を理由にし、日本の8県から水産物輸入を全面的に禁止すると発表したことなども、「全面協力」を否定する感情を生んでいるようだ。
 
   もっとも韓国政府は東京開催の決定を受け、劉震竜(ユ・ジンリョン)文化体育観光相が下村博文文部科学相に祝電を送り、また、李丙ギ(イ・ビョンギ)駐日韓国大使も岸田文雄外相に五輪開催決定を祝うメッセージを送ったと報道されている。
 
ともかく、嫌韓嫌中の人にはこれから逆風が吹きそうです。日本は中国や韓国にオリンピックをボイコットされては困りますし、できるだけたくさんの客に来てもらわなければなりません。嫌韓嫌中の主張は、「オリンピックを成功させたくないのか」と反論されるとやりにくくなります。
 
「おもてなし」の言葉は嫌韓嫌中の人たちにこそ有効かもしれません。