政治の世界では「国のかたち」という言葉がよく使われます。もとは司馬遼太郎のエッセイ「この国のかたち」からきているのではないかと思いますが、安全保障政策、統治機構、国家元首などが「国のかたち」を決める上で重要なこととされています。しかし、今挙げたことは「国のかたち」の上部構造です。
もちろん重要なのは下部構造です。
 
マルクス主義によると、生産関係が下部構造です。しかし、マルクス主義の退潮により、今では生産関係の重要性が忘れられています。そのため、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなるという格差社会化が進行しています。そして、貧しい者は「自己責任」や「努力不足」のせいにされています。
マルクス主義は「存在が意識を規定する」という考え方ですから、なにかを個人の意識のせいにするということはありません。その意味でも、マルクス主義の価値は見直されていいはずです。
 
ただ、私の考えでは、ほんとうの下部構造は人と人との関係です(そういう意味では生産関係は中間構造になります)
人と人との関係といってもいろいろありますが、もっとも根底にあるのは、親と子の関係と男と女の関係です。
人間は、子どものとき親に愛されて育ち、おとなになると異性を愛し、子どもが生まれると子どもを愛し、その子どもがおとなになると……ということを繰り返しており、このあり方こそが「国のかたち」を根底から決定しています。
 
親子関係や異性関係は多分に本能に規定されているのですが、人間の場合は文化によって変わっていきます。
 
日本では、親子関係、大人と子どもの関係がどんどん子どもにとって抑圧的になっていっているのではないかと私は感じています。
親が子どもをしつけるやり方がきびしくなりすぎて、ひどいときには虐待に至りますが、虐待とは認識されなくても、毎日子どもを叱ってばかりという親が少なくないような気がします。
学校も子どもに抑圧的になりすぎて、イジメが多発するのもその結果でしょう。
 
とりわけ、子どもが道路や公園で遊んでいるとうるさいと苦情が出るなど、子どもの存在そのものを嫌うおとながふえているような気がします。
 
もっとも、これは外国と比較しないと正しい評価ができないことになりますが、「発言小町」という掲示板に、こんなトピックが立てられていました。
 
 
乳幼児連れに優しい国はどこですか?  星の子 2013103 19:37
 
 私は現在シンガポールで子育てをしています。シンガポール国民は全体的にとても乳幼児連れに優しく、子連れの外出が本当にしやすいので助かっています。以下は具体的にシンガポールが乳幼児連れに優しいと感じる点。
 
1. 子供を抱っこして電車に乗ると席を譲ってくれる人が多い。さらに、ベビーカーに子供を乗せていても、席を譲ってくれようとする人がけっこういる。もちろん電車でベビーカーに乗るのはOK(バスはベビーカーを畳まないといけません)。男性が子供を抱っこしている場合も、譲ってくれる。
 
2. ほとんどのレストランは乳幼児連れOKで、どこでもハイチェアがある。(超高級レストランは分からないが、ホテルのレストランやちょっと高級なお店はたいていOK)
 
3. レストラン等で多少子供がぐずっても誰も見てこない。乳幼児は泣くのが普通という感覚なので、誰も気にしない。店員さんがあやしに来てくれるお店も多い。
 
4. 乳児連れのママがレストランやカフェで授乳をしても(授乳ケープは使用)誰も何も言わない、気にしない。(私はしませんでしたが、本当にたくさんいます)
 
 
これに対し、日本はとても乳幼児連れに厳しい印象で、たまの一時帰国の時は戸惑うことが多いです。ちなみに、シンガポールは日本より少子化問題は深刻で、出生率も日本以下です。
 
以上は前置きで、皆様に質問です。単なる興味なのですが、世界は広いので他にも乳幼児連れに優しい国はたくさんあると思います。よろしければ、国名と具体的な例を教えて頂けないでしょうか?インフラが充実しているという点ではなく、国民の優しさという点でお願いします。また、一度きりの体験ではなく、社会全体の傾向でお願いします。
 
 
このトピックに対して、現時点で70余りのレスがついています。実際に読んでもらったほうがいいのですが、簡単にまとめると、外国のほうが子どもにやさしいし、子ども連れにもやさしいという声が圧倒的です。とくにイギリス、韓国の評価が高く、あと中国、アメリカ、北欧などが続く感じです。ただ、フランスについてだけ子どもに冷たいというような声がありました。
 
日本を擁護する意見もいくつかありますが、それらは外国と日本の子育てを体験的に比較したものではなく、日本が批判されることに対する“愛国的”反発からきているもののようです。
 
「ベビーカー論争」が起こるだけでも日本が子ども連れにやさしくない国だということがわかるという意見も複数ありましたが、日本の満員電車など過密社会にも原因があると指摘する声もあります。
 
私が興味深かったのは、外国で子ども時代を送った人からの次のレスです。
 
 
子供目線ですが フランダース 20131021 22:50
 
チョコとワッフルとビールで有名な国で育ちました。親は育てやすかったと言ってます。他の国同様で、席を譲ってくれた、ベビーカーを運んでくれたなどなど。
 
でも、子供目線からすると物心ついた頃から周りの大人は厳しかったなーという印象がありました。バスの中でちょっと大きな声で姉と話していると、全員かと思うほど乗客皆から静かにっ!と叱られ睨まれました。席に座ってると、子供は立ちなさい!と言われたり。怖かったけど、社会マナーは随分早くから身についたように思います。
 
日本人は優しくないというけれど、そういう他人からの躾的な厳しさもないですよね。バスの中で静かにしなさい!なんて言おうものなら、これだから日本は子育てしにくい…とまた言われそうです。
 
 
私自身も、日本では公共の場でぐずったり騒いだりする子どもをときどき見かけますが、外国ではほとんど見た記憶がありません。とくに欧米の子どもはおとなしいなという印象を持っています。
欧米では社会全体で子どものしつけをしているということでしょうか。
 
それと、このことからもうひとつ感じたのは、日本人は子どもをしつけるのがへただということです。
たとえば、日本で子どもが騒いでいると、親が甘やかしているからだ、もっときびしくしつけるべきだということになります。具体的には子どもを叱れということです。
しかし、「叱らない子育て論」があるように、しつけとは叱ることばかりではありません。やさしく言い聞かせる、あるいは周りが迷惑に思っていることを示すというやり方もあるわけです(公共の場で叱ると、それも迷惑です)
 
この点については、欧米と欧米以外では違うかもしれません。私は、欧米では子どもをきびしくしつける伝統があると思っています。
ですから、幕末や明治初期に日本に来た欧米人はこぞって「日本は子どもの天国だ」と言って驚いたわけです。
 
それが今では、地獄とは言わないまでも、天国から落っこってしまいました。
 
明治以降、日本は欧米をモデルにしてきびしい子育てを取り入れてきました。「体罰」などもそうです。
いわば自分で自分を天国から追放してしまったのです。
しかし、今では欧米よりも日本のほうでひどい体罰が行われているようです。
本家を追い越してしまった格好です。
 
最近話題の「ヘイトスピーチ」にしても、私は子どもの育て方と関係していると思っています。子どもを叱る言葉と「ヘイトスピーチ」は似たようなものです。
 
「世界でいちばん子どもにきびしい国」というのが今の日本の「国のかたち」です。
ここからいかに脱却するかが日本にとっていちばんたいせつなことではないかと思います。