特定秘密保護法案が12月6日深夜、参議院本会議で可決され、成立しました。
反対運動は終盤になってから盛り上がりましたが、遅すぎました。
これも推進派の計算のうちでしょう。スパイ防止法案は反対運動が高まったために廃案になったので、今回は時間的余裕を与えない作戦だったと思われます。
そして、こうした作戦が可能だったのは、特定秘密保護法案がきわめて難解につくられていたからです。
 
私はブログを書いている立場から、できるだけ原資料に当たるように心がけているので、特定秘密保護法案の全文に目を通そうと思いましたが、あまりにも難解でぜんぜん頭に入ってきません。しかも、法案全体が長いので、これを理解するのは至難の技だと思いました。
法律というのはだいたいむずかしい言い回しになっているものですが、この法案は特別で、わざとむずかしくしているのではないかと思いました。
 
【特定秘密保護法案全文】
 
特定秘密保護法4党修正案の全文
 
[特定秘密保護法(秘密保全法) 資料]
 
どんなふうにむずかしいか、適当なところを一箇所だけ選んで引用してみます。
 
4 行政機関の長は、指定をした場合において、その所掌事務のうち別表に掲げる事項に係るものを遂行するために特段の必要があると認めたときは、物件の製造又は役務の提供を業とする者で、特定秘密の保護のために必要な施設設備を設置していることその他政令で定める基準に適合するもの(以下「適合事業者」という。)との契約に基づき、当該適合事業者に対し、当該指定をした旨を通知した上で、当該指定に係る特定秘密(第八条第一項の規定により提供するものを除く。)を保有させることができる。
 
5 前項の契約には、第十一条の規定により特定秘密の取扱いの業務を行うことができることとされる者のうちから、同項の規定により特定秘密を保有する適合事業者が指名して当該特定秘密の取扱いの業務を行わせる代表者、代理人、使用人その他の従業者(以下単に「従業者」という。)の範囲その他の当該適合事業者による当該特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める事項について定めるものとする。
 
法案のほとんどがこの調子で書かれているので、なかなか全体を理解することができませんし、どこに問題があるのかを把握することもできません。
新聞社が捜査の対象になるとか、一般人も処罰されることがあるといったことは、かなりあとになってから指摘されるようになりましたが、それはこの法案全体がわかりにくくなっているからではないかと思います。
森雅子特定秘密法案担当大臣は弁護士出身ですが、それでも自信なさげな態度で、官僚に教えられながらの答弁だったのは、法案が複雑すぎてよく理解できていないからではないかと思われます。
 
「報道ステーション」で朝日新聞の政治部の記者がいっていましたが、この法案をつくったのは内閣調査室と警察の官僚だそうです。
日本では、文系でいちばん優秀な人は東大法学部から官僚になりますが、その優秀な頭をまったく逆方向に使っているのはなさけない限りです。
 
こうした法案をつくるときは、「情報公開の原則」と「特定秘密の指定」という相反する概念の折り合いをどうつけるかがいちばん肝心なところで、ここに明快な線が引ければすっきりした法案がつくれるはずですし、そういうところに優秀な頭脳を使ってほしいものです(ツワネ原則がそういうことを定めているはずです)
しかし、官僚の頭に「情報公開の原則」という概念がないので、「行政機関の長」が自由に秘密を指定できるという法律になってしまいました(今になって第三者機関をつくるかどうかという話になっています)
 
この法案に賛成している人は、政治家、官僚の「行政機関の長」とその下の役人を信頼している人なのでしょうが、おめでたいというしかありません(あるいは政治家、官僚と利益を共有している人なのでしょう)
 
 
しかし、法案に反対している人も、その反対理由を明確に示しているとはいえないようです。そのため一般の人に対する説得力がありません。
たとえば、2ちゃんねるにこんな書き込みがありました。
 
スパイやテロリストじゃなければ、反対する理由がないんだよね
だから一般人は反対せず、マスゴミが騒ぐだけ。
 
池上彰氏のニュース解説はわかりやすいので定評がありますが、特定秘密保護法案についてこんなふうにいっています。
 
池上彰 秘密法案は「情報独占=権力」
2013126
 
 ジャーナリストの池上彰氏(63)が6日、都内で、ビジネス誌「日経WOMAN」が今年活躍した女性を表彰する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2014」のゲスト審査員を務め、特定秘密保護法案について“解説”した。
 
 可決を急ぐ与党に対し、「議論は必要」と語った池上氏。小学校3年生から同法案について「教えて欲しい」と手紙を受け取ったといい、「情報を独占して力を持ちたい人がいるためにこのようなことが起こっています。情報を公開して判断するのが民主主義。可決されても声を上げていくことが大切です」と返信したと打ち明けていた。
 
 なお大賞は、2020年東京五輪招致に貢献したパラリンピック陸上走り幅跳び・佐藤真海(31)が受賞した。
 
池上彰氏の言葉は確かにわかりやすいですが、それでも肝心のところを「情報を独占して力を持ちたい人」とぼかしています。
一般のマスコミの反対論はもっとぼかしているので、さらに説得力がありません。
マスコミは官僚依存体質ですから、官僚批判ができないのです。
特定秘密保護法案の成立を許してしまったのも、マスコミにとっては自業自得というところかもしれません。
 
 
特定秘密保護法案が成立すると日本は戦前のような暗い時代になってしまうと心配する人がいますが、私はそれほどのことにはならないと思います。
私が高校生のとき、「建国記念の日」が制定され、これは紀元節の復活で戦前のような社会にするつもりだということで反対の声が上がり、私の高校では民青系の生徒が同盟登校を呼びかけるということがありました(当時の京都では共産党の勢力が強大でした)。しかし、結局のところ建国記念の日によって日本が戦前の社会のようになったということはほとんどないと思います。
「海の日」が制定されたときも、この日は明治天皇が汽船明治丸で横浜に帰着した日にちなんでいるということで、やはり戦前的なものの復活につながるという反対の声がありましたが、今になってはただの国民の祝日でしかありません。
 
安倍首相ら一部の政治家には戦前回帰の思想傾向があると思いますが、そういう方向に国民の意識を動かすことはできないと思います。
 
私は、特定秘密保護法案は官僚・役人の利益を守る法案で、国民の利益と相反するのでよくないと思っていますし、今後はそういう観点から改正を目指すべきだと思います。