猪瀬直樹東京都知事が徳洲会グループから5000万円を受け取っていたことが問題になっていますが、これは検察特捜部が徳洲会グループの選挙違反を摘発したことから出てきた情報です。普通、選挙違反の捜査は警察の領分で、特捜が手がけるのは異例です。特捜は、厚労省の村木厚子局長に対する冤罪事件、フロッピーディスク改ざん事件、小沢一郎氏に対する裏金捜査の不発などで続けざまにミソをつけて信頼を失っていましたから、これは「特捜のリハビリ」だということをいう人もいます。
で、今のところは特捜の狙い()通りにマスコミは踊ってくれています。猪瀬都知事の金銭問題は別にして、徳田毅衆議院議員や徳洲会の選挙違反はそれほど騒ぐ問題かと思います。
 
それはともかく、私は徳田虎雄徳洲会前理事長の姿をテレビニュースで見て、その存在感の強烈さに圧倒されました。
 
徳田虎雄氏は筋萎縮性側索硬化症という難病で、体を動かすこともしゃべることもできず、人工呼吸器につながれて生きています。この病気は脳の機能にはほとんど影響がないらしく、徳田虎雄氏は文字盤を目で追うことで意志表示をし、それで徳洲会グループの指揮を取っていたそうです。
体が動かず、しゃべることもできないのに、なおかつ徳洲会グループを支配することができたのは、徳田虎雄氏の「人間力」みたいなものが強烈だったからでしょう。
「人間力」という言葉はいい意味で使われることが多いので、ここは「動物力」といったほうがいいのかもしれませんが。
 
医大を出たとはいえ貧しい家に生まれた徳田虎雄氏が一代で日本最大の病院・医療事業グループを築くことができたのは、本人によほどの能力があったからでしょう。
この場合の能力は、もちろん知力、体力も含みますが、それ以外に、対人関係において人を圧倒する力があったからではないかと思われます。
私が人生の過程でもし徳田虎雄氏と出会っていたら、この人は敵にしたくない、この人とは争いたくないと思ったでしょう。こうした人は言いだしたら聞かないので、もし対立したらこちらが折れるしかないからです。その代わり、味方になると心強いですが。
 
特捜が狙うのはほとんどがこうしたタイプの人間であるようです。
 
たとえば小沢一郎氏も徳田虎雄氏と同じ雰囲気を持っています。
小沢一郎氏は二代目政治家なので出自は恵まれていますが、2年間浪人しても東大に入れず、司法試験にも失敗しているので、エリート層とは立場が違い、頑固さや押しの強さでのし上がったようなところがあります。細川連立政権のときは、新党さきがけや社会党に対してあまりにも強引な態度を取り、結局連立政権の崩壊を招きました。
 
鈴木宗男氏は貧しい家に生まれ、拓殖大学卒業ですが、その強引な性格で自民党の七奉行の1人にまでのし上がりました。
 
堀江貴文氏はサラリーマン家庭の生まれで、東大文学部に進みますが、麻雀、競馬、アルバイトにのめり込み、結局大学は中退しています。IT企業経営者としてプロ野球球団買収、テレビ局買収を仕掛け、衆院選にも出馬します。世間を騒がせ、摩擦を起こしても強引に突き進む性格です。
 
こうした人間は誰にも止められません。止めることができるのは検察だけです。
 
もちろん検察は、強引で頑固な人間は誰でも止めるわけではありません。なにか目的があって止めるわけです。
 
小沢一郎氏はもちろん政治の世界を大きく変えようとしていましたし、鈴木宗男氏は外務省に対して大きな力を振るっていました。堀江貴文氏は“小泉改革の尖兵”というべき立場で衆院選に出馬しました。
これらにおいて検察は“官僚支配体制を守る”という目的で動いたのではないかと想像されます。
 
そこで思い出されるのが、小泉改革の時代に猪瀬直樹都知事が担った役割です。小泉内閣が行った道路公団民営化はそもそも猪瀬都知事のアイデアで、猪瀬都知事は小泉首相の意を受けて道路関係四公団民営化推進委員に就任し、道路公団民営化を中心になって推進しました。
副知事時代には、原発事故後の東電の値上げ申請に対して待ったをかけ、経営改革を迫りましたし、今も都営地下鉄と東京メトロの経営一元化を目指しています。
さらに、週刊誌情報によると、猪瀬都知事は周りの人から嫌われているようです。強引で頑固な性格なのかもしれません。
 
とすると、検察は猪瀬都知事のやろうとする改革をつぶすために、徳洲会の選挙違反を摘発し、猪瀬都知事の裏金情報をリークしたのかもしれません。
 
ともかく、民主党政権の成立と崩壊を経験した私たちは、政治の世界は政策本位で動いているのではないということを知ってしまいました。
政治の世界で力を発揮するのは、強引で頑固な性格の人間です。鳩山由紀夫氏も菅直人氏もそういう性格の人ではありませんでした。
 
安倍首相もそういう性格の人ではありません。ですから、官僚支配から脱することはできませんし、真の改革もできません。
 
ただ、菅義偉官房長官は高卒後集団就職で上京し、働きながら法政大学法学部(夜間)を卒業したという経歴ですし、強引で頑固な性格が前面に出ています。つまり検察から狙われるタイプの人間です。今のところ菅長官が検察から狙われる理由はありませんが。
 
ともかく、政治の世界は政策本位ではなく人間本位で見たほうがいろんなことが見えてきておもしろいものです。