「メタ認知」という言葉があることを最近知りました。
NHKの「探検バクモン」の「Oh No! スーパーブレイン 」という脳科学を扱った回でやっていました。そのときは、「自分の姿をビデオで見るような感覚」という説明でしたが、私がいいたいことは、もしかして「メタ認知」という一言で表現できるのではないかと思いました。
 
ネットで調べると、こういう説明になっています。
 
メタ認知(ウィキペディア)
メタ認知(メタにんち)とは認知を認知すること。人間が自分自身を認識する場合において、自分の思考や行動そのものを対象として客観的に把握し認識すること。それをおこなう能力をメタ認知能力という。
 
メタ認知の概要(奈良教育大学)
メタ認知の「メタ」とは「高次の」という意味です。つまり、認知(知覚、記憶、学習、言語、思考など)することを、より高い視点から認知するということです。メタ認知は、何かを実行している自分に頭の中で働く「もう一人の自分」と言われたり、認知についての認知といわれることがあります。
 
身近なことでは、録音した自分の声を聞くといったこともメタ認知でしょう。自分のゴルフのスイングをビデオに録って、フォームの矯正をするといったこともそうです。
もちろんレコーダーやビデオなしにメタ認知は可能です。自分で自分の考えや感覚を客観的に認識すればいいわけです。
 
しかし、この説明だけではメタ認知の価値がよくわからないかもしれません。というのは、もし人間の認知が正しければ、メタ認知などどうでもいいことだからです。
 
ここで「認知バイアス」という言葉を持ってくるとわかりやすいでしょう。
「認知バイアス」は直訳すると「認知の偏り」ということになりますが、人間はもともと正しい認知ができない傾向があるということです。たとえば、「都合のよい事実しか見ない」「権威者の言葉を信じる」「隣の芝生は青い」「成功は自分の力、失敗は他人のせい」「損失の痛手は利益の喜びより大きい」といったことは誰にでもあります。ですから、どうしても「メタ認知」が必要なのです。
 
たとえていえば、人間はもともと色メガネをかけて生まれてきているのです。ですから、自分がどんな色メガネをかけているかを知って、頭の中で色を補正しなければ、世界を正しく見ることができないことになります。
 
生まれてきたときに、どんな色メガネをかけているかは、その人の個性によって少しずつ違います。さらに、それぞれの人生によっても違ってきます。つまり生まれつきの色メガネに、人生経験からくる偏見の色メガネが重なって、一人一人の見る世界が違っているので、私たちはつねに人と認識が違って争うことになります。
 
自分がどんな色メガネをかけているかを知って、頭の中で色を補正すれば、世界の正しい認識が得られることになります。
 
古代ギリシャのデルフォイの神殿には「汝自身を知れ」という言葉が刻まれていたということですが、これはメタ認知と同義の言葉でしょう。
中学か高校のころに「汝自身を知れ」という言葉を知った私は、これこそが哲学の最終目的だと思いました。自分自身を知ることが世界を知ることだからです。
 
ところが、思想家や哲学者は「汝自身を知れ」という言葉を無視して、もっぱら世界について考えてきたようです。
最近になって、心理学、脳科学、行動経済学、進化生物学などにおける実証的、科学的研究によって認知バイアスの存在がどんどん明らかになるとともに、「汝自身を知れ」つまりメタ認知の重要性がわかってきました。
 
メタ認知という言葉は知らなくても、自然とメタ認知のできている人もいれば、できていない人もいます。
たとえば、宮崎駿監督は、自分の中に戦争好きの部分があることを認識して、戦争好きの部分と平和主義の関係を考えて「風立ちぬ」をつくりました。私も戦争映画が大好きで、自分の中に戦争好きの部分があることを認識しています。
一方、自民党の石破茂幹事長は軍事オタクですから、戦争好きの部分があるに違いないのですが、そういう自分を批判的に見ることができないので、口では平和をいいながら戦争好きの政策を進めるということをしています。安倍首相も同じです。
 
また、嫌韓の人は、韓国についていろいろと論じますが、もしメタ認知ができていれば、自分が嫌韓なのはどうしてなのか、韓流好きの人と自分とどこが違うのかというふうに考えを進めていくことができるでしょう。
 
道徳教育を強化するというのも、メタ認知のできない人の考えることだと思います。人物評価重視の大学入試にするというのも同じです。
 
今問題になっているさまざまなことは、メタ認知の欠如で説明できるのではないかと思います。
 
そして、私が思うに、究極の認知バイアスは「自分は正しい」という思い込みです。
「自分は正しい」という思い込みは、「相手が悪い」という認識と一体になっています。つまり「自分は正しい(相手が悪い)」という認識です。
 
そして、探せば相手の悪いところはいくらでも発見できるので、「自分は正しい(相手が悪い)」という認識はどんどん強化されていきます。
これが夫婦喧嘩から国家間の戦争までの原因です。
 
ここでメタ認知ができれば、「自分は正しい(相手が悪い)」という思い込みを持っているのは相手も同じであるということに気づき、ほんとうに正しいのはどちらかというふうに思考を進めることができます。
 
メタ認知あるいは「汝自身を知れ」は、やはり哲学の最終目的だと思います。