ドラマ「明日、ママがいない」について、全国児童養護施設協議会は2月5日に記者会見を開き、日本テレビに対して、「文書ではすまない。公共の場で謝罪してほしい」と主張しました。これは子どもが傷ついているからなんとかしてほしいという当初の要望からずれています。要はメディアを萎縮させて、二度と児童養護施設を題材にしたドラマをつくらせない、つまり児童養護施設をアンタッチャブルな領域にしてしまおうという狙いでしょう。
 
そもそもドラマにクレームをつけるというのが異例です。ハリウッド映画ではいつもイスラム教徒やアラブ人が悪役のテロリストとして描かれるので、イスラム教徒やアラブ人はクレームをつけたいでしょうが、フィクションなのでそういうわけにいきません。
 
ただ、事実に重要な間違いがある場合は、フィクションでもクレームのつく場合があります。たとえば、ドラマなどで刑事が図書館を訪ねて、図書館員から利用者の貸出履歴を聞き出すというシーンがある場合、日本図書館協会はそのつどクレームをつけていますし、テレビ局もたいてい訂正や謝罪をしています。貸出履歴を見れば、その人の思想信条がわかってしまいますから、令状なしにそれを教えることはありえないわけで、誤解が広がると図書館にとっても利用者にとっても困りますから、こうした場合のクレームは当然といえるでしょう。
 
しかし、全国児童養護施設協議会などはそうした事実の間違いを指摘しているわけではありません。あくまで「子どもが傷つく」からよくないという理屈です。
 
そうすると、「子どもが傷つく」か否かの基準はなにかということになりますが、客観的な基準はなく、子どもの反応を見るしかありません。しかし、養護施設にいる子どもは養護施設の管理下にあるわけですから、結局、養護施設側が「子どもが傷つく」といえば、誰も反論できません。
ということは今後、児童養護施設側の意向に反したものは、ドラマであれノンフィクションであれ、放送できないということになります(クレームをつけられるとスポンサーが撤退してしまうので)
 
ところで、全国里親会というのも、「明日、ママがいない」へのクレームに一枚かんでいます。YouTubeで1月21日の記者会見の映像を見ていたら、全国里親会の星野崇会長という人がひどいことをいっていました。その部分を書き起こしてみます。
 
【芦田愛菜】全国児童養護施設協議会記者会見
 
 
 
人間は犬ではありません。小動物といっしょくたにするっていうことを子どもに教えちゃいけないんですね。ところが、このドラマは率先してそれを教えている。私ははっきりいって、主演した芦田愛菜ちゃんがかわいそうですね。彼女は9歳半にして、こういう思想を植え付けられてしまっているんですね。
これがどんどんどんどん周りに広がっていってしまうっていうことは、人間の尊厳っていうものを無視する、メディアそのものが人間を無視する方向に動いているなということで、激しい憤りを感じております。
 
新聞記事は要約になっていますから、そんなひどい感じはしませんが、こうして読むと無茶苦茶なことをいっています。
 
人間を犬にたとえるのは、ドラマの登場人物のセリフです。ドラマがそれを教えているわけではありません。星野会長は、ドラマの特定のセリフをとらえて、それをドラマの主張と勘違いしているのです。
 
また、芦田愛菜ちゃんはあくまで演技をしているので、なにかの思想を植え付けられているわけではありません。
小さい子どもが見れば、演技する芦田愛菜ちゃんと実際の芦田愛菜ちゃんと区別がつかないということがあるかもしれませんが、立派なおとなである星野会長がそんな間違いをしているのです(「思想を植え付けられている」などということこそ芦田愛菜ちゃんを「傷つける」行為です)
 
あとで記者が「人間を犬にたとえるのは、フィクションであるし、肯定的ではなく、やっちゃいけないことだよねっていうことではないか」ということを質問しますが、それに対して全国児童養護施設協議会の副会長が「おとなならフィクションとわかるが、子どもはそういう判断ができないので、そのまま信じてしまう」というふうに回答します。
まさに「空白の石版」理論です。
 
ともかく、ドラマも演技も理解できない人間が記者会見でそのバカバカしい見解を披露して、それをそのまま通しているのですから、マスコミもだめになったものです。
 
もっとも、YouTubeのコメント欄には、星野会長も全国児童養護施設協議会の藤野会長も態度が悪いといったコメントが並んでいます。
 
 
ところで、こんな人間が会長をしている全国里親会とはなにかというと、れっきとした公益財団法人です。
星野会長自身ももちろん里親で、「私も16人ぐらい今まで経験があるんですけども」と語っています。
16人も里子を取ったというのも驚きです。十分に世話できるのだろうかと思ってしまいます。
 
里親制度というのもアンタッチャブルな領域です。
里親には里親手当が支払われますが、これがかなりの額になるようです。
 
里親支援Webサイト 4.里親への手当て等
 
1人当たり年間200万円支払われるという説もあります。
16人里子がいたとなると、1人10年としても、3億2000万円ということになります(2人目からは減額されますから、そうはなりませんが、1人10年以上ということは十分に考えられます)。すごい里子ビジネスです。
 
野田聖子衆議院議員は里子をもらうことを望んだのに叶わず、結局卵子提供による人工授精を選んだということで、里親になる道はかなり狭いようです。その一方で、星野会長のように16人も里子を取っている人がいるということは、一部の人が独占しているということでしょうか。
 
私は基本的に、児童養護施設で子どもが十分な世話を受けていないと思っているのですが、里親も同じようなものかもしれません。
星野会長のような子ども観を持っている親がまともな里親になれるとは思えません。
 
里親制度の実態について書かれたサイトを紹介しておきます。
 
里親家庭を「家」と呼ばないで
 
里親から里子への児童虐待~搾取される子供たち~
 
実際の里親制度がどのようなものであるかは、星野会長のような里親側からではなく、里子側から見ないとわかりません。
同様に、児童養護施設がどのようなものであるかも、施設側からではなくそこの子どもの側から見ないとわかりません。
「明日、ママがいない」は子ども目線のドラマであるゆえに、おとなたちから攻撃されるのでしょう。