安倍首相は3月14日、参院予算委員会で河野談話について、「安倍内閣で見直すことは考えていない」と答弁しました。これまでの安倍首相の考えからすると、明らかに不本意な答弁でしょう。日韓関係を改善しろというアメリカの圧力があったと想像されます。
 
一方、菅義偉官房長官は河野談話の作成経緯を検証する作業は続けるといっています。見直しはしないのに検証はするというのはおかしな話ですが、これは国内のガス抜きのためでしょう。アメリカや韓国もそのことは了解しているものと思われます。
 
そして、3月19日、「日米韓首脳会談開催の公算 河野談話継承を評価、朴大統領、最終判断へ」という記事が出ました。
 
このところ慰安婦問題について日韓で激しいせめぎ合いがありましたが、結局日本側の全面敗北で終わったわけです。
 
この結果になることは最初から見えていました。日本に味方してくれる国はひとつもないからです。
個人に限っても「テキサス親父」()ぐらいです。
 
安倍首相や一部の人たちが河野談話見直しの方向に動いたのは、産経新聞の論調に影響されたからではないかと思われます。産経新聞は慰安婦問題で日本は謝罪する必要はないということを執拗に主張してきました。
これを私は、産経新聞の「謝罪しなくていいですよ」詐欺と呼んでいます。
 
金もうけがしたい人はそれだけ「もうかりますよ」という詐欺に引っかかりやすくなります。それと同じに、謝罪したくない人は、産経新聞の「謝罪しなくていいですよ」詐欺に引っかかってしまうわけです。
 
産経新聞の主張は要するに、「軍や官憲が強制連行に関与したという証拠はないから謝罪しなくていい」というものです。
 
これは明らかに国内でしか通用しない議論です(ほんとは国内でも通用しません)
外国から見たら、証拠隠滅をした張本人が「証拠がない」と主張していることになります。
また、軍や官憲がやったことであろうが民間業者がやったことであろうが、日本の統治下で起きたことですから、日本に責任があることに変わりありません。
軍や官憲と民間業者が別ものだという議論は、日本人がよほど官僚依存体質だから成り立っているだけで、外国人にしたらまったく理解できないでしょう。
 
産経新聞は慰安婦問題を国家の名誉とか面子とかの問題ととらえていますが、これがまったく違います。慰安婦問題は人権問題です。人権を無視した議論が世界に受け入れられるはずありません。
 
たとえば、産経新聞は「証拠がない」といいますが、元慰安婦の証言はあるわけです。証言は立派な証拠です。
これを証拠と認めないのは、元慰安婦の人権を無視しているということです。
ここには三重の差別があります。韓国人に対する差別と、女性に対する差別と、売春婦に対する差別です。人種差別・性差別・職業差別と、差別のてんこ盛りです(民族差別も人種差別に含まれます)
 
産経新聞(の中の人)の頭は戦前の価値観のままのようです。こんな主張が世界で通用するはずありません(国内でも通用しません)
 
しかし、産経新聞の「謝罪しなくていいですよ」詐欺に引っかかってしまう人があとを絶ちません。
たとえば橋下徹日本維新の会共同代表です。産経新聞の主張を信じ込んで、世界に対して発信してしまい、それから橋下氏の政治力は一気に低下しました。世界から相手にされない政治家は国政でも相手にされません。今ではローカル政治家になっています。
 
籾井勝人NHK会長も慰安婦問題に関する発言が世界に発信されて、NHKに対する世界の信頼を損ねてしまいました。
 
安倍首相も同じ詐欺にひっかかりました。今になって軌道修正しても、これまでに大いに国益を損ねています。
 
一方、韓国は大儲けした格好です。
韓国では、性差別はむしろ日本よりも強いのではないかと思われますし、売春婦に対する差別も少なくとも日本と同じくらいあるはずです。ところが、人種差別については日本とベクトルが逆になります。そのため、韓国人は日本への反発を表明するだけで、まるで性差別や売春婦差別にも反対する人のようになりました。アメリカに慰安婦像を設置することなど、ほとんど意味のない行為ですが、日本の慰安婦問題対応がひどすぎるので、問題になればなるほど韓国の利益になります。
 
慰安婦問題に関する議論は、右翼対左翼という図式ではなく、人権派対差別派という図式でとらえたほうがよくわかります。
産経新聞の主張は「韓国人元慰安婦は嘘つきだ」というヘイトスピーチそのものです。
そして、日本の首相までが同じような主張をしていたのですから、日本はヘイトスピーチ国家になっていたわけです。
 
安倍首相は3月14日の答弁で、「慰安婦問題については、筆舌に尽くし難い、つらい思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛む」とも述べました。
これがうわべだけの言葉なのか、本心からの言葉なのか、今後さまざまな場面で問われることになります。