この前、イギリス旅行をしてきましたが、ロンドンで泊まったホテルのすぐ近くにトラファルガー広場があり、ネルソン記念柱が立っています。これは高さ46メートルの大理石の柱の上に5.5メートルのネルソン提督の銅像があるというものですが、あまりにも高いので銅像自体はよく見えません。
トラファルガー海戦でナポレオン指揮下のフランス・スペイン連合艦隊を破ったネルソン提督は国の英雄です。
ちなみにベトナムのホーチミン市のホテルに泊まったときは、ホテルの前の広場にやたら大きな銅像が立っていましたが、それは13世紀における元寇を3度にわたって撃退したチャン・フン・ダオ将軍というベトナム救国の英雄です。
 
日本では軍人の英雄の銅像を目立つところに立てるという習慣がないようです。
しかし、考えてみると、その代わりにあるのが東郷神社であり、乃木神社です。
軍神広瀬武夫中佐を祭神とする広瀬神社も大分県竹田市にありますし、児玉源太郎大将を祭神とする児玉神社は神奈川県藤沢市と山口県周南市にあります。
当然、靖国神社も同列です。
 
イギリスでは、あちこちで軍人の銅像や戦争の記念碑を見かけました。第二次大戦のものはもちろん、第一次大戦のもの、ボーア戦争のもの、スコットランド独立戦争のものなどがありました。
ボーア戦争の記念碑は兵士の群像となっていました。これという英雄がいないからかもしれません(ボーア戦争でイギリス軍は大きな痛手をこうむり、大英帝国衰退のきっかけとなりました)
日本ではこうしたものが靖国神社としてまとまっていると考えるといいのではないでしょうか。
 
靖国神社をアーリントン墓地などにたとえることがよく行われていますが、これは違うと思います。
 
今年の5月、「報道ステーション」で、フランスのヴェルダンの戦士の墓の前で古舘伊知郎氏が生放送をしたことがあります。
ヴェルダンは第一次世界大戦の激戦地で、そこは広大な敷地にただ十字架が並ぶだけの墓地ですが、十字架の数の多さを見ると、粛然とせざるをえません(そこは無名戦士の墓でなく記名戦士の墓だったようです)
靖国神社とはまったく異質な感じです。
 
靖国神社は宗教施設ですから、追悼の施設と考えがちですが、むしろネルソン記念柱やボーア戦争記念碑の類、つまり戦勝記念施設、戦功や武勲をたたえる施設と考えるべきです。
それは遊就館の中身を見てもわかります。
 
日本においては、戦死者の追悼は各家でたいていは仏式の葬儀、納骨、墓参として行われており、さらには国立千鳥が淵墓苑もありますし、各地に立てられた慰霊碑もありますし、8月15日に全国戦没者追悼式も行われています。
追悼は死者に対して行うもので、靖国神社にいるのは英霊です。
もちろん靖国神社に追悼の思いを持って参拝する人もいるでしょうが、英霊に対して追悼するのは筋違いです。
 
安倍首相は靖国神社参拝に際して、「国のために尊い命を犠牲にされたご英霊に対して尊崇の念を表し」と言いますが、これは靖国参拝の正しい態度です。
しかし、昨年12月に靖国神社参拝をしたとき、「不戦の誓いをいたしました」とも語りました。これは正しい態度とはいえません。
また、靖国神社をアーリントン墓地にたとえるのも間違いです。たとえるならネルソン記念柱とかワシントンDCにあるワシントン記念塔(アメリカ陸軍を率いて独立戦争を勝利に導いたジョージ・ワシントンの功績をたたえたもの)がいいでしょう。
 
今後、安倍首相が靖国神社を参拝するときは、「必勝を祈願した」とか「武運長久を祈った」と語ると、これまでのような混乱はなくなって、すっきりすることは確かです。