集団的自衛権を巡る議論において、「集団的自衛権行使は正義だ」とか「正義の行動ができなくていいのか」という主張はほとんど聞きませんでした。
代わりによく聞いたのが「仲間が攻撃されているときに助けなくていいのか」という論理です。
このような「仲間主義」というのはヤンキーの行動原理でもあります。
 
自民党、とりわけ安倍政権はヤンキー化しているという「自民党ヤンキー論」を最初に唱えたのは、精神科医の斎藤環氏であるようです。
 
斎藤氏の「自民党ヤンキー論」の要点がわかるサイトはこちら。
 
誰の心にもヤンキーはいる。
 
 
もともと集団的自衛権というのはデタラメなものなので、説明のしようがありません。
ただ、個別的自衛権は個人における正当防衛と同じなので、誰でもわかります。そこで、正当防衛の延長として集団的自衛権を説明しようとしたので、「仲間を助ける」という論理を持ち出したのでしょう。
 
集団的自衛権までヤンキー式に説明する自民党は、ついに道徳教育にまでヤンキー式を持ち込むようです(そういえば“ヤンキー先生”も自民党議員でした)
 
文科省、ドラマ「HERO」ポスターで道徳教育PR
 文部科学省は、SMAPの木村拓哉さんが主演するフジテレビ放映のドラマ「HERO」とタイアップし、道徳教育をPRする。出演者の写真とともに「みんなで考えよう、本気で生きるってこと」などと書いたポスター約4万部を全国の小中高校、特別支援学校などに配布する。同省は「ドラマの内容には関与しない」と説明している。
 
 「HERO」は2001年に放送されたドラマの続編。木村さん扮する検事が真実に迫ろうとする内容だ。タイアップは、フジテレビ側から提案があり、文科省が了承した。同省は主人公の社会正義を追求しようとする姿が、「人としてどうあるべきか。自分はどう生きるべきか」という道徳教育のテーマと共通すると判断。ポスターの文言は「押しつけと受け取られないようなメッセージを、省内で考えた」という。
 
 国が作った教材「私たちの道徳」を小中学校で使ってもらおうと、内容を紹介するチラシも各校に配る。今後、ドラマの出演者が参加するイベントも企画。文科省のホームページに特設サイトも作る予定だ。
 
 下村博文文科相は8日の会見で「タイアップによって道徳教育への理解、関心が高まることを期待している」と述べた。(杉原里美)
 
 
木村拓哉さん扮する主人公は、型破りの検事です。
ウィキペディアの「「HERO」の項目にはこのように書かれています。
 
「最終学歴は中卒。高校中退後、大検を経て司法試験に合格、希望通り検事に任官した」
「過去に友人を庇って起こした傷害事件で逮捕されたことがあり、その際黙秘を通していたが、(黙秘をしていなければ正当防衛になった可能性もある)不起訴処分を受けている」
 
経歴も、仲間をかばって黙秘するという行動原理もヤンキーそのものです。
 
また、つねにジーンズにダウンジャケットという服装で、みずから現場に出向いて捜査しますが、こういうのも現実にはありえないことです。
 
刑事ドラマも型破りの刑事が出てきて、現実にありえないようなものばかりです。「明日、ママがいない」のときは、児童養護施設について誤解を招くということで激しく抗議されましたが、警察司法についてのドラマはデタラメがまかり通っていて、むしろそれが賞賛すらされているのは不可解です。
 
それはともかく、文部科学省が「HERO」とタイアップして道徳教育のPRをするとは驚いた話です。
この主人公は友人をかばって黙秘を通すような人間ですが、そうすると、教室でイジメがあって教師が生徒に事情を聞こうとしたとき、イジメっ子同士がかばい合うことを文部科学省は肯定するのでしょうか。
また、ジーンズにダウンジャケットの検察官が許されるなら、各学校でもそれぞれの好きな服装を着ることが許されるのでしょうか。
学校内の秩序がなくなるのではないかと心配になります。
 
それから、ポスターには「みんなで考えよう、本気で生きるってこと」という言葉が入るようです。
念のためにフジテレビのホームページでも確認してみました。
 
ドラマのポスターデザインと共通ビジュアルでの文部科学省とのタイアップバージョンポスターが完成!全国の、小、中、高校合計40000校のもとへ配布を既に開始しています。各校に掲示されるポスターを通じて、子どもたちが『HERO』とともに道徳教育を学ぶきっかけに!
キャッチコピー “時代は変わったこの男はどうだ”に呼応して、タイアップバージョンでは“時代は変わる! 君たちはどうする?”というテーマを提示。“『正義』って何だ?『真実』って何だ?みんなで考えよう、本気で生きるってこと”と子供たちに問いかけます。
 
「マジで生きる」というのは、ヤンキーが勢いで言いそうな言葉ではあります。
しかし、文部科学省が「本気で生きる」という言葉を使っていいのでしょうか。
「本気で生きる」という以上、「本気で生きない」という状態も想定しているはずです。ということは、文部科学省は、人間は「本気で生きない」ことがあると思っているのでしょう。文部科学省の人間観が心配です。
 
仲間主義で生きるヤンキーと、社会体制や学校秩序を第一とする自民党や文部科学省が相容れるわけがありません。
「HERO」をPRに使うということは、道徳教育そのものがデタラメであるということです。
 
 
集団的自衛権もまた仲間主義とは相容れません。
日本が韓国や台湾やフィリピンやベトナムと手を組んで中国と対抗していこうというのなら、それは仲間主義かもしれませんが、現実の集団的自衛権行使は、アメリカに協力することを意味しています。
いうまでもなくアメリカはスーパーパワーで、日本とは親分子分の関係みたいなものです。山口組の系列の、それも外様の組が、なんとか山口組の親分に気に入ってもらうために武闘路線に切り替えようとしているというのが適切な比喩です。
ヤンキーの生き方とはまったく違います。
 
自民党がヤンキー的だというのは、ヤンキーにとって失礼な話です。