とんでもない犯罪が起こったものです。倉敷市の小学校5年女児の誘拐監禁事件のことです。世のおとなたちにとって、これほど困った犯罪はありません。
自分好みに育てたかった、と供述 倉敷・女児監禁容疑で逮捕の男
倉敷市の小学校5年女児(11)が下校途中に連れ去られ、5日後に無事保護された事件で、監禁容疑で現行犯逮捕された岡山市北区楢津、自称イラストレーター藤原武容疑者(49)が、倉敷署捜査本部(本部長・野上幹夫刑事部長)の調べに、「少女に興味があった。自分の好きな女の子のイメージ通りに育て、将来は結婚したかった」と動機を語っていることが20日、捜査関係者への取材で分かった。
藤原容疑者は昨年12月、自宅の一室を防音機能を持つ部屋に改造。外出する際などはここに女児を入れ、鍵を閉めて逃げられないようにしていたという。
その一方で、「女児の関心を引くため、たくさんお菓子を与え、テレビアニメも見せていた」とも供述。女児に優しく接することで、騒がれないようになだめていたとみられる。
さらに、14日午後4時半ごろ、女児の自宅近くの路上で連れ去る際、刃物のようなものを突き付け、「殺すぞ」と脅していたことも判明。捜査本部は未成年者誘拐もしくは未成年者略取の疑いでも調べる方針。
(後略)
これまでこうした異常な犯罪をするのは、たいてい若い男で、オタクで、無職の引きこもりなどでした。
しかし、この藤原武容疑者は、49歳の男で、離婚歴があるという報道もあり、一応自称イラストレーターということで無職ではないようですし、見た目にも普通の中年男です。部屋の防音工事を1000万円かけてしたということで、お金もあり、工事業者とも交渉しているわけです。また、母親は介護施設に入っているということで、それについても藤原武容疑者が身元引受人になって施設と契約したはずです。
つまり、普通に社会生活が営めているのです。
ですからこれは、「普通の中年男の犯罪」です。
ちゃんと社会生活を営んでいる普通の中年男に異常な犯罪心理があったということです。
これまでマスコミは、若者の犯罪については、オタクや引きこもりやネット依存症やゲーム依存症やアニメファンやホラーファンなどの属性を取り上げて、それと犯罪との関係についていろいろと論じてきました。
また、少年の犯罪については、犯罪被害者遺族の声を大きく取り上げ、厳罰化を主張してきました。
となると、今回は「普通の中年男」という属性と犯罪の関係について論じるのが当然です。また、分別盛りの中年の犯罪は、少年の犯罪よりも罪が重いはずですから、ここでこそ厳罰化を主張しなければなりません。
しかし、今のところマスコミはそういう主張はしていません。逆に、「家にアニメのポスターが張ってあった」とか「近所づきあいはほとんどなかった」といった報道によって、藤原武容疑者が「普通の中年男」ではないようなイメージづくりに精を出しています。
なぜそうなるかというと、マスコミの中心にいるのは中年男だからです。彼らは少年犯罪はきびしく追及しますが、中年男の犯罪になるととたんに甘くなるのです。
藤原武容疑者は「自分好みに育てたかった」と供述したということですが、これについてもマスコミはまったくといっていいほど追及しません。
「自分好みに育てたかった」ということを批判するとすれば、「他人の子どもにやってはいかんだろう」ということでしょう。しかし、それを言うと、「じゃあ自分の子どもは自分好みに育てていいのか」という反論が予想されます。
この反論にまともに答えられる人はいないはずです。ほとんどの親は、「ピアノの弾ける子にしたい」とか「思いやりのある子になってほしい」とか「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」とか、(子どもの意志を無視して)自分好みに育てようとしているからです。
自民党の親父たちも同じです。彼らは権利を主張する若者が嫌いなので、権利を主張せず義務だけを果たしてくれる自分好みの若者を育てようとしています。
藤原武容疑者は子どもを誘拐するという点で根本的に間違っていますが、「自分好みに育てたかった」という心理は、世の中のおとなたちと共通しています。
この事件は今でこそ騒がれていますが、すぐに報道は沈静化し、忘れられていくでしょう。マスコミは藤原武容疑者と同じ「普通の中年男」が支配しているからです。
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