糖質制限ダイエットがブームです。
きっかけは「炭水化物が人類を滅ぼす」(夏井睦著)という本だと思われます。この本は糖質制限ダイエットのハウツー本にとどまらず、スケールの大きな文明論にもなっていて、ベストセラーになりました。
 
これまでのダイエットの常識は、やせるには摂取するカロリーをへらすべきで、そのためには炭水化物やタンパク質よりも脂肪を重点的にへらすべきだというものでした(脂肪1グラムは9キロカロリー、炭水化物1グラムとタンパク質1グラムはどちらも4キロカロリーなので)
しかし、私の実感としては、トンカツや焼肉などを食べすぎたときにそんなに体重がふえたということはなく、逆にご飯やパンや甘いものを食べすぎたときに体重がふえるということが多かったのです。
しかし、世間の常識(医学者などもこぞって肯定しているのでおそらく科学的と思われる)と自分の実感を比べたとき、自分の実感が正しいと信じるほどの勇気はありませんでした。
 
そうしたところに糖質制限ダイエットが少しずつ話題になり始め、そして、「炭水化物が人類を滅ぼす」が出版され、新書で読みやすいということもあって、すぐに買って読んでみました。
一読して納得がいきました。自分の実感とも合致していますし、科学的と思われる理論もあります。
 
糖質を摂取すると血糖値が急速に上がります(タンパク質や脂肪を摂取しても血糖値はそれほど上がりません)。そうするとインシュリンが過剰に分泌され、血糖値を下げようとします。そのとき、血糖は脂肪となって細胞に取り込まれ、太るわけです。
そして、インシュリンが過剰に分泌されたため、今度は血糖値が下がりすぎ、強い空腹感が生じます。その空腹感に耐えていれば、細胞に取り込まれた脂肪は燃焼し、太らない理屈ですが、たいていは空腹感に耐えられずに(糖質の多い)食事をして、また血糖値が上がりすぎ、インシュリンが過剰に分泌され……という繰り返しで太っていくわけです。
 
したがって、やせようと思えば、糖質を重点的にへらせばいいという理屈になります。
 
しかし、糖質制限ダイエットにはいくつかの疑問があります。
 
たとえば、「脳のエネルギーになるのはブドウ糖だけで、ブドウ糖を摂取しないと脳が働かない」という説があります。私は何度も聞きました。
しかし、「炭水化物が人類を滅ぼす」によると、これはまったく間違いだそうです。脂肪が分解されたときに生じるケトン体も脳のエネルギー源になるし、肝臓はブドウ糖を生成する能力を持っているので、ブドウ糖を摂取しなくても脳が働かなくなることはないそうです。
考えてみれば、人類は脳の働きを最大の武器にしている動物ですから、ブドウ糖を摂取しないと脳が働かないのでは生存競争に負けてしまいます。進化論的にもありえないことです。
 
「脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖だ」というような明らかな間違いが広く世間に流布していたのは驚くべきことです。
医学関係にはいい加減なことがいっぱいあります。
 
ちなみに「炭水化物が人類を滅ぼす」の著者である夏井睦医師は、「傷は絶対消毒するな」というキャッチフレーズで知られる「湿潤療法」を創始し、ケガやヤケドの手当てに革命を起こしつつある人でもあります。
「患者よ、がんと闘うな」で知られる近藤誠医師も、がんについての考え方には賛否両論があるとしても、それまで大きく切除するのが常識だった乳がん手術に「乳房温存療法」を持ち込んで、日本の乳がん治療に革命を起こした人です。
常識を打ち破るにはこうした革命家が出てこないといけないのかもしれません(ただし、糖質制限ダイエットを創始したのは夏井睦医師ではなく、糖尿病治療食として始めた江部康二医師です)
 
それから、炭水化物、タンパク質、脂肪は三大栄養素とされ、この三つをバランスよくとるべきだという常識があります(炭水化物=糖質+食物繊維ということであるようです)
炭水化物だけ制限するのではバランスが崩れることになり、そんなことはありえないと考える人が多いようです。
私自身も最初はそう思っていました。
 
しかし、「炭水化物が人類を滅ぼす」によると、人類が農耕を始めて小麦や米を食べるようになったのは1万年前くらいからで、したがって、人間の体は狩猟採集生活に適応していて、穀物、とくに精製された穀物や砂糖を食べるようには適応していないということです。
これは目からウロコの指摘です。
確かに農耕によって文明が誕生し、農耕のおかげでたくさんの人口が養えるようになったので、穀物なしの生活など考えられません。しかし、肥満に悩む人間が穀物を食べ続ける必要がどこにあるでしょうか(必須アミノ酸や必須脂肪酸はあるが、必須炭水化物はないという指摘も「炭水化物が人類を滅ぼす」にはあります)
 
それに、糖質制限ダイエットといっても糖質をまったくなくせるものではなく、必然的にある程度とれてしまうので、それが適切なバランスということかもしれません。
 
というわけで、私は「炭水化物が人類を滅ぼす」を読むとすぐに糖質制限ダイエットを始めました。
私は以前に、カロリー制限ダイエット(いわゆる普通のダイエットです)をしたことがありますが、これは要するに空腹がまんダイエットなわけです。空腹をがまんするというのはひじょうに苦痛で、長続きしませんし、やめると「がんばった自分にごほうび」という意識が働いてリバウンドしてしまいます。
 
また、空腹をがまんする生活を続けていると、体質が変わって、どんどん小食になるのにやせなくなります(私はこれを、体が「省エネモード」になるといっていましたが、「ためしてガッテン」では「飢餓モード」と呼んでいました)
そういうこともあるので、空腹がまんダイエットはなかなか成功しません。
 
糖質制限ダイエットは、タンパク質や脂肪をとることで空腹をがまんする必要がなく、そんなに努力しなくても続けられます。
 
というわけで、私の場合ですが、昨年11月末から糖質制限ダイエットを始めて、7月末の現在にはこうなりました。
 
76.5キロ→67.5キロ(身長173センチ)
 
8カ月で9キロというわけです。
かなり遅いペースですが、ほとんどがまんをせず、食べたいだけ食べているので、こんなものかなと思います。がんばる人はもっと早いペースでやせられるでしょう。
がまんをしていないので、リバウンドもないと思っています(やめてもすぐ再開できるので)
 
具体的には、ご飯、パン、麺類、芋類、甘いものを制限し、代わりにタンパク質と脂肪をふやして満足感を得るようにします。
 
最近、「食べる順ダイエット」というのがはやっていますが、これも食べる順によって血糖値を上げないようにするというダイエットです。
また、低インシュリンダイエットや低GIダイエットというのも、血糖値を上げないようにするというダイエットです。
 
今では「糖質をとると太る」というのが常識になりつつあるようです。