佐世保市で高校1年生の松尾愛和さんが同級生の少女に殺された事件について、有識者がいろいろ発言していますが、どれもこれも的外れです。いくら頭がよくて、知識があっても、真実がわかるわけではないということがよくわかります。
 
頭がよくて知識があるということでは、加害少女の父親もそうです。地元のテレビにもよく出る弁護士だそうです。亡くなった母親も東大卒業で、佐世保市の教育委員を長く務めていたそうです。加害少女も成績優秀で、ピアノやスケート、スキー、絵画もやっていました。
つまり3人とも頭がよかったようですが、それでもこんな悲劇が起こるわけです。
 
専門家のいうこともメチャクチャです。
「少年犯罪に詳しい犯罪学の専門家」である中央大名誉教授の藤本哲也氏は、7月28日の「モーニングバード!」(テレビ朝日系)に出演して、加害少女はアスペルガー症候群の可能性があるとコメントして、番組の後半でアナウンサーが謝罪するという一幕がありました。
もちろんアスペルガー症候群と犯罪にはなんの関係もありません。
 
教育の専門家である尾木ママも的外れなことを言っています。
 
尾木ママ 佐世保の事件は「100%防げた」県職員の怠慢を指摘
 佐世保の女子高生が同級生を殺害した事件で、事前に県の児童相談窓口に警告緊急連絡相談がありながら放置された件で、教育評論家の尾木ママこと尾木直樹氏が1日、「100%防げた事件」と公式ブログで断じた。
 
  緊急相談は加害者の女子生徒を診察した精神科医から6月10日に寄せられていたもので、「人を殺しかねない」という具体的な緊急性を指摘したものだった。
 
  相談センターの職員はこれに対して「匿名でわからないから」という理由で放置したが、尾木ママは精神科医が通報した内容を知り「小学生時代の給食事件 最近の父親金属バット殴打事件まで話しているのに つまり 名前こそ守秘義務で話していないけど個人特定しているのと同じなのに放置したのか!」と県職員の怠慢を指摘し「残念では済まされぬ重大な犯罪に匹敵します!」と最大級の表現で指弾した。
 
  このブログのタイトルを、尾木ママは「100%防げた佐世保同級生殺人事件!!心ないお役所仕事が奪った被害少女の命!!」としている。
 
県の相談センターの職員がいくらうまく対応したとしても、「100%防げた」という保証はありません。冷静さを欠いた表現です。
 
そもそも県の職員に多少の責任はあるとしても、根本的に責任があるのは加害少女の両親です(この場合、母親は新婚で事情がわかっていないので、とくに父親に責任があります)
しかし、「未成年者の犯罪は親に責任がある」ということを言うのがタブーになっているので、アスペルガー症候群とか県職員とかを間違ってターゲットにしてしまうのです。
 
ところで、加害少女を診察した精神科医は、県の児童相談窓口に相談する前に、両親に対しても対処を求めていました。両親がなにもしないので、県に相談したということでしょう。ですから、尾木ママが親についてはまったく言及せずに県の職員だけを批判したのがいかに的外れであるかがわかります。
 
 
両親に「事件起こす可能性」=少女診察の医師―1人暮らし継続・高1女子殺害
 長崎県佐世保市の県立高校1年女子生徒(15)が殺害された事件で、逮捕された同級生の少女(16)を診察した医師が、事件前に少女の両親と面談し、「このままでは事件を起こしてしまう可能性がある」と伝えていたことが1日、関係者の話で分かった。少女は医師と両親が面談した後もマンションで1人暮らしを続け、事件を起こした。
  医師は610日、県の児童相談窓口に電話し、少女が小学6年生の頃に給食に異物を混入させたことや、父親に暴力を振るいけがをさせたことなどを挙げ、「人を殺しかねない」などと相談していた。
  関係者によると、医師は県側の助言などを受け、事件前の7月、3回にわたって両親と病院で面談。「事件を起こしてしまう可能性がある」などと告げ、対処を求めたという。
  少女は高校に進学した4月から、事件現場のマンションで1人暮らしをしていたが、医師と両親が面談した後も1人暮らしを継続。726日に事件を起こした。
 
 
この記事を読むと、この精神科医は事態をかなり正確に把握していたようですが、治療することにはまったく成功していません。両親に「対処を求めた」というのも、おそらく強制入院するように勧めたのでしょう(両親は体面から断ったのでしょう)
しかし、強制入院しても治療が成功するわけではありません。
 
ここで思い出すのが、2000年に起こった西鉄バスジャック事件です。「ネオむぎ茶」のハンドルネームを持っていた17歳の少年が精神科医町沢静夫氏の助言で強制入院させられますが、病院が外泊許可を出した際に犯行に及びました。少年は強制入院させられたことで親に裏切られたと思ったのです。
 
加害少女を診察した精神科医について、事件を予見したことで評価する声がありますが、実際のところは、まったく治療できなかったことでむしろ無能と評価するべきです。有能な精神科医やカウンセラーなら、数回の面接で目に見えた効果を挙げることができます。
 
つまり精神科医やカウンセラーという専門家でも、ピンからキリまであるということです。
 
私がまともだと思う専門家は、東海学院大学元教授で現在こころぎふ臨床心理センター代表の長谷川博一氏です。長谷川氏は7月30日の「報道ステーション」に出演して事件についてこのようにコメントしました。
 
(事件を起こした少女は)関心が限定的で、そこをとことん突き詰めようとする傾向があって、他のものに向かない。ただし、それだけで事件は起きない。
そこに、この子の中で抑圧されている負の感情があると思う。成育史の中で、例えば「押し付け的」な、「コントロール的」な関係で育ってきたとか。
負の感情を押し殺してきている。
そこで負の感情と関心がミックスしてしまって、そして人に対する攻撃性となってくる。
必ずしも負の感情を本人は自覚しているわけではない。
 
少しわかりにくいのは、父親や母親を具体的に名指ししていないからです。しかし、『「押し付け的」な、「コントロール的」な関係で育ってきた』という言葉がそのことを示しています。
 
同級生を殺して首を切断するというような異様な事件は、異様な動機から起こります。そして、異様な動機は異様な出来事の集積、つまり異様な環境から形成されます。
この少女の通っていた学校がそのような異様な環境であったとは思えません。
となると、家庭環境しか考えられません。
この年代の少女は家庭、学校、部活、友人関係といった狭い世界で生きているので、消去法でいけば、答えはすぐに見つかります。
 
つまり答えは最初からわかっているのに、マスコミや有識者はなんとかして答えをごまかそうとしているのです。
 
加害少女の父親は7月3日、謝罪の文書を公表しました。
 
おわびの言葉見つからず…加害少女の父親が文書
長崎県佐世保市の県立高校1年の女子生徒(15)が殺害された事件で、殺人容疑で逮捕された少女(16)の父親が3日、知人の弁護士を通じて、謝罪の文書を公表した。
  
 「娘が起こした事件により、何の落ち度もないお嬢様が被害者となられたことについては、おわびの言葉さえ見つからない」などとしている。
 
 文書で父親は、被害者に対し、「人生の喜びや幸せを経験する時間を奪われ、帰らぬ人となった苦しみと無念さ、ご両親とご親族の受けた衝撃と悲しみの深さを深慮し、胸が張り裂ける思い。本当に申し訳ございません」と謝罪した。
 
 自分の娘が事件を起こしたことについて、「複数の病院の助言に従い、できる最大限のことをしてきたが、力が及ばず、誠に残念」と記した。
 
 文書を公表したことについて、「遺族へ直接の謝罪ができていない段階で、社会に対して心情を申し上げることについて、逡巡していた」とした上で、「社会的反響の大きい事件であることを重く受け止めた」などとしている。
 
この文書は、被害者について謝罪はしていますが、自分自身については「できる最大限のことをしてきた」として、正当化しています。
この父親はどんなときにも自分の非を認めない人のようです。また、亡くなった母親ともども、世間の評価ばかりを気にしていた節があります。
 
2ちゃんねるでは父親に対するバッシングが始まっています。
これはマスコミが父親の責任にまったく言及しないことにも原因があると思われます。
「犯罪をした子どもの親はどんな教育・しつけをしてきたのか」ということは、ジャーナリズムとしても学術的問題としても下世話な好奇心からも明らかにするのが当然です。