映画「マレフィセント」を観てきました。
「アナと雪の女王」と連続してディズニー映画を観たわけですが、どちらも「王子さまのキス」になんの価値もないことに笑ってしまいました。ディズニーは思想的に“転向”したのでしょうか。
 
「マレフィセント」では、眠り姫は「真実の愛のキス」によってしか目覚めることができません。王子は単に姫の美貌に一目惚れしただけですから、王子のキスで目覚めないのは当然かもしれません。
では、「真実の愛」はどこにあるのかというと、結局、姫が生まれたときから見守っていた者の心にあったのです。
生まれたときから見守ってきたということは、親の子に対する愛とか家族愛ということになります。「アナと雪の女王」も姉妹愛の物語でした。
恋愛よりも家族愛がたいせつにされるのは、ディズニーに限らず時代の流れでもあります。今では映画でも小説でも家族愛の花盛りです。
 
家族愛といえば、今騒がれている佐世保高1同級生殺人事件の加害少女の家に家族愛はあったのでしょうか。
父親は有名弁護士で高収入、亡くなった母親は東大卒で、教育委員を長く務めるなどした社会的名士、家は地上2階地下1階、家の中にはエレベーターがあり、庭には錦鯉の泳いでいる池があるという豪邸。そして、加害少女は勉強がよくできて、ピアノ、絵画、スケート、スキーでも優秀だったということで、「人もうらやむエリート一家」と報道されています。
しかし、そこに家族愛があったという報道はありません。
 
父親は、昨年10月に妻が亡くなるとすぐに婚活パーティに出席し、21歳年下の女性と再婚しました。妻が亡くなってすぐ婚活してはいけないという法はありませんが、妻の死を重く受け止めていたらそういうことはできません。
 
この父親はどういう人間かということに興味がわきますが、5月に親しい友人らに新妻のプロフィールをビラにして配っていたということで、「フライデー」8月2229日合併号にそのビラが掲載されていました。
それはこのようなものです。
 
■■■■■■■■■のプロフィール
旧姓 ■■■■■■
■■■出身 昭和■■年■月■■日生 ■■歳(本日が誕生日です)
■■■■■大学経済学部卒 法科大学院卒(法務博士)
 
職業(しばらくは、残務や引き継ぎのため、佐世保と東京を往復する予定です)
◎芸能界関係のお仕事 テレビCM等に出演する動物(ソフトバンクドッグの「お父さん・白戸次郎さん」など)の演技指導など(下記写真のとおり)
◎特技の乗馬経験を活かして、■■■■■■■■■■■■と■■■■■■■■■■■■の事務・大会運営等の事務
 
趣味は、乗馬、水泳、自転車、ピアノ(かなり上手です)。幼少の頃は、日本舞踊や新体操もしていました。明るく社交的な女性です。今後とも、夫婦ともども宜しくご指導下さい。
 
結婚の報告として、夫婦連名で「今後宜しくお願いします」という挨拶状を配るならわかりますが、これはあくまで新妻のプロフィールです。
自分の妻を自慢しているとしか思えません。
まるで高価なオモチャを買ってもらった子どもが友だちに自慢しているみたいです。
 
この父親にとって妻とは、人生の伴侶というよりも“自慢の品”なのでしょう。
 亡くなった妻も東大卒ですから、この父親にとっては自慢の妻だったのでしょう。
加害少女が成績優秀で、ピアノや絵画やスポーツもよくできたというのも、自慢できる娘であってほしいという父親の願望に応えていたのでしょう。
 
この父親はすごい“自慢しい”で、職業も収入も家も家族も全部自慢できるものにしたいのです。そのために司法試験に合格し、すぐに婚活パーティに参加するなど、努力もしています。しかし、“自慢の品”と見られる家族はたまりません。
いや、おとな同士の関係ならそれで割り切れるかもしれませんが、子どもはそうはいきません。
 
 
では、加害少女はどんな人間だったのでしょうか。親しい同級生を殺して首を切断するぐらいですから、人間の心を持たないような、異常な人間だと思われているかもしれません。
「女性自身」8月1926日合併号に加害少女が中学時代に書いた作文が掲載されていましたので、紹介してみます。
 
 
「数える」
僕が人生で本当のことを言えるのは、これから何度あるだろうか。
 
人生で、
涙ぐむほど美しいものを見ることは、
悲しみに声を枯らすことは、
お別れのあいさつを書くことは、
好きな人と手をつなぐことは?
 
数えたら、きっと拍子抜けするだろう。
 
いま人生を始めたばかりの薄い肩に、どこまでも水平線が広がっている。
あまりにも短い航海の間、僕は何度心から生を叫べるか。
正の字つけて数えておこう。
 
この人生の幕引きに笑ってお辞儀ができたなら、
僕はきっと幸せです。
 
 
これを読むと、ちゃんと“人間の心”があります。
表面的には絶望と悲しみを表現していますが、その背後に幸せになりたい、人間らしく生きたいという思いがあります。
 
妻を自慢のタネとしか考えていない父親より、娘のほうがよほど人間的に思えます(このへんは人によって感じ方が違うでしょうが)
 
とはいえ、この娘が恐ろしい殺人事件を起こしたのは事実です。
 
映画「マレフィセント」の主人公マレフィセントは、予告編に出てくる姿は完全に魔女に見えますが、実際はもともと翼の生えた妖精だったのです。しかし、信頼していた人間に裏切られ、翼を切り取られてしまいます。そして、その憎しみから、自分を裏切った人間に赤ん坊ができたとき、その赤ん坊にはなんの罪もないにも関わらず呪いをかけてしまいます。
 
加害少女もなんの罪もない同級生を殺してしまいましたが、もしかすると翼を切り取られた妖精だったのかもしれません。