佐世保高1同級生殺人事件が大きく騒がれる一方で、倉敷女児監禁事件のほうはあっというまに忘却の彼方へ追いやられています。
久しぶりに倉敷女児監禁事件のニュースを目にしましたが、これが実に小さな扱いの記事でした。
 
倉敷女児監禁事件、わいせつ目的略取容疑で再逮捕
 岡山県で起きた女児監禁事件で、県警は9日、岡山市北区の無職藤原武容疑者(49)=監禁の罪で起訴=をわいせつ目的略取や銃刀法違反などの容疑で再逮捕した。調べに対し、「女児に近づきたかっただけだ」とわいせつ目的を否認しているという。
 
 県警によると、藤原容疑者は倉敷市内で7月14日午後4時40分ごろ、帰宅中の女児(11)にカッターナイフを突きつけ、「大きな声を出したら殺す」と脅迫。車に押し込み、岡山市内の自宅に連れ去った疑いがある。女児がわいせつ行為を受けた形跡はなかったが、藤原容疑者がパソコンに記録していた日記の内容などを踏まえ、わいせつ目的で女児を連れ去ったと判断したとしている。
 
 
藤原容疑者の日記の内容などからわいせつ目的と判断したということですが、いったいどんな日記なのでしょうか。捜査員に取材して、週刊誌などが「監禁日記」とか「調教日記」とか名づけて報じれば、読みたがる人がいっぱいいるでしょう。
 
少女を自分好みに教育しようとする男の物語は、谷崎潤一郎の「痴人の愛」、バーナード・ショーの「ピグマリオン」、もっと古くは「源氏物語」にもありますし、女性を拉致監禁する映画は、「コレクター」や「完全なる飼育」シリーズ、「監禁逃亡」シリーズなどがあり、AVには山ほどあるに違いありません。ですから、この事件の詳しい報道に対する需要はあるはずで、マスコミがまったくといっていいほど報じなくなったのはおかしなことです。
 
被害にあった少女への配慮から大きく報道しないのではないかと思われる人がいるかもしれません。しかし、少女を9年2カ月にわたって監禁したいわゆる新潟少女監禁事件のときは、被害少女への配慮などそっちのけで報道が過熱しました。
新潟少女監禁事件の犯人は、事件発覚時点で37歳でしたが、引きこもりのニートでした。「引きこもりのニート」という、自分たちと区別のつく犯人については遠慮なく報道し、49歳の「普通の中年男」という、自分たちと区別のつかない犯人については報道を自粛するというのが、中年男の支配するマスコミの習性です。
 
ですから、佐世保高1同級生殺人事件の報道もそれなりに偏ったものになります。たとえば、「AERA」最新号には「佐世保事件 少女Aが愛したマンガの残虐シーン」という見出しの記事があります。広告を見ただけで、記事の中身は読んでいませんが、相変わらずマンガなどの影響で事件を説明しようとしているようです。
マンガの影響が絶対ないとはいえませんが、マンガの影響よりは親の影響のほうが百倍か千倍か1万倍あるに違いありません。
 
倉敷の事件では、藤原容疑者は自称イラストレーターだったということですが、実際のところどうして生活していたのかとか、両親との関係はどうだったのかとか、まったくあと追いの報道がありません。藤原容疑者は「少女を自分好みに育てたかった」と供述したということですが、こうした欲望がどうして生まれたかを知るためにも、藤原容疑者と親との関係を追究する報道を望みたいものです。
 
そして、藤原容疑者と親との関係が明らかになれば、それは佐世保同級生殺人事件の深層を理解するヒントになるに違いないと私は思っています。