ウクライナやパレスチナやイラクやリビアから戦争のニュースが連日入ってきますが、日本国内からも安倍首相の活躍()によって戦争関係のニュースが次々と発信されています。おかげで戦犯を追悼する法要が毎年大規模に行われていたということを初めて知りました。
 
首相、A級戦犯ら法要に哀悼メッセージ「祖国の礎に」
 安倍晋三首相が4月、A級、BC級戦犯として処刑された元日本軍人の追悼法要に自民党総裁名で哀悼メッセージを書面で送っていたことが朝日新聞の調べで分かった。連合国による裁判を「報復」と位置づけ、処刑された全員を「昭和殉難者」として慰霊する法要で、首相は「自らの魂を賭して祖国の礎となられた」と伝えていた。
 
 メッセージを送ったのは高野山真言宗の奥の院(和歌山県高野町)にある「昭和殉難者法務死追悼碑」の法要。元将校らが立ち上げた「追悼碑を守る会」と、陸軍士官学校や防衛大のOBで作る「近畿偕行会」が共催で毎年春に営んでいる。
 
 追悼碑は連合国による戦犯処罰を「歴史上世界に例を見ない過酷で報復的裁判」とし、戦犯の名誉回復と追悼を目的に1994年に建立。戦犯として処刑されたり、収容所内で病死や自殺をしたりした計約1180人の名前が刻まれている。靖国神社に合祀(ごうし)される東条英機元首相らA級戦犯14人も含む。
 
 守る会によると今年は4月29日に遺族や陸軍士官学校出身者、自衛隊関係者ら約220人が参列。高野山真言宗トップの松長有慶座主がお経を唱えた。地元国会議員にも呼びかけ、自民党の門博文衆院議員(比例近畿)が出席した。
 
 首相のメッセージは司会者が披露。「今日の平和と繁栄のため、自らの魂を賭して祖国の礎となられた昭和殉職者の御霊に謹んで哀悼の誠を捧げる」とし、「今後とも恒久平和を願い、人類共生の未来を切り開いていくことをお誓い申し上げる」とした。
 
 守る会や関係資料によると、追悼碑建立は終戦後のフィリピンで戦犯容疑者として収容所に抑留され、嫌疑が晴れて復員した元陸軍少尉の発案だった。「冤罪(えんざい)で処刑された例が多い」との思いから、元将校や処刑された軍人の遺族らに寄付金を募って建立。元少尉が真言宗を信奉していたため高野山を選んだという。
 
 94年の開眼法要にはA級戦犯を合祀する靖国神社から大野俊康宮司(当時)が参列。靖国神社によると、その後は宮司は参列せず電報を送っているという。
 
 安倍首相は昨年と04年の年次法要にも主催者側の依頼に応じ、自民党総裁、幹事長の役職名で書面を送付。昨年は「私たちにはご英霊を奉り、祖国の礎となられたお気持ちに想いを致す義務がある」「ご英霊に恥じることのない、新しい日本の在り方を定めて参りたい」と伝えていた。
 
 守る会などによると、安倍首相には地元国会議員の事務所を通じてメッセージを依頼した。首相経験者では森喜朗氏が首相退任後に一度衆院議員の肩書で送付してきたが、ほかに例はない。今年は岸田文雄外相にも依頼したが、承諾を得られなかったという。
 
 安倍首相の事務所は取材に「お答えするつもりはない」、自民党総裁室は「党としては関与していない」と答えた。(鈴木拓也、渡辺周)
 
B級、C級戦犯には、上官の命令でやったのに罪を着せられたとか、いい加減な審理で無実なのに有罪にされたとか、気の毒なケースもありますが、この法要を主催した団体や安倍首相は、戦犯裁判そのものを否定しているようです。
 
ということは、アメリカの占領政策に対する否定ということになります。
安倍首相はアメリカと価値観をともにすると再三言明していますが、明らかに矛盾しています。
もっとも、この矛盾は昔からです。安倍首相に限らず親米右翼はみんな同じ矛盾を持っています。
 
こうした矛盾が存在するのは、安倍首相や親米右翼がアメリカという国をよく理解していないからだと思われます。
たとえば、この法要は連合国による裁判を「報復」と位置づけているということですが、この認識は明らかに間違いです。
 
アメリカは真珠湾攻撃を受けたときは報復を誓い、その後の戦争でも報復という意識はあったでしょうが、都市爆撃をし、原爆も落としたので、報復は十分に成し遂げたと思ったはずです。裁判はあくまで「報復」ではなく「正義の裁き」です。
「日本は犯罪国だからアメリカが裁くのは当然」というのがアメリカの論理です。
 
ところが、日本の右翼は戦時国際法にこだわっているので、アメリカの論理が理解できません。
日本の右翼は戦時国際法について誤解しています。
 
19世紀までヨーロッパでは、国と国が対立して外交で決着がつかない場合、決闘のようにして戦争が行われていました。決闘は作法に従って行われますが、それと同じに戦争は戦時国際法に従って行われ、国はそれぞれ交戦権を認め合ってきたわけです。
ところが、第一次世界大戦があまりにも悲惨だったため、ここで根本的にルールが変わります。1928年にパリ不戦条約が締結され(日本も参加)、国際紛争を解決する手段としての戦争は禁止され、交戦権も放棄されました。ただ、侵略された場合に戦う自衛権は認められました。
ですから、このときから「犯罪としての侵略戦争」と「正義の自衛戦争」に分かれたことになります
そして、ハーグ陸戦条約のような戦時国際法もほとんど無効になったと考えられます。
 
そうすると、真珠湾攻撃を仕掛けた日本は「犯罪としての侵略戦争」をやったことになり、正義の名のもとに裁かれるのは当然です。
 
もっとも、罰則などは決まっていないので、日本の右翼は「事後法によって裁かれたのは不当だ」と主張しますが、ナチスドイツや軍国主義日本のような想定外の“巨悪”が出現した場合は、事後法禁止というルールの変更は当然だというのがアメリカなどの考えでしょう(欧米はルールを変えるは当たり前だと考えており、日本はルールが変えられるものだという発想がない)
 
ともかく、アメリカはつねに「正義の戦争」をやっているつもりなのです。
 
今またアメリカは「正義の戦争」宣言をしました。
 
殺害犯に「正義の鉄つい」=イスラム国打倒へ決意-米大統領
 【ワシントン時事】オバマ米大統領は26日、ノースカロライナ州シャーロットで演説し、イラクとシリアで勢力を広げるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が米国人ジャーナリストを拘束、殺害した事件を受け「正義の鉄ついを下す」と述べ、容疑者を必ず捕らえると宣言した。
 
 大統領は退役軍人会の全国大会で行った演説で、「われわれが長い腕を持ち、忍耐強いことを忘れてはならない」と強調。「米国人に危害を加えた人間を追い詰め、捕らえるために必要なことを行う。国民と国を守るのに必要なら、引き続き直接的行動を取る」と表明した。(2014/08/27-06:57
 
 オバマ大統領が言っているのは、東京裁判の論理と同じです。
安倍首相はオバマ大統領の言っていることについてどう思うのでしょうか。