ヘイトスピーチ規制というのは、言論の敗北宣言みたいなものです。ヘイトスピーチをする相手を言い負かせないか、あるいは相手に言い負かされそうだから規制しようということですから。
 
また、そうした規制は警察・司法権力がするわけですから、権力が恣意的な運用をするという危険性もあります。
この点については橋下徹大阪市長がまともなことを言っています。
 
橋下氏、ヘイトスピーチ民事訴訟支援も
(前略)
 橋下氏は、戦前の日本では治安維持法で言論の自由を弾圧した過去があるとし、発言内容の是非については「公権力が差別的かどうかを(直接)判断するのは非常に危険だ」と指摘。その上で「民事的解決の中でヘイトスピーチを抑える方策があるのではないか」とした。(共同)
 
 
また、ヘイトスピーチのほかにヘイトクライムという言葉もあります。
イスラエルでヘイトクライムが急増しているという報道がありました。
 
 
「ヘイトクライム」急増 ガザ停戦から1週間
   イスラエル国内や同国が占領する東エルサレムで、パレスチナ人やイスラエル国籍のアラブ人に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)が急増している。1カ月半続いたイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ攻撃は停戦から1週間たったものの、社会に残った対立は容易に消えそうにない。
 
■パレスチナ人への襲撃急増
 
 会社員アミル・シュウェイキさん(20)は7月下旬の仕事帰り、ユダヤ人の若者たちに金属バットで頭を殴られて大量出血し、意識不明の重体になった。「『アラブ人は死ね』と言われ、約20分間、殴る蹴るの暴行を受けた」(一緒にいた友人)
 
 シュウェイキさんは脳に障害が残り、治療に半年以上かかるという。母アイダさん(50)は「突然泣くこともあり、何が現実か分からないようだ」と顔を曇らせる。「病院では、すれ違ったユダヤ人の見舞客にののしられた。今まではなかったことだ」という。
 
 バス運転手ハリド・ジャマル・オベイデさん(33)も7月下旬、バス停でドアを開けた途端、ユダヤ人の2人組の男に「地獄に行け!」と石を投げられ、右肩を負傷した。痛みで運転ができなくなり、23日間仕事を休んだ。オベイデさんは「同様の事件は毎日のように起きている。だが、解雇につながるのを恐れ、だれも報告しない」と話す。
 
 タクシーをめぐるトラブルも相次ぐ。マフディ・アブホンモスさん(56)はユダヤ人が多い地区を拠点に働く。だが、「『アラブ人か?』と聞かれ、そうだと言うと乗車しない客が増えた」。突然殴られたり、石を投げられてタクシーを壊されたりした運転手も少なくない。
 
 イスラエル軍によるガザ攻撃中は、件数は不明だが、パレスチナ人が経営する店への放火も起きた。インターネット上には差別発言があふれ、極右のデモでは「アラブ人に死を」と叫ぶ光景も見られた。
(後略)
 
 
ヘイトスピーチを規制するより、ヘイトクライムの取り締まりのほうが先決なのは明らかです。
 
とはいえ、ヘイトスピーチの法的規制は国連人種差別撤廃委員会から勧告され、またヨーロッパ各国ではすでにヘイトスピーチ規制が行われていると聞きます。そうすると、「日本は遅れていてだめだ。欧米並みを目指さなければ」という気になるかもしれません。
しかし、ヘイトスピーチ規制がきびしいということは、きびしく規制しなければならないほどヘイトスピーチがひどいということです。
そういう国のまねをすることはありません。
 
私が思うに、欧米における差別は日本における差別よりも数段レベルが上です。
先の新聞記事でも、イスラエルでパレスチナ人やアラブ人が現実に襲われています。また、襲うほうの人間もユダヤ人としていまだに差別されています。欧米の有名人がイスラエルの政策を批判するとき、ユダヤ人差別やナチス礼賛なども同時に言い、結果的にイスラエルを利してしまうことがよくあります。
 
欧米における黒人差別も深刻です。
先日、横浜マリノスのサポーターがアフリカ系の選手に対してバナナを振り、無期限入場禁止処分を受け、横浜マリノスの社長が謝罪するということがありました。日本人にはあまりピンときませんが、欧米では黒人は人間でなくサルの類であるという差別意識があるので、こうした行為が問題になります。
日本でも、サル真似、サル知恵という言葉があり、人間をサルに擬してバカにしますが、人間とサルを同一視しているわけではありません。しかし、欧米では黒人を人間ではなく動物と見なしているのですから、差別のレベルが違います。
 
文明人はまだ文明化されていない周辺民族を野蛮人として差別します。つまり差別は文明と切っても切り離せない病理で、文明が進むほど差別もひどくなります。近代西洋文明がいちばん差別がひどいのは当然です。
 
日本の差別は欧米よりはよほどゆるやかです。
そして、差別対策もゆるやかです。 
たとえば部落差別を克服するのは主に同和対策事業によって行われ、部落差別禁止法のようなものはつくられませんでした。
ヘイトスピーチ規制法をつくるのは、今まで日本がやってきたことにも反します(アイヌ差別、ハンセン病差別などは欧米の真似をした面が大きいと思います)。
 
 
考えてみれば、日本にはほとんどヘイトクライムがありません(陰湿な差別はありますが)
ヘイトスピーチにしても、ネットの匿名の書き込みのほかは、新大久保のデモとか大阪鶴橋のデモぐらいのものではないでしょうか。
少ないからかえって目立つということがあると思います。
 
日本は国連で採択された国際組織犯罪防止条約に加入する必要があるとかいう理由で「共謀罪」もつくろうとしていますが、これもヘイトスピーチ規制法と同じようなものだと思います。
差別先進国や犯罪先進国の真似をすることはありません。