ノーベル物理学賞を赤崎勇、天野浩、中村修二の3氏が受賞しました。
ニュース番組を見ていると、冒頭からずっとそのことです。しかも内容がもっぱら家族や身近な人の談話などで受賞者の“人となり”を紹介するもので、つまらないのでスイッチを切ってしまいました。
青色発光ダイオードの技術的なことを説明されてもわからないので、そうした人間的な面の報道にかたよるのはしかたないこととは思いますが、報道の量が多すぎると思います。
 
新聞も号外を出しています。「ノーベル賞 号外」で検索すると、朝日、読売、毎日、産経、日経のほか地方紙も号外を出していることがわかりました。
わざわざ号外を出すほどのことでしょうか。
 
日本人のノーベル賞受賞第1号は、1949年の物理学賞の湯川秀樹です。第2号が1965年の朝永振一郎ですから、16年間、日本人の受賞者は1人しかいなかったわけで、希少価値がありました。
しかし、現在はウィキペディアの「日本人のノーベル賞受賞者」という項目によると、今回の物理学賞も含めて受賞者の合計は22人にのぼります(日本国籍でない人も含む)
 
毎回同じような調子で報道するのは“惰性”としかいいようがありません。
惰性”に加えて、“愛国”もありそうです。
日本を持ち上げる報道にはドライブがかかる傾向があります。
 
このことは最近の拉致問題についての報道にも感じました。
 
安倍政権が北朝鮮との対話に乗り出してから、拉致問題についての報道がふえてきました。それは当然ですが、その報道の仕方が昔とまったく同じです。いまだに横田めぐみさんが生きているという前提の報道になっています。
もしかして生きているかもしれませんが、死んでいる可能性が大きいことは、誰もが理解しているはずです。
 
“惰性”と“愛国”の報道はなんの進歩も生みません。
国のあり方を批判してこそ国が進歩するのですが、最近そうした報道は“自虐的”と批判されそうなためか、影をひそめている気がします。
 
今回受賞したカリフォルニア大学の中村修二教授は、現在アメリカ国籍ですが、受賞会見では日本に対してきびしいことを言っています。
昔の日本は、こうした批判の言葉をむしろ歓迎して受け止めていましたが、今の日本はどうでしょうか。
 
 
中村修二教授「開発が偉大でも市場で勝てない」
 【グルノーブル(仏南東部)=石黒穣、サンタバーバラ(米カリフォルニア州)=中島達雄】ノーベル物理学賞の受賞が決まった名古屋大学の天野浩教授(54)、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二教授(60)の記者会見は以下の通り。
 
 ◆中村氏◆
 
 ――(冒頭発言)
 
 私はこれまでの人生で多くの方々に助けられてきて、とても幸運だ。最初のきっかけは、日亜化学工業の社長だった小川信雄氏が、青色LED開発という私のギャンブルを支持してくれたことだ。カリフォルニア大サンタバーバラ校のヘンリー・ヤン学長の支援にも感謝している。
 
 1993年に高輝度青色LEDの実用化に成功した後、研究活動が爆発的に進展した。多くの研究者がLEDの分野に参入し、携帯電話やテレビ、照明などあらゆる応用に取り組んだ。
 
 ――受賞の知らせを受けた時は、何をしていたか。
 
 眠っていた。少し神経質になっていたので、30%は寝ていたが、70%は神経が高ぶっていた。
 
 ――照明がないような発展途上国で、LEDの技術はどう使われているか。
 
 アフリカの一部のように電力がない国々では、太陽電池を充電し、夜間、LEDで照明を使うことができる。このため、発展途上国で非常に人気が高い。
 
 ――LEDの研究を始めた当時、今のような状況を想像したか。
 
 まったく想像しなかった。勤めていた会社で10年間にわたって赤色LEDを開発したが、既に大手の会社が製造していたので、販売成績は悪かった。会社が私にキレて、私もキレた。そこで私は社長室に行き、青色LEDを開発したいと直談判した。すると、社長はこう言った。「オーケー。やっていい」。それまで会社は研究開発費を出してくれなかったが、社長に500万ドル必要だと言うと、彼はそれもオーケーだと言った。
 
 当時、私は海外に出たことがなかったので、海外に行きたかった。そこで、社長に青色LEDを開発するには、フロリダ大学で学ぶ必要があると言った。1年間留学し、帰国して青色LEDの開発に取り組んだ。
 
 ――日本の多くの教授が海外での研究を目指し、頭脳流出ではないのか。
 
 米国は研究者にとって、多くの自由がある。必死で努力すれば、誰でもアメリカンドリームを手にするチャンスがある。日本ではそのチャンスはない。年齢による差別、セクハラ、健康問題での差別があり、米国のような本物の自由がない。
 
 日本では大企業のサラリーマンになるしかない。企業が大きな事業をやっていても、社員は平均的なサラリーマンだ。米国では、何でも好きにやれる。
 
 ――今回の受賞が日本にとって持つ意味は。
 
 3人のノーベル賞受賞者が出るというのは、日本にとって躍進だと思う。ただ、日本で開発が行われても、日本企業はグローバル化で問題を抱えている。開発が偉大でも、市場では勝てない。携帯電話技術や太陽電池で、日本の製品は当初、非常に優れていた。しかし、グローバル化に失敗した。LEDも同じだ。日本で開発されたが、すべての市場を失っている。
 
 ――現在、何に取り組んでいるのか。
 
 LEDの効率を高めることに取り組んでいる。