1020日、小渕優子経産相と松島みどり法相が辞任しました。安倍政権には大打撃です。
これまで絶好調だった安倍政権ですが、内閣改造をきっかけに、一気に潮目が変わった感じがします。
これほどの激変は、単なる偶然ではすまされません。
新閣僚の“身体検査”が甘かったという説があり、確かにそうでしょうが、それだけとも思えません。
ここにはなにかの力学が陰で働いていると見るべきです。
 
安倍改造内閣が発足したのは9月3日ですが、9月4日にはすでにウォール・ストリート・ジャーナル日本版が、閣僚19人中15人が右翼団体「日本会議」のメンバーだということを報道しています。
 
安倍改造内閣で右傾化加速、米紙が「驚くべき」発見―中国メディア
 
そして、9月10日には、高市早苗総務相と稲田朋美自民党政務調査会長がネオナチ活動家とツーショット写真を撮っていたことを英ガーディアン紙、AFP通信などが報道しているということが日本でも報道されました。
 
高市・稲田両議員、ネオナチ活動家と写真 関係否定も、海外メディアは右傾化批判
 
つまり早い段階で新内閣は海外から批判されていたのです。
 
しかし、ネオナチとのツーショット写真は、日本の大手メディアはそれほど報道しませんでしたし、世論もそれほど盛り上がりませんでした。
 
そこで、次に松島法相のうちわ問題が表面化しました。これは民主党の蓮舫参院議員が国会で取り上げたのが最初です。
小渕産経相の政治資金問題は「赤旗」が最初に報道しました。
 
野党はいつでも政府与党の足を引っ張りたいと思っていますから、やはりこのタイミングを狙ってどこかから情報提供があったのではないかと想像されます。
ネオナチではだめだったから、今度は“政治とカネ”にシフトしたということでしょう。
ねらいはつねに安倍新内閣の目玉である女性閣僚です。
 
では、誰がそういう情報提供をしているのかというと、今、官僚組織が安倍政権に離反したということは考えにくいと思います。消費税値上げに関して財務省と官邸に確執があるといわれますが、安倍政権が弱体化すると消費税値上げがかえって困難になりますから、財務省が安倍政権の足を引っ張るとは思えません。
 
となると、あとはアメリカしか考えられません。
安倍政権は集団的自衛権行使容認や米軍基地辺野古移設などで親米的な政策を進めていますが、日韓、日中関係を悪化させ、さらに朝日新聞誤報問題をきっかけに歴史認識で決定的にアメリカの不興を買ったということが想像されます。
このへんの事情は小熊英二氏の文章がわかりやすいので、全文引用します。
 
(思想の地層)「誤解」を解く 「枢軸国日本」と一線を 小熊英二
米国で、「慰安婦問題」での「日本叩(たた)き」が続いているという。ジャーナリストの古森義久氏は、共和党系のヘリテージ財団による歴史問題シンポジウムの模様を、以下のように伝えている。
 
 その場の質問で、古森氏は朝日新聞の誤報訂正を強調し、「日本軍による強制連行はなかった」と述べた。しかし財団側は、「せっかく私たちが日韓関係の改善を図ろうとしているのにこんな質問が出てくるなんて」と述べたという(古森義久「慰安婦報道訂正 アメリカに届かず」WiLL11月号)。
 
 この問題で、国際社会の一部に、誤解や単純化があるのは事実である。軍需工場などに動員された「女子挺身隊(ていしんたい)」が、ときに「慰安婦」と混同されているのはその一例だ。古森氏をはじめ、そうした「誤解」を解こうとする人々は多いが、効果は上がっていない。
 
 それはなぜか。冷泉彰彦「朝日『誤報』で日本が『誤解』されたという誤解」(NEWSWEEK日本版ウェブサイト)は、そのヒントを示している。
 
 冷泉氏によると、国際社会は、「日本国」と「枢軸国日本」は「全く別」だという前提に立っている。ここでいう「日本国」は、「サンフランシスコ講和を受け入れ、やがて国連に加盟した」国である。「枢軸国日本」は、「第二次世界大戦を起こした」国だ。
 
     *
 
 そうした国際社会の視点からは、「慰安婦問題」での「誤解」の解消にこだわる日本側の姿勢は奇妙に映る。それによって「枢軸国日本の名誉回復」に努めても、「日本国」の国際的立場の向上とは無関係だからだ。かえってそうした努力は、「『現在の日本政府や日本人は枢軸国日本の名誉にこだわる存在』つまり『枢軸国の延長』だというプロパガンダ」を行う国を利する逆効果になる、と冷泉氏はいう。
 
 「慰安婦問題」での「誤解」を解こうとしている論者は、「東京裁判」や「戦後憲法」への批判も並行して行うことが多い。しかし、史実認識を訂正しようとする努力が、「枢軸国日本の名誉回復」や戦後国際秩序の否定を伴っていたら、国際社会で認められる余地はない。かえって逆効果である。
 
     *
 
 これは「靖国問題」でも同様だ。刑死したA級戦犯を合祀(ごうし)した靖国神社宮司の松平永芳氏は「現行憲法の否定はわれわれの願うところだが、その前には極東軍事裁判がある。この根源をたたいてしまおうという意図のもとに、“A級戦犯”一四柱を新たに祭神とした」と述べている(西法太郎「『A級戦犯靖国合祀』松平永芳の孤独」新潮45 8月号)。この意図を認めるなら、東京裁判もサンフランシスコ講和条約も否定することになり、ひいては日米安保条約を含む戦後の諸条約や国際秩序の前提を否定することになる。こうした施設を参拝しながら、「日米は価値観を同じくする同盟国」などと唱えてみても、相手方の信頼は得られまい。
 
 靖国神社については、戦死者を追悼した施設はどこの国にもあるという意見がある。前述のように、諸外国の「従軍慰安婦」認識には誤解があるという意見は多い。だが、そうした意見が部分的には正当だったとしても、それが「枢軸国日本の名誉回復」の願望と結びついていたら、受け入れられる可能性は皆無であることを知るべきだ。
 
 これは他の問題にも言える。集団的自衛権の行使容認が、国内外で反発を買うのはなぜか。背景に、占領軍が押しつけた憲法の縛りを脱するという「枢軸国日本の名誉回復」の願望があると懸念されるからだ。いくら安全保障のためと説明しても、それを提案する政治家が並行して靖国神社に参拝するのでは、懸念を招くのは無理もない。
 
 こうした問題での「誤解」を解きたいなら、方法は一つである。現在の「日本国」は、「枢軸国日本」を否定している、という姿勢を明確にすることだ。それなしには、国際社会の理解も、安全保障の議論も進まない。
 
 (歴史社会学者)
 
 
アメリカが陰で日本の政治を動かしているというのは陰謀論に近いもので、とくに今回についてはまだ証拠がありませんが、急に安倍政権に逆風が吹き出したのは、そうとしか解釈できません。
ケネディ駐日米大使は、このところ目立った発言はしていませんが、日本に赴任してからずっと安倍政権を観察してきて、安倍首相の思想がわかってきたはずです。そして、ケネディ大使は思想的に安倍首相と相容れるはずがありません。ケネディ大使の意向がアメリカ政府を動かしているということは考えられます。
 
“政治とカネ”というフレーズを持ち出されると、日本人はいつも同じ踊りを踊ってしまいます。誰かに踊らされているのではないかということは、考えてみる価値があるはずです。