朝日新聞たたきが一転して、今は安倍内閣たたきになっています。各メディアは黙って方針転換するのではなく、「冷やし中華始めました」みたいに「安倍たたき始めました」という張り紙を出すべきです。
 
私はこの激変はどうしてだろうかと考えてしまいますが、多くの人はなにも考えていないようです。私は「人間は道徳という棍棒を持ったサルである」と主張していますが、おそらくみんなは棍棒でたたくことができれば満足で、たたく対象がなにかということはどうでもいいのでしょう。
 
私は考えた挙句、慰安婦問題がすべてのもとであるという結論に達しました。
 
私は4月半ばに「慰安婦問題終了のお知らせ」という記事を書いています。
 
慰安婦問題終了のお知らせ
 
このころ、安倍首相も菅官房長官も「河野談話の継承」を明言していました。そして、3月にはハーグで、オバマ大統領が日韓の間を取り持つ形で日米韓の首脳会談が行われており、明らかに日韓は慰安婦問題を解決することで友好関係を修復しようという方向にありました。
 
朝日新聞がその後、自社の慰安婦報道を検証して誤報を認めたのも、慰安婦問題が解決される流れに合わせたものでしょう。
 
ところが一方で、国内にはあくまで慰安婦問題を否定しようとする勢力がありました。それを主導したのが産経新聞です。私はそれについて『産経新聞の「謝罪しなくていいですよ」詐欺』という記事を書いたことがあります。
 
産経新聞の「謝罪しなくていいですよ」詐欺
 
産経新聞の主張は、韓国内で軍や官憲が関与して女性を強制連行した証拠はないから日本は謝罪しなくていいという論理です。
しかし、慰安所そのものが国が関与して女性の身体の自由を奪う制度ですから、強制連行の有無はたいした問題ではありません。それに、韓国以外では強制連行の証拠があるのですから、国際社会に対して発信できる主張でもありません。
 
ところが、この詐欺にひっかかる人がたくさんいました。だいたい人は謝罪したくないものですし、格下に見ている相手に対してはなおさらそうです。
というわけで、性差別、人種差別、職業(売春婦)差別意識の強い人が軒並みこの詐欺にひっかかってしまったわけです。彼らの議論を聞いていると、差別意識が丸出しで、きわめて醜悪です。
 
「アウシュビッツにガス室はなかった」という主張をもとに「ホロコーストはなかった」という主張に結びつけようという人たちがいますが、産経新聞の主張は論理構造がそれと同じです。
また、「日本の名誉回復」ということも主張されますが、これは正確には「軍国日本ないし枢軸国日本の名誉回復」という意味ですから、国際社会から不信感を持たれるのは当然です。
 
というわけで、朝日新聞が誤報を認めたことをきっかけに「謝罪しなくていいですよ」詐欺にだまされる人がふえ、そこにバイト店員炎上事件のように、なんでもいいからなにかをバッシングしたいという人が加わって、朝日新聞たたきが異様に盛り上がったわけですが、結局のところ、済州島での強制連行の有無がなにかに影響を与えるということはなく、「(軍国)日本の名誉回復」はまったくできませんでした。
逆に、「謝罪しなくていいですよ」詐欺の動きに加えて、安倍改造内閣が右寄りの人事であったために、海外からの日本に対する視線はいっそうきびしくなりました。
 
そういうことが国内のマスコミの論調にも反映して、最近の安倍内閣たたきになっているのではないかと思われます(このブログで最近同じことばかり書いていますが、見方がだんだん進歩しています)
 
朝日新聞たたきで日本外交は一時的に迷走しましたが、結局もとに戻りました。それは次のふたつの記事からも明らかでしょう。
 
河野談話・村山談話に吉田氏証言反映せず 政府答弁書を閣議決定
 政府は24日の閣議で、慰安婦をめぐる平成5年の河野洋平官房長官談話や、過去の植民地支配を認めた7年の村山富市首相談話に、旧日本軍が慰安婦を強制連行したとする故吉田清治氏の証言は反映されていないとの答弁書を決定した。
 吉田忠智社民党党首の質問主意書に答えた。
http://www.sankei.com/politics/news/141024/plt1410240021-n1.html
 
日韓の議連総会、共同声明で慰安婦問題に言及
 与野党の国会議員でつくる日韓議員連盟と韓日議員連盟は25日、ソウルで合同総会を開き、日韓首脳会談の早期実現に向けて「環境作りに努力する」と明記した共同声明を採択した。声明では、元慰安婦の名誉回復と心の痛みを癒やす措置が早急に取られるよう、双方が努力することも確認した。
 
 声明は日韓関係の重要性を強調し、来年の国交正常化50周年に向けて「関係を早急に修復しなければならない」と指摘した。「日本側は河野談話、村山談話など歴代政権の立場を継承することを再確認した」「河野談話、村山談話の精神にふさわしい行動をとることにした」など、歴史認識問題をめぐって日本側に対応を求める内容も目立った。
 
 一方、産経新聞前ソウル支局長が朴槿恵(パククネ)大統領の名誉を傷つけたとして起訴された問題は触れなかった。声明の原案には産経新聞を念頭に「日本側は、韓国当局による日本の報道関係者に対する措置が、両国関係改善に向けた環境を悪化させることを懸念した」とあったが、日韓議連関係者によると、韓国側の反対で盛り込まれなかったという。
 
 終了後の記者会見で韓日議連の姜昌一(カンチャンイル)幹事長は「韓国側が日本側を攻撃したり、日本側が韓国側を攻撃したりするのではなく、どう友好関係を増進するかといった視点で声明が作られた」と説明。総会には日本側からは議連の額賀福志郎会長(自民党)や河村建夫幹事長(同)、直嶋正行副幹事長(民主党)らが出席した。(ソウル=明楽麻子、東岡徹)
 
 
産経新聞やそれに同調して日本を迷走させた人たち(たとえば橋下徹大阪市長とか池田信夫氏とか)は国民に対して謝罪するべきです。