安倍首相は1030日の衆院予算委員会において、『今日の朝日新聞ですかね。「撃ち方止め」と私が言ったと。そういう報道がありました。これは捏造です』と語りました。
しかし、実際のところは、朝日新聞だけでなく産経新聞、日経新聞、毎日新聞、共同通信の各社が報道していました。
あやふやな記憶をもとに名指しで批判するというのは大いに問題ですが、この時点では勘違いという弁解もできたでしょう。
 
30日の夕方、最初の記事の情報提供者であった首相側近議員は、「私が『これで、撃ち方やめですよね』と言ったら、総理たちも理解を示した」というふうに説明を修正しました。側近議員がほんとうのことを言っているとは限りませんが、いずれにしても朝日新聞やその他の新聞社が捏造したものでないことは明らかです。
そして、このことは31日の朝刊で記事になりました。
 
これで安倍首相は自分の発言の間違いを認めるかと思ったら、31日の午前にまた同じような発言をしました。
 
「撃ち方やめ」発言、首相が重ねて否定 衆院特別委で
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   安倍晋三首相は31日午前の衆院地方創生特別委員会で、首相が「撃ち方やめになればいい」と発言したと朝日新聞や他の全国紙などが30日付朝刊で報じたことについて「私は『撃ち方やめ』とは言っていない。火がないところに火をおこしている。記事としては捏造(ねつぞう)だろうというのが率直な感想だ」と述べ、発言を重ねて否定した。
 
 首相はこれに関連し、朝日新聞の報道について「自分が思う方向にもって行きたい、安倍政権を倒したいという方向にもっていくから、そういう間違いが起こる」と語った。
 
 朝日新聞をはじめ他の全国紙は、29日の首相と側近議員の昼食会の様子を出席者に取材して記事化した。首相は30日の衆院予算委員会集中審議で朝日新聞を名指しして「捏造だ」と発言を否定した。一方で、「誹謗(ひぼう)中傷はやめるべきではないかという趣旨のことは話した」と述べた。
 
 朝日新聞が取材した出席者は同日夕、「撃ち方やめ」は自身の発言だったとして、首相の発言だったという説明を修正した。
 
再び「捏造だ」と言ったわけです。これはどういうことなのでしょうか。その日の朝刊を読んでいなかったのかもしれません。しかし、自分の「朝日新聞の捏造」発言が問題化していることはわかっているはずです。
 
安倍首相はまともな精神状態にないのかもしれません。
 
小渕優子経産相と松島みどり法相のダブル辞任で安倍首相はピンチに陥っています。こういうときに攻撃的になるのが安倍首相の常套手段であるようです。つまり「強い自分」を演じることで精神のバランスを保とうとしているのではないかと思われます。
 
考えてみれば、タカ派というのはみな同じ精神構造なのでしょう。
 
さらにいうと、ヘイトスピーチにも通じるものがあると思います。
というのは、橋下徹大阪市長対桜井誠在特会会長の対面を思い出したからです。
相手の言うことを聞かず、ただ攻撃的に自分の主張を述べるところが似ています。
 
橋下徹市長、ブチギレ大激怒!vs 在特会・桜井誠会長【まるで子供の喧嘩状態】
 
 
 
日本の首相がヘイトスピーチの親玉と似たような喋り方をしているというのは(私の感想ですが)、実に困ったことです。
 
 
しかし、安倍首相がこのようになっているのは、朝日新聞のほうにも原因があります。適切な反論ができていないのです。
 
たとえば、上で引用した記事のタイトルは、『「撃ち方やめ」発言、首相が重ねて否定 衆院特別委で』となっていますが、これは焦点がずれています。「撃ち方やめ」発言は首相側近議員もすでに否定しているからです。ここでのタイトルは、『首相重ねて「朝日が捏造」発言』となるはずです。
つまり明らかに朝日新聞の捏造ではないのに、安倍首相は捏造と言っているのですから、ここは朝日新聞の攻めどころであるわけです。
 
また、安倍首相は『「朝日新聞は安倍政権を倒すことを社是としている」と。かつて主筆がしゃべったと』とも答弁しています。これに対して朝日新聞は「朝日新聞社に『安倍政権を倒す』という社是はなく、主筆が話したこともありません」と否定の記事を書いています。
こういうところも、「首相ともあろう者が不確かな伝聞をもとに批判するのは許されない」と追及すれば朝日新聞が有利になるはずです。
 
小さなことほどごまかしが利かないので、相手の小さな間違いを追及して、訂正と謝罪を要求するのが論争のコツでもあります。
 
朝日新聞にはさまざまな問題がありますが、論争力や攻撃力の欠如もそのひとつです。
 
とはいえ、安倍首相の答弁や橋下市長対桜井在特会会長の論争を見ていると、世の中が殺伐としてきたと思わざるをえません。
まさに「道徳という棍棒を持ったサル」が殴り合う世の中です。