フランスの風刺新聞をねらったテロはもちろん許せないことですが、それに対するフランスの反応を見ていると、これにも首をかしげてしまいます。
表現の自由がたいせつだからといって、意地になってムハンマドの風刺画を掲載するのは明らかに筋違いです。
 
1月14日の朝日新聞に載った投稿川柳がその感じをうまく表現していると思いました。
 
 テロにノー「私はシャルリー」に少しノー(神奈川県 桑山俊昭)
 
フランスのバルス首相は“宣戦布告”をしました。典型的な暴力の連鎖です。
 
仏首相:「テロとの戦争に入った」…治安強化を表明
 【パリ宮川裕章】仏週刊紙襲撃テロ事件で、フランスのバルス首相は13日、国民議会(下院)で演説し、「フランスはテロとの戦争に入った」と宣言した。治安対策の強化に乗り出す方針を表明し、「われわれは世俗主義と自由のために戦う。(テロ再発防止のために)あらゆる手段を取る」と語った。バルス首相は演説で「これはイスラム教やイスラム教徒との戦争ではない」と強調し、「テロリズム、聖戦思想、過激思想との戦いだ」と語った。
 
 また、当局による盗聴強化の検討などに言及。自国の若者らの間で過激思想の宣伝や勧誘が拡大するのを防ぐため「その危険性について若者を教育する必要がある」と語った。
 
 フランス政府は事件を受けて、軍兵士1万人と警官ら約5000人を投入して国内警備を強化している。
 
「これはイスラム教やイスラム教徒との戦争ではない」と言いつつも、実際はイスラム教やイスラム教徒と戦うわけです。
 
フランスには公共の場所でブルカやスカーフの着用を禁じるブルカ禁止法というのがありますが、これは明らかにイスラム教徒を標的とした法律です。国ぐるみでイスラム教徒を差別しているとしかいいようがありません。
 
風刺新聞社を襲撃した犯人は、サイド・クワシとシェリフ・クワシという兄弟ですが、シェリフ・クワシは印刷会社の事務所に立てこもっているとき、電話インタビューに対して、イエメンのアルカイダ系組織から指示を受けたと語りましたし、「アラビア半島のアルカイダ」という組織が犯行声明を出しました。
ところが、フランス政府は対イスラム国の作戦を強化する方針を打ち出しました。
 
対「イスラム国」で空母派遣=緊張高まる恐れも―仏
【パリ時事】フランスのオランド大統領は14日、仏軍主力空母「シャルル・ドゴール」の艦上で行った軍への新年あいさつで、イラクなどで台頭するイスラム過激組織「イスラム国」に対する空爆に同空母を参加させる意向を表明した。仏軍は20149月に米国などが実施するイラクでの空爆に加わり、今月13日に作戦の継続を決めたばかり。
  仏風刺紙シャルリエブドなどを狙った連続テロ事件を踏まえ、仏国内ではイスラム過激派に反発する世論が高まっている。一方、イスラム国側は同紙がイスラム教を侮辱したと非難しており、空母派遣を機に両者の緊張がさらに高まる恐れもある。 
 
イスラム国はアルカイダと対立しているという報道もあり、少なくとも別の組織です。しかし、フランス政府の首脳にはイスラム勢力はみんな同じに見えるのでしょう。
これは、ブッシュ大統領がアルカイダから攻撃されてイラクに攻め込んだのに似ています。
アルカイダは原理主義的なところがあり、イラクのサダム・フセインは世俗主義で、両者はむしろ相容れないのですが、ブッシュ大統領の目にはみな同じイスラムに見えるのでしょう。
 
また、クワシ兄弟はアルジェリア系フランス人です。生まれはフランスですが、両親がアルジェリア人で、しかも両親は兄弟が幼いときに亡くなって、施設で育ったということです。
アルジェリアはフランスの植民地でしたから、アルジェリア系フランス人というのは日本でいえば在日朝鮮人みたいなものです。兄弟はさまざまな差別の中で育ったに違いありません。
 
フランス政府はいまだに過去の植民地支配について謝罪をしていません。
 
フランス政府は攻撃する対象を間違っています。
自国内にあるイスラムへの差別、旧植民地出身者への差別こそ攻撃するべきです。