2月9日、テレビ朝日の「池上彰が伝えたいこと」という番組で、イスラム国について解説していました。
池上彰氏は比較的広い視野でものごとをとらえられる人だと思っていましたが、今回はがっかりです。
 
イスラム国に焦点を当てれば、いくらでも悪いところを数え上げられます。
しかし、イスラム国の周辺はどうなのでしょうか。
シリアのアサド政権は、アラブの春に際してデモを武力鎮圧して多数の死者を出し、その後、内戦状態となりました。それ以前からアメリカ政府によってテロ支援国家として指定されていますし、核開発で北朝鮮と協力していることもアメリカ政府は公式に認定しています。
イラクでは、マリキ前首相がシーア派優遇政策をとったためにスンニ派の不満が高まるという状況があり、そこにイスラム国が進出しました。
 
また、中東の民衆の間には、イスラエルとアメリカに対する大きな不満があり、それがイスラム国に限らずイスラム過激派を生み出すもとになっています。
 
ところが、池上彰氏はシリア情勢もイラク情勢も、イスラエルとアメリカのことにも触れないので、なぜイスラム国がこんなにも力を持ったのかということがまったくわかりません。
外国からの戦闘員が2万人近くも参加していることも、インターネットを巧みに使っているからだといった説明だけです。
 
この番組に限りませんが、日本の報道は(日本だけではありませんが)、あまりにも一方的です。
対立している一方の言い分だけを報道しているのです。
これは夫婦喧嘩について、一方の主張だけを聞かされているみたいなものです。
 
現在、アメリカと有志連合はイスラム国に対する空爆を続けていますが、すでに戦闘員6000人以上を殺害したということです。
すべてが戦闘員であるとは思えません。民間人の被害も出ているに違いありません。
空爆の被害、泣き叫ぶ遺族などの報道もあって然るべきです。
また、イラク政府、シリア政府への批判の声もないわけありません。
そうした報道があれば、人々の判断も変わってくるはずです(そう考えると、外務省がシリアを取材しようしていたカメラマンのパスポートを取り上げた理由もわかります)
 
夫婦喧嘩の場合、浮気した、約束を破った、家事を怠ったなどさまざまな理由があり、双方の言い分をよく聞かないと、どちらが正しいか判断できません。
いや、よく聞いても判断できないことが多いでしょう。長い過去の経緯があるからです。
 
しかし、簡単に判断できる場合があります。それは一方が暴力をふるっている場合です。その場合は、理由のいかんにかかわらず、暴力をふるっているほうが悪いのです。
 
そう考えると、イスラム国とアメリカとどちらが悪いかがはっきりするでしょう。

アメリカと有志連合がやっているのは、ろくに対空能力もない相手を攻撃して一方的に殺戮するという、人類史上かつてない“卑劣な”戦争です。とりあえずこれを止めなければなりません。
 
これは右翼とか左翼とか、イスラムとかキリスト教とかも関係ありません。人間としての当然の判断です。
そうした判断の材料を提供するのが報道の役割ですが、今の報道はあまりにも公正を欠いています。