3月3日、訪米したイスラエルのネタニヤフ首相は米議会で演説し、オバマ政権の対イラン外交を痛烈に批判しました。
招かれた国の議会でその国を批判するとは、外交儀礼もヘチマもありません。
 
オバマ大統領とネタニヤフ首相は前から険悪な仲でした。
オバマ大統領がネタニヤフ首相を米議会で演説させるわけがありません。米議会は共和党が多数なので、共和党がネタニヤフ首相を招いて議会でオバマ批判の演説をさせたのでしょう。
 
米議会で誰が演説するかを決めるのはオバマ政権ではなく共和党なのだ――と気づいたとき、さまざまな疑問が一気に氷解しました。
 
安倍首相が5月の連休に訪米するとき、米議会で演説することになったという報道がありました。
 
54年ぶり…首相、米議会で演説へ GWに実現、祖父・岸首相らも実施 
 日米両政府は、安倍晋三首相が4月下旬からの大型連休中に訪米するのに合わせて、米議会で演説を実施する方針を固めた。戦後70年の節目を迎え、安全保障や経済をはじめ幅広い分野で日米関係を深化させることが相互利益につながるとアピールする狙いがある。政府関係者が21日、明らかにした。
 
 首相は先の大戦への反省を踏まえ、戦後一貫して平和国家としての道を歩んできた日本の姿勢を強調し、未来志向の関係を重視してきた。演説は、こうした安倍首相の考えを反映させるほか、日米両国が戦後、アジア太平洋地域をはじめ世界の平和と安定のために貢献してきた経緯についても言及するとみられる。
 
 首相は、訪米中にオバマ大統領と首脳会談を行い、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や、自衛隊と米軍の役割分担を定めた「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定についても協議する見通しだ。
 
 歴代首相では、首相の祖父、岸信介元首相らが米議会で演説しており、昭和36年当時の池田勇人首相以来54年ぶりとなる。また、日本の首相としては前例のない上下両院合同会議で演説する案も浮上している。
 
 関係者によると、来日した米国のデゲット下院議員ら超党派議員グループが16日、安倍首相と官邸で面会した際、「議会で演説できるようにしたい」と語ったのに対し、首相は「そうなればいい」と応じていた。
 
安倍首相とオバマ大統領の仲は悪く、オバマ政権は安倍首相の歴史認識に不信感を持っていますから、ほんとうに安倍首相は米議会で演説するのだろうかと疑問に思っていました。
しかし、共和党に決定権があるのなら、話は違います。
ただ、共和党にしても安倍首相の歴史観をよしとしているわけではありません。
 
そこで思い出したのが、安倍首相のイスラエル訪問です。
安倍首相は1月にイスラエルを訪問してネタニヤフ首相と笑顔で握手し、イスラム国を刺激して、結果的に湯川さんと後藤さんが殺害されました。
実はこのとき、ちょうどイスラエルを訪問していた米共和党のマケイン上院議員らと安倍首相が会っているのです。
外務省のホームページから引用します。
 
安倍総理大臣のイスラエル訪問
7)マケイン米上院議員他による表敬
(ア)119日午後,安倍総理大臣は,同地訪問中のジョン・マケイン上院議員(軍事委員長)をはじめとする米連邦上院議員7名(コーカー議員(外交委員長),グラハム議員,バラッソ議員,ドネリー議員,ケイン議員及びキング議員他)による表敬を受けた。
 
(イ)安倍総理から,日米関係への貢献に謝意を述べるとともに,戦火を交えた日米両国が戦後和解して強固な同盟国となったこと,今後も両国で連携して地域と世界の平和と繁栄に貢献してきたこと,今後も両国で連携して貢献していきたい旨述べた。両者は,アジア太平洋地域における日米同盟の重要性につき認識を共有した。
 
安倍首相がイスラエルを訪問したときに、たまたまマケイン議員らもイスラエルに来ていたから会ったのかと思っていましたが、これはむしろ計画されたもので、安倍首相と米共和党は互いの結束を確認したのだとすれば、納得がいきます。
 
安倍首相は米議会で演説したいために、オバマ政権ではなく共和党に接近し、共和党の望む親イスラエルの姿勢を示したのです。
共和党から見ると、米議会での演説というエサで安倍首相を釣ったわけです。
 
それまで日本の中東外交は、イスラエルにも周辺のアラブ諸国にも偏らないよう細心の注意を払って行われてきましたが、なぜここで親イスラエルに路線変更が行われたのか、納得がいきました。
安倍首相の名誉欲のためだったのです。
 
 
安倍政権が米共和党に接近することは、オバマ政権にとっては不愉快なことです。
 
在米韓国系団体が安倍首相の議会演説阻止に動き出しているという報道もあり、安倍首相の議会演説が実現しない可能性もあります。
 
安倍首相は米議会で演説したいという名誉欲に駆られ、日本外交をすっかりゆがめてしまいました。