鳩山由紀夫元首相がクリミアを訪問しましたが、この訪問については国内で強い反対の声がありました。
しかし、鳩山元首相の行動を批判する人たちの言い分はまともでしょうか。
 
高村副総裁「鳩山氏のクリミア訪問は国益に反する」
 自民党の高村副総裁は鳩山元総理大臣がクリミア半島を訪問したことについて、「国益に反することで遺憾だ」と強く非難しています。
 

  「鳩山由紀夫元総理がクリミアに行った。それもロシアのビザを取って行ったということは、力による現状変更を認めないという、日本の立場と相容れない。元総理が行くということは、日本の立場について国際社会に誤解をもたらすということで、国益に反することで遺憾だと思います」(自民党高村正彦副総裁)

 
 高村氏はこのように述べて、鳩山氏の行動は「国益に反する」と厳しく非難しました。
 
 また、高村氏は、民主党についても「鳩山氏を総理にしたことが総理在任中だけではなく、いまだに国益を害していることについて、少しは責任を感じていただきたい」と苦言を呈しています。(1112:47
 
私はこの中の「国益に反する」という言葉に笑ってしまいました。というのは、このところ「国益」という言葉をとんと聞いたことがないからです。
 
後藤さんと湯川さんが殺害されてから、「テロに屈しない」とか「罪をつぐなわせる」といった言葉は聞きますが、「国益」という言葉は聞きません。そもそもテロとの戦争に参戦することが国益に結びつくとは思えません。
慰安婦問題や靖国問題や侵略か否かなどの歴史認識についても、「日本の誇り」といった言葉は聞きますが、「国益」という言葉は聞きません。
 
また、「力による現状変更を認めないという、日本の立場」と言っていますが、アメリカはイラクでもアフガンでも力によって政権を倒しています。
そもそもイスラエルは、その土地を支配する国の承認なしに独立しないという国際慣例に反して、まさに「力による現状変更」による独立をして、アメリカはそれを後押しして、それが現在の中東の混乱の原因になっているわけです。
 
鳩山元首相を批判する人の論理はまったくご都合主義です。
 
 
そもそもウクライナの現政権は、選挙で選ばれた親露派政権を西側の援助を受けた勢力がクーデターで倒してできた政権ですから、これこそが「力による現状変更」です。
そして、この西側寄りの政権はロシア系住民にウクライナ語を強制しようとしました。ロシアがクリミアを編入したのは、ロシア系住民の人権を守るためであったとも言えます。
 
ところで、今「ウクライナ語の強制」で検索したところ、そのことを伝えるニュースサイトが見当たりませんでした(私は田中宇氏のメールマガジンで読んだのかもしれません)。そこで、あるブログから引用します。
 
1) 
 2月23日、ウクライナ暫定政府がロシア語等の準公用語化を決めた法律の廃止を決定(公用語としてはウクライナ語のみの使用を強制)。(注5)
 
 これは人口が6割を超えるクリミアのロシア人に対してウクライナ語を強制する意味を持つため、クリミア独立の大きな要因になった。
 
 
 2) 
 騒乱中のキエフでは、親ロシア派の市民が誘拐・暴行・殺害されている。
 
 そのため、クリミアやウクライナ東部に多いロシア系住民に恐怖が拡大していた。 
 
 (下記の注8も参照)
 
 
 3) 
 3月11日
 クリミア自治共和国議会とセヴァストポリ市議会は独立を宣言し、ロシア編入を求める決議を採択した。(注6)
 
 クリミアでもキエフと同様の狙撃事件が起きて2名が死亡。スナイパーの容疑者が拘束された。
 
 
このような事情を考えると、ロシアのクリミア編入は一概に批判できません。
 
ところが、日本におけるクリミアやウクライナに関する報道は、ほとんどすべてが「ロシア悪玉論」を前提としているので、まったく信用できません。
冷戦が終わってもいまだに“西側”が生き続けていて、報道のあり方を支配しているわけです。
 
ですから、日本にいて報道だけ見ていると、ウクライナとロシアのどちらが正しいのかまったくわかりません。鳩山元首相がクリミア入りする前に「日本には正確な事実が伝わっていない。住民がどういう気持ちでいるかこの目で見たい」と語ったのはもっともなことです。
 
鳩山元首相の行動が日本外交のあり方に反しているという批判はあるでしょうが、日本外交が正しいか否かを検討することはもっと重要です。
 
マスコミは“西側”幻想から早く卒業して、偏らない報道をしてほしいものです。