鳩山由紀夫元首相がクリミアから帰国しましたが、おかしな報道ばかりです。
たとえば、鳩山元首相が「パスポートを没収されればクリミアに移住することもある」と語ったということが報道されています。
しかし、日本でパスポートを没収されたら出国することができないので、クリミアに移住することもできません。ロシアにいる鳩山氏から日本政府がパスポートを没収するということもできるはずありません。
わけのわからない報道だなと思っていたら、テレビニュースの映像を見て納得がいきました。鳩山元首相は含み笑いをしながらしゃべっているのです。つまり記者から「パスポートを没収されたらどうするのですか」と聞かれて、そんなことがあるわけないと思って、冗談を言ったのです。
 
冗談をまともな発言のように報道するのはどうかしています。
 
いや、もっとどうかしているのは、日本政府の中に鳩山氏からパスポートを取り上げるべきだという声が出たことです。
これはもちろん言論の自由の否定です。
マスコミは鳩山氏の冗談を伝えるのではなく、日本政府の中に言論の自由を否定する声が出ていると、そちらをきびしく批判するべきです。
 
とにかくマスコミは、なにがなんでも西側寄りの報道をしなくては気がすまないようです。
次の毎日新聞の記事もへんです。
 
鳩山元首相:「納得できた」…クリミア編入に肯定的意見
 【モスクワ真野森作】ロシアメディアによると、ウクライナ南部クリミア半島を訪問中の鳩山件由紀夫元首相は11日、「民主的な住民投票を通じて、どう領土問題が解決されたか納得できた」と述べ、昨年3月のロシアによる一方的なクリミア編入を肯定的に捉える考えを示した。日本や欧米諸国が編入を国際法違反と批判する中、波紋を広げそうだ。
 
 クリミア南部ヤルタの地元首長との面会時に語った。「世界史に残る出来事になる」「住民投票がウクライナの法令にも合致していたことが分かった」などとロシア政府の見解に沿った感想も披露したという。
 
 現地の記者団には、「市民が幸せに暮らしている様子を見ることができた。軍事的影響を受けずに住民投票が実施されたのは明確だ。西側メディアは偏っている」と述べた。今回の訪問を日本政府に批判されたことについては、「批判があるのは我々の仕事が重要だからだ」と主張。「日本社会に編入の真実を伝える」と述べた。
 
 クリミア編入について、ロシアは昨年3月に親ロシア派主導で実施した住民投票で「賛成が9割」だったことを根拠に正当化してきた。だが、プーチン露大統領は今月9日放映のインタビューで、昨年2月にウクライナの親露政権が崩壊した直後に編入を決断したと明らかにしていた。
 
これはあくまで鳩山氏のクリミアでの言動を伝える記事ですが、最後の段落、『クリミア編入について、ロシアは昨年3月に親ロシア派主導で実施した住民投票で「賛成が9割」だったことを根拠に正当化してきた。だが、プーチン露大統領は今月9日放映のインタビューで、昨年2月にウクライナの親露政権が崩壊した直後に編入を決断したと明らかにしていた』という部分は、鳩山氏の意見の否定になっています。
 
記者や新聞社が鳩山氏の意見に反論したければ論説という形でするべきで、こういう記事の書き方はルール違反でしょう。
こういう記事だと、読者は自分で判断することができません。
新聞社の意見を読者に押し付けているのです。
 
それに、プーチン大統領がウクライナの親露政権が崩壊した直後に編入を決断していたとしても、それだけで編入が不当だということにはなりません。
 
一般には、「力による現状変更」だから編入は不当だといわれます。
しかし、クリミアにおけるロシア系住民の人権が侵害されていたら話は別です。
放置すると中国におけるチベット族のようになるとしたら、「力による現状変更」もやむをえないという判断もあるでしょう。
 
ですから、ほんとうに編入が不当だと主張したければ、「クリミアのロシア系住民への人権侵害はほとんどなかったにもかかわらず力による現状変更が行われた」というふうにいわなければなりません。
ところが、ロシア系住民の人権状況がどうであるかという報道はほとんどないので判断のしようがありません(親露派武装勢力によってウクライナ人の人権が侵害されているという報道はいっぱいあるのですが)
 
報道するほどの人権侵害がないのだという見方もあるでしょうが、私は前回の「いまだに生き続ける“西側”幻想」という記事で、ロシア系住民にウクライナ語の強制が行われそうになったということを書きました。これも人権侵害といえるはずです
それに、なんの人権侵害もなかったとしたら、選挙で多数のクリミア人が編入に賛成するはずがありません。
 
そこで西側メディアは「不正選挙」だったということを盛んに報道しましたが、大規模な不正選挙で住民の意志と違う選挙結果が出たら、住民が暴動を起こすかもしれませんし、平和裏に編入が行われるとも思えません。
 
西側メディアはクリミア人の人権はどうでもいいのでしょうか。
 
少なくとも鳩山元首相はクリミアを訪問してクリミア人の声を聞いています。
 
今回の鳩山元首相の行動は、日本人の人権感覚と、西側世界全体の人権感覚をあぶりだしたといえます。