鳩山由紀夫元首相のウクライナ訪問を巡る議論を見ていると、誰もがNATOの公式見解を繰り返し、その一方で鳩山元首相への人格攻撃をしています。
まともな感性の持ち主なら、こういう議論はおかしいのではないかという直感が働くはずですが、そういう意見はほとんど見かけません。
 
NATOの公式見解に乗っかるということは、言い換えれば対米追随ということで、この国の対米追随の根の深さを思い知らされます。
 
そうした中で、「東洋経済オンライン」に、NATOやアメリカに偏らない意見が載っていました。
 
鳩山由紀夫元首相は、宇宙人か馬鹿か天才か
クリミア半島での「無謀な行動」を分析する
 
これを書いた中村茂夫氏はロシアに詳しいビジネスマンで、ロシアがクリミア編入をどうとらえているかということを踏まえて、NATOにもロシアにも偏らない意見を書いておられます。
 
ちなみに私は、クリミアのロシア系住民の人権という観点からこの問題をとらえましたが、中村茂夫氏はもっぱら領土問題という観点からとらえていて、まったく違いますが、日本のマスコミが偏っているという判断は同じです。
 
長い記事なので、その一部だけ引用しておきます。
 
さて、今回このコラムで、私が一番言いたいことは、由紀夫氏の人物像に迫ることではない。今回の由紀夫氏の一件でもわかるように、ロシア=ウクライナ問題のような重要案件については、マスコミたるもの「きちんと掘り下げて、表面的ではなくフェアな立場で事実を報道すべきだ」ということだ。
 
そもそも、ウクライナ問題を語れる評論家は少ない。現場の一次情報はほとんど日本に入ってきていない。主に「欧米のフィルター」がかかったニュースが、お茶の間に報道されているのである。
 
それゆえ、あたかも欧米のニュースが国際世論であるかのように見える。だが注意深く観察すると、実際には米国の息のかかった、偏った一方的意見であるとの見方もある。
 
なぜなら、NATO加盟国以外の世論は、といえば、実は中立の立場でウクライナ問題を扱っているからだ。米国の「内政干渉」によるウクライナの混乱に対して、NATO加盟国以外の世界の世論は、中立の立場である。
 
中立の立場とは「米国の意見も聞くし、ロシアの意見も聞く」という、子供でもわかる理屈である。一見狂ったように見える由紀夫氏の考え方は「ロシアの意見も聞く」という当たり前の意見を言っているにすぎない。私に言わせれば、由紀夫氏のホンネはわからないが、「ロシアの固有の領土であるクリミアは、日本固有の領土である歯舞、色丹、国後、択捉、と同じ位置づけである」との理屈が成り立つのである。
 
 
日本の報道がNATOやアメリカに偏りすぎているということは、クリミア問題だけでなく、イスラム国についての報道を見ていても感じます。
 
私は先日、クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」を観たのですが、その中に、オレンジ色の服を着た男がひざまずかされ、背後に黒い覆面の男が立っているテレビ画面がちらりと映りました。つまり後藤さんや湯川さんがされていたのと同じ状況です。さすがに首を切られる場面までは映りませんでしたが、敵が残虐なことをしているということを示すシーンです。
この映画はノンフィクションを原作としているので、たぶん事実を踏まえているはずです。
 
この場合の敵はザルカウィ一派です。まだイスラム国ができていないころです(つながってはいますが)
つまりイラクの反政府武装勢力は、昔から同じことをやっていたのですが、これは日本ではニュースになっていなかったと思います。
 
しかし、イスラム国が同じことをやると大きなニュースになります。
 
イスラム国が誰かを処刑したというニュースはいっぱいあります。アメリカ人の人質が殺されたとか、脱走しようとした中国人戦闘員3人が処刑されたとか、火あぶりの刑が行われたとか、検索すると、ビルの上から投げ落としたというのもありました。
 
では、イスラム国がどれくらいの人間を処刑したかというと、イラクではなくシリアでのことですが、シリア人権監視団によると、半年で1900人だということです。
 
半年で1900人処刑 イスラム国、残虐性を誇示
 
同じシリア人権監視団によると、シリアでアサド政権は4年間に拷問で1万3000人近くを殺害したということです。
 
アサド政権の拷問で13000人近く死亡
 
半年と4年間で分母が違うので、それを考慮すると、殺した人数はイスラム国のほうが少し多いかもしれません。しかし、イスラム国が殺したのは「処刑」であるのに、アサド政権が殺したのは「拷問」です。
イスラム国よりはアサド政権のほうがはるかに残虐ということになります。
 
しかし、報道はイスラム国の残虐性を強調するものばかりです。
 
こうした報道は、有志連合がイスラム国への空爆を開始してからだと思います。
イスラム国を悪玉として描くと、有志連合の空爆が正当化されるので、そういう意図を持った報道になっているわけです。
 
欧米の報道がそうなるのはある程度しかたがないかもしれませんが、日本の報道まで同じになるのはおかしなことです。
欧米に追随するだけで独自の判断力のない日本の新聞社、テレビ局にはあきれるばかりです。