自民党の三原じゅん子議員が参院予算委員会で「八紘一宇」という古くさい言葉を持ち出したのには驚きました。
右翼雑誌で読んだことを、たいした考えもなく口にしたのかと思いましたが、このブログのコメント欄に、麻生大臣が言わせたのだろうという指摘がありました。確かになにか裏がなければ、そんな言葉は出てこないかもしれません。
 
それにしても、軍国主義時代のスローガンが今の国会で肯定的に語られることが諸外国からどう見られるでしょうか。
とくに今はオバマ大統領夫人が来日中です。
安倍内閣をささえる女性政治家の思想は、オバマ夫人ともケネディ駐日米大使とも相容れません。
 
また、3月17日には、秦郁彦氏ら19人が外国特派員協会で記者会見を行い、慰安婦問題を取り上げたアメリカの教科書に訂正勧告をしたことについて説明しました。
これもまた、今の日本の異常さを世界に知らしめる行為です。
 
【詳報】「強制連行があったとするマグロウヒル社の記述は誤り」従軍慰安婦問題で、秦郁彦氏、大沼保昭氏が会見
 
アメリカは教科書検定の制度がないので、秦郁彦氏らは民間の一出版社であるマグロウヒル社に対して訂正勧告をしたのです。
その前に外務省が是正の要請をしていましたが、マグロウヒル社は拒否していました。
外務省が断られたので、今度は自分たちが申し入れをしたということでしょう。
 
外国の教科書の内容についてこのようにしつこく訂正を求めるということは、世界でも異例のことでしょう。
 
私は以前、テレビのバラエティ番組で、世界各国の教科書に日本がどのように描かれているかを紹介したのを見たことがありますが、フジヤマ、ゲイシャのような古くさいイメージが多く、また微妙に現実の日本とズレていて、かなり笑える番組になっていました。
明らかに間違っていることも多々ありましたが、だからといって、その番組では訂正の申し入れをするべきだというような流れにはなりませんでした。出演者も、おそらくは視聴者も他国の教科書の誤りに寛容でした。
 
秦郁彦氏らがなんのために訂正申し入れをしたかというと、個々の事実にこだわっているわけではなく、要するに軍国日本の名誉回復をしたいということに尽きます。
そういう意図が明白ですから、秦郁彦氏らの勧告が受け入れられるわけがありません。
 
軍国日本の名誉回復に協力してくれる国など世界のどこにもありませんが、とりわけアメリカにとっては絶対に許せないことです。
 
3月17日には、アメリカのメリーランド州の上院本会議で慰安婦問題に関する決議案が全会一致で可決されました。
 
慰安婦決議、米州議会で可決 「歴史的記録にとどめる」
 
日本で慰安婦問題を騒ぎ立てる人たちの主張は、世界でまったく相手にされていないということです(「元慰安婦の人権」と「軍国日本の名誉」では価値がぜんぜん違うからです)。
 
安倍首相も秦郁彦氏らと思想的に同じ立場です。
もし安倍首相が自分の思想に忠実になって戦後70年の談話を出したらたいへんなことになりますが、そうはなりません。すでに外務省とアメリカによる包囲網が敷かれているからです(安倍談話についての懇談会の北岡伸一座長代理も「私は安倍さんに侵略したと言ってほしい」と述べています)
 
「八紘一宇」という言葉を持ち出したり、官憲が強制連行をしなかったから軍国日本は悪くないと主張したりする人たちが、今日本でいちばん国益を損ねている人たちです。