官邸や自民党がテレビの報道内容に干渉していることについて、マスコミも世間も反応が鈍いのが気になります。
ことは「報道の自由」に関しています。「報道の自由」のない国は独裁国になります。
 
自民、個別番組に異例の「中立」要請 専門家から批判も
 自民党が昨年の衆院選前、テレビ朝日の番組内容に対し、「公平中立」を求める文書を出していた。自民は「圧力ではない」と説明するが、メディアの専門家によると、個別番組への文書は異例だといい、番組への介入と受け取られかねない行為との指摘もある。
 
 自民の文書は昨年11月26日付で、福井照・報道局長名で出された。衆院解散後の昨年11月24日、テレビ朝日の「報道ステーション」がアベノミクスについて報じた内容について、「アベノミクスの効果が大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないかのごとく断定する内容」と批判。「意見が対立している問題については、多くの角度から論点を明らかにしなければならないとされている放送法4条4号の規定に照らし、同番組の編集及びスタジオの解説は十分な意を尽くしているとは言えない」と指摘した。
 
 報ステの報道は、約9分間にわたって「2014衆院選①『アベノミクスを考える』 金融緩和の“恩恵”は……」と題して放送された。古舘伊知郎キャスターが「安倍政権になって2年。株価は2倍以上になった。確かにいいことだ」と話したうえで、「株があがってくれたんでポジティブになる」など、アベノミクスの恩恵を受けた人の話に多くの時間を割いた。
 
 一方、実質賃金が伸びていないこともグラフで指摘。専門家の「若年層は資産がなく所得が増えない中、切り詰めた消費を続けているのが現状だ」という指摘も紹介した。
 
 自民は昨年11月20日付で、衆院選の報道について在京のテレビ局各社に対して「公平中立、公正の確保」を求める文書を送り、野党から「政治的な圧力だ」との批判を受けた。今回わかったテレ朝への文書は、各局への文書に加え、個別番組に対しても出されていたことになる。菅義偉官房長官は10日の記者会見で「事実関係を掌握していないが、報道に対して圧力を加えるものではない」と述べた。
 
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元日本テレビ報道ディレクター、水島宏明・法政大教授(メディア論)の話 
 
 政権与党が個別の番組に注文を付けるなど、前代未聞。一種の威嚇と言えるだろう。昨年の衆院選では自民党の要請を受け、街頭インタビューを取りやめた番組も実際にあると聞く。テレビ局は表向きは「影響はない」と言うが、報道の現場では萎縮が既に起きている。
 
 アベノミクスをどう報じるか、バランスに「正解」はない。扱いが難しいものは取り上げないということにつながりかねない。
 
 安倍政権はメディアを監視し、意に沿わない報道に対して「偏っている」と注文を付ける姿勢が顕著だ。かつては権力の側に「ジャーナリズムは厳しく批判を加えるものだ」という見識があり、健全な民主主義を育ててきた。「一強政治」の中で、そうしたたしなみが失われている。
 
 一方、メディアの側も、日本民間放送連盟や日本新聞協会といった組織で抗議の声を上げるべきだ。それができないのは、政権との距離感の違いから「メディアの分断」とも言うべき状況が生まれているから。ジャーナリズム全体が弱体化したと言わざるを得ない。(聞き手=中島耕太郎)
 
この朝日新聞の記事も、扱いが小さいですし、専門家の意見に依存しているところも、腰の引けた感じがします。
 
そもそも安倍首相は、昨年11月にTBSのニュース番組に出演したとき、街の声が偏っているとして番組にクレームをつけましたが、これを批判されると、「表現の自由だ」と開き直りました。これに対して有効な反論がなされていないと思います。
民主党の細野豪志議員は「人権侵害だ」という的外れな批判をしました。「テレビ局が萎縮する」という批判に対しては、安倍首相は「それぐらいで萎縮するのは情けない」と切り返しています。
 
結局、安倍政権を批判する側がまともな議論をする能力がないので、安倍政権のやりたい放題になっているのです。
 
首相がテレビの報道番組にクレームをつけるのは、もちろん「表現の自由」ではありません。日本のテレビ局は総務省から放送免許を認可されて事業を営んでいるので、総務大臣や首相はテレビ局に対して「職務権限」を持っています。そういう立場の者がテレビ局に対して意見を言うことは、当然「圧力」となり、放送の中立を侵すことになります。
 
もちろん総務省は放送免許の認可は公正に行うと主張するでしょうが、許認可権を持った役所はその業界ににらみをきかし、天下りなどの利権を持つのが常です。
 
免許更新のときのテレビ局はこのようなものだそうです。
 
知らぬは一般国民ばかりなり
放送局に免許剥奪がない理由
 通常、再免許の時期が近づくと、放送事故や不祥事などでスネに傷を持つ放送局は、ビクビクしながら1年以上前から事情聴取の準備を進める。総務省に対しては、主に①免許期間中の事業継続性、②番組の編成計画を説明し、求められた資料はすべて提出する。
 そこには、度重なる不祥事の詳細な調査レポートや再発防止策なども盛り込まれるので、「1つの放送局だけで1000ページ前後の文書になる」(業界紙の元編集者)。
 
それに、安倍首相は、ニュース番組で紹介された街の声が偏っていると文句をつけたわけですが、そうすると安倍首相は、テレビで紹介される街の声の賛否の配分は世論調査に準ずるべきだと考えているのでしょう。しかし、テレビは傾聴に値する意見を選んで紹介するのが当然です。世論調査と同じ配分にする必要はありません。
 
それに、あのときは安倍首相がゲストとして出演していたのです。議論を盛り上げるために、安倍首相に反対する意見を多くするのは当然です。
安倍首相は街の声に反論することで自分の意見を主張するいいチャンスをもらったのに、「表現の自由」を放棄して、テレビ局の編集権に文句をつけるという愚行に走ったわけです。
 
つまりあのときの安倍首相は、「職務権限」のある人間がテレビ局の編集権に口を出すという間違いを犯し、さらに、言っている内容も間違うという二重の間違いを犯したわけです。
 
 
世の中には、自民党がテレビ局に「公正中立」を求めるのは間違っていないという意見もありますが、愚かな意見です。というのは、自民党自体が中立の存在ではないのですから、テレビ局に対して中立を求める資格がないのです。
 
自民党や安倍首相は、自民党に不利な番組には中立を要請しても、自民党に有利な番組には中立を要請したことはないはずです。
野党も自民党と同じことをすればいいのだという意見があるかもしれませんが、与党は「職務権限」のある総務省とつながっていて、野党にはなんの権限もないのですから、両方が同じことをすれば、やはり放送の中立が侵されます。
 
中立でない安倍首相や自民党がテレビ局に中立を要請するとはお笑いぐさです。