愛川欽也さんが亡くなりました。私が愛川さんで思い出すのは、「愛川欽也パックインジャーナル」という番組です。
この番組は朝日ニュースターというCS局でやっていたので、知らない人も多いでしょう。ニュース解説番組で、愛川さんはこういう硬派な一面も持っていました。
 
私が加入している地元のケーブルテレビで、朝日ニュースターは基本料金で見ることができたので、たまたま見たときにおもしろさに気づき、毎週見るようになりました。
 
この番組が始まったのは1999年で、私はたぶん始まった1年後ぐらいから見始めたと思います。左翼リベラルの立場から、レギュラーとゲストの合計6~7人がニュースについて解説や議論をするもので、愛川さんは司会役です。
左翼リベラルという立場はかなり鮮明で、テレビ局がこういう偏った番組をやっていいのかと心配になるほどでしたが、考えてみれば「チャンネル桜」なんていうのもあるぐらいで、CSは放送法の「政治的に公平」という縛りは受けないのでしょうか。
 
最初のころは、めっぽうおもしろかったものです。普通のテレビや新聞が報じない情報も多く、左翼リベラルの切り口も私の感覚に合っていました。
実際、番組の人気はかなりのものだったと思います。
 
もちろんそこには司会の愛川さんの力も大きかったと思います。
庶民の代表というスタンスから、素朴な疑問や怒りをぶつけて専門家の話を引き出しました。
 
しかし、5~6年前からでしょうか、どんどんおもしろくなくなって、私はすっかり見なくなってしまいました。
 
2012年には朝日ニュースターの方針変更で「パックインジャーナル」は終了することになりましたが、一部に根強いファンがいたために有料のインターネットテレビに移行して継続することになりました。
最初のころのおもしろさがあれば私も有料で見たと思いますが、そのころにはそういう気にはなりませんでした。おそらく視聴者もあまりいなかったのではないでしょうか。
 
あれだけおもしろかった番組がなぜおもしろくなくなったのか、愛川さんの訃報をきっかけに考えてみました。
 
おもしろくなくなった直接の理由は、愛川さんの感情的な発言が多くなり、それも同じことを繰り返すようになったからです。
愛川さんはカリスマ的な司会者なので、誰もそれを止めません。
よくも悪くも「パックインジャーナル」は愛川さんの番組だったのです。
 
愛川さんが感情的な同じ発言を繰り返すようになったのは、お年を召されたということもひとつの理由でしょうが、それだけとは思えません。
 
「バックインジャール」がいちばん盛り上がったのは、民主党政権誕生のころだったでしょう。愛川さんも民主党誕生を喜んで、大いに期待していました。
しかし、その結果はご存知の通りです。
そして、民主党政権失敗の原因がきちんと総括されていません。
これは「パックインジャーナル」の問題ではなくて、日本全体の問題ですが。
そして、そのことが現在の安倍政権の暴走につながっています。
 
そうした現実を前にして、愛川さんも感情的になるしかなかったのかなあと思います。
 
愛川さんの政治的な思いの原点にあるのは、ご本人も再三言っておられたように、学童疎開の経験です。戦争の悲惨さを体験したので、反戦の思いが強く、「憲法9条を守る」という立場を鮮明にしていました。
典型的なオールド左翼です。
 
オールド左翼の主張が時代遅れになっているのは事実です。
たとえば安倍政権が目指すのは、アメリカの対テロ戦争への参戦です。自衛隊は中東のどこかで戦うことになるのでしょう。それに反対するのに、昔の戦争の悲惨さを持ち出しても説得力はありません。
また、「憲法9条を守る」という守りの姿勢では、戦争勢力の攻勢に後退する一方になってしまいます。
 
結局、愛川さんは俳優や映画づくりやテレビの司会などをして豊かな人生を送ったと思いますが、政治的な思いとしては敗北感の中で亡くなったのではないでしょうか。
 
最期にきて、とんでもない時代に居合わせてしまったのは残念なことでした。ご冥福をお祈りします。