安倍首相は4月20日に出演したテレビ番組で、戦後70年談話に「侵略」や「謝罪」を盛り込むかどうかについて、「(過去の内閣の歴史認識を)引き継いでいくと言っている以上、これをもう一度書く必要はない」と述べ、否定的な考えを示したということです。

 
おかしな理屈です。「引き継ぐと言っている以上、もう一度書くのは当然」というのがまともな理屈です。
そもそも「戦後70年談話」なのですから、いくら未来志向にするにしても、まず戦争についての認識を書くことになるはずです。 前と同じにしたくないなら、表現を進化させるか、内容を踏み込むかしかありません。
「謝罪したくない」という感情が理屈を超えているのです。
 
ところで、こうした議論の前提として、謝罪の対象は中国や韓国やその他のアジア諸国に限定されていると思われます。おそらくアメリカのことは誰も考えていないでしょう。
しかし、安倍首相は4月末に訪米して、日本の首相として初めて上下両院合同会議で演説します。当然そのとき、戦後70年の節目として戦争に触れないわけにいきません。
 
安倍首相はアメリカに謝罪するのでしょうか。
 
日本は宣戦布告前に真珠湾攻撃をするという卑怯なだまし討ちをしました。
日本としては、宣戦布告が遅れたのは事務的なミスであるという言い訳があるわけですが、それは対外的には通りません。筋としてはだまし討ちについて謝罪するべきでしょう。
 
また、先制攻撃はパリ不戦条約違反です。日本は侵略戦争、アメリカは自衛戦争をやったことになります。
フィリピン占領は、植民地からの解放という弁明の余地があるかもしれませんが、アッツ島、キスカ島はアメリカ領なので、この占領は完全な侵略で、弁明の余地がありません。
 
4月20日の朝日新聞に、アメリカで「バターン死の行進」を記念して6000人近くが参加したメモリアルマーチが行われたという記事が載っていました。
 
(戦後70年)米に「敵国 日本」の記憶
 
1998年に天皇陛下がイギリスを公式訪問されたとき、イギリスでは日本軍の捕虜となった退役軍人たちが補償と謝罪を求めるデモをしました。同様の感情はアメリカにもあるに違いありません。
安倍首相が謝罪すれば、こうした感情はある程度清算できます。
 
もっとも、日本のほうにも言いたいことがあります。広島、長崎への原爆投下と、都市への大規模な無差別爆撃は非人道的行為であるということです。
当然これは、アメリカが謝罪するのが筋です
 
日本は謝罪すべきは謝罪して、アメリカも謝罪すべきは謝罪して、それでよりよい両国関係が築けるはずです。
 
しかし、そうはならないでしょう。
 
日米関係は、日中、日韓関係と根本的に違うからです。
どう違うかというと、日本がアメリカの属国だからというしかないでしょう。
謝罪するしないというのは、対等の関係だから生じる問題です。属国と支配国の関係では生じません。
 
ですから、これまでアメリカは日本に謝罪せよと要求することはありませんでした。
 
アメリカは安倍首相の靖国参拝に文句をつけますが、これはあくまで中韓に配慮せよということで文句をつけているのです。中韓が日本に文句をつけてくるのとは根本的に違います。
 
安倍首相は米議会での演説で、「強固な日米同盟」を誇るでしょうが、実は「忠実な属国」であることを誇っているのです。
憲法改正についても語るかもしれませんが、「アメリカに押し付けられた憲法を改正する」と言うのではなく、「よりアメリカに協力するために改正する」と言うでしょう。
拍手する議員たちは、内心で安倍首相と日本を見下しているに違いありません。