高崎山自然動物園で生まれたばかりの赤ちゃんザルに英国王女と同じ「シャーロット」という名前をつけたところ、英国王室に失礼だという批判の声が上がり、海外にも報道される騒ぎとなりました。結局、英国王室が寛大な対応をしたこともあり、名前は変更しないということで一件落着したようです。
 
こうした騒動が起きたのには、日本人と欧米人の差別意識の違いがあるでしょう。
 
まずひとつ言えるのは、これはサルだから問題になったのであって、キリンやゾウやレッサーパンダだったりしたら、おそらく問題にはならなかっただろうということです。
 
それともうひとつ言えるのは、これはウィリアム王子とキャサリン妃の子、つまり白人の子だから問題にならなかったのだろうということです。
もしこれがオバマ大統領とミシェル夫人の子、つまり黒人の子だったらたいへんです。黒人の名前をサルにつけたら、それは人種差別的だとして世界的に批判されたでしょう。
 
つまり「黒人とサル」という組み合わせは最悪なのです。今回は「白人とサル」でしたから、あまり問題になりませんでした。
 
このへんに欧米人独特の差別意識があって、日本人には理解しにくいところです。
 
この差別意識はキリスト教思想からきているものと思われます。
 
旧約聖書創世記  第1章 第1節~第31節
神は御自分にかたどって人を創造された。神にかたどって創造された。男と女に創造された。
 神は彼ら を祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空 の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」
 
人間は神に似せてつくられたので動物よりも偉いというだけではなく、すべての生き物を支配せよと命じられています。つまり人間と動物は支配者と被支配者という関係にあるわけで、人間と動物は画然と区別されます。
したがって、人間と動物の間のどこに線を引くかが大きな問題になります。
大航海時代に黒人と出会った白人は、黒人は人間ではなく動物に属すると判断しました。とすれば、白人は黒人を支配しなければなりません。そうして黒人を奴隷にしたわけです。
 
このときの影響がいまだに残っていて、それを人種差別というわけです。
ですから、人種差別のもとには動物差別があることになります。
 
「動物差別」という概念はあまり一般的ではありませんが、動物差別から人種差別が発生したと考えるとわかりやすくなります。
 
なお、最近は大型類人猿にも人権を認めるべきだという考え方が出ています。
 
「大型類人猿の権利宣言」パオラ カヴァリエリ ()  ピーター シンガー ()
内容(「MARC」データベースより)
私たちは人間であると同時に大型類人猿である。チンパンジー、ゴリラ、オランウータンと人間との境界をなくし、彼らも「人権」をもつべきとする既存のモラルへの警鐘の書。
 
チンパンジーを使った動物実験に対して過激な反対運動をする動物保護団体がありますが、そのもとにはこうした思想があるわけです。
 
これは、人間と動物の間の線を引き直そうというものでしょうが、そもそも人間と動物の間に線を引こうという考え方が進化論からすると間違っています。
 
日本人は「生きとし生けるものいずれか歌を詠まざりける」という歌もあるように、人間と動物の間に線を引こうという発想はあまりありません。ですから、ダーウィンの進化論もたいした抵抗なく受け入れることができます。
また、人種差別の意識も日本人のほうがはるかに少ないといえます。
 
日本人は欧米の文化をなんでもありがたがって、ヘイトスピーチ対策みたいな反差別運動も欧米のほうが優れていると考えがちですが、そもそも欧米の人種差別がひどいから反差別運動も盛んになるわけです。
 
サルの赤ちゃんに「シャーロット」という名前をつける日本人の、人間と動物を区別しないおおらかさをもっと評価していいはずです。