ブラッター会長が辞任表明をするなどしてFIFAは汚職疑惑で大揺れですが、FIFAのような国際的な組織をアメリカ一国の司法当局が捜査するというのは、どう考えてもおかしな話です。
 
アメリカの司法当局といえば、パナマ共和国のノリエガ大統領のことが思い出されます。
1989年、アメリカはパナマに軍事侵攻し、ノリエガ大統領を逮捕、アメリカに連行して裁判にかけました(有罪となり、現在もアメリカの刑務所で服役中のようです)
 
アメリカがパナマに軍事侵攻するのもひどい話ですが(パナマ在住のアメリカ人の保護と麻薬撲滅が名目)、他国の元首を連行して自国の裁判にかけるというのも信じられない話です。
いかにアメリカが大国でパナマが小国であっても、国家主権というのは、少なくとも国際法上は絶対的なもののはずです。
 
しかし、その当時のマスコミの報道を見ていると、アメリカのやり方を批判するものはほとんどありません。当時はインターネットがなくて調べようもなく、ひじょうに釈然としない思いが残りました。
 
今回、パナマのノリエガ大統領のことを思い出して調べてみると、国際法上でアメリカが批判されない理由がわかりました。
 
もともとパナマはコロンビアの一部で、フランス人のレセップスが運河建設を計画しますが、以降、このように展開します。
 
 
世界史の窓 パナマの独立/パナマ共和国
こうしてレセップスによってパナマ運河の建設が始まったが、それは難工事の連続で財政的に行き詰まって倒産した。このころ急速にアメリカ帝国主義が展開されはじめ、セオドア=ローズヴェルト大統領は運河建設権を獲得しようとしたが、コロンビアはそれを拒否した。そこでアメリカはパナマのコロンビアからの分離独立を画策、1903年11月に独立派が反乱を起こして独立を宣言すると、アメリカは海軍を派遣、反乱鎮圧のために派遣されたコロンビア海軍のパナマ上陸を阻止して独立を成功させた。そのわずか2日後にアメリカ政府は新政府を承認、さらにわずか2日後にアメリカとパナマ政府との運河条約を締結した。
 
 アメリカが独立承認と引き換えに認めさせたパナマ運河条約は、運河の両岸を5マイル(当初案では5キロであったのが5マイルに書き換えられた)、つまり10マイル(約16キロ)の運河地帯の主権をアメリカに与え、またその期限を当初は99年に限定していたものを無期限とするなど、アメリカにとって大変有利なものであった。これを認めたパナマの初代大統領アマドールは、現在では売国奴として名を残している。こうしてアメリカは1904年に運河工事に着手し、第一次世界大戦の勃発した1914年に完成させた。
 
 1904年のパナマ運河条約で、運河地帯とその付属施設の主権をアメリカに属することを認めたことによって、パナマは独立と同時に、実質的にアメリカの属国となった。セオドア=ローズヴェルト政権はさらに、パナマ軍を国家警備隊に縮小してその抵抗力を奪い、さらに同年成立したパナマ憲法では、パナマの国内政治の安定のためにアメリカが軍事介入できる項目を盛り込ませた。
  また、アメリカは運河の利権の完全維持を狙い、パナマの国家経済に介入して中央銀行の設立を許さなかった。そのため、パナマは現在でも通貨を管理する中央銀行が無く、バルボアという通貨はコインのみで、紙幣は米ドルがそのまま流通している。<伊藤千尋『反米大陸』2007 集英社新書 p.89
 
アメリカの軍事侵攻は、パナマ憲法で認められたことだったのです。
ノリエガ大統領をアメリカで裁判にかけたことも、きっと法的には問題がないのでしょう。
当時のマスコミがアメリカを批判しなかったのも当然でした。
 
それにしても、よく「日本はアメリカの属国だ」などと言いますが、みんなほんとうの属国とは思っていなくて、「属国的」ぐらいの意味で言っているのではないでしょうか。
しかし、パナマ共和国はほんとうの属国です。
そして、ほんとうの属国があるということは、日本も実はそうなのではないかという気がしてきます。
 
少なくともアメリカは他国を平気で属国にしてしまう国です。
 
パナマの場合は、運河があるためにアメリカは属国にする必要がありました。
日本の場合は、かつて真珠湾攻撃をした国であるため、2度とそういうことができないように属国にする必要があることになります。
 
日本の経済的発展はアメリカの利益になるので許されてきましたが、日本が軍事的に自立することは、アメリカにとって絶対に許せないことです。
 
日本国憲法や日米安保条約や日米地位協定などが日本の“軍事的属国”を規定しているのでしょう。
 
日本が沖縄の基地負担の軽減を要求することも本来許されないことで、代わりに辺野古基地建設というそれ以上の重荷を背負わされました。
 
安倍首相も“軍事的属国”の首相として実にふさわしい振る舞いをしています。