神戸連続児童殺害事件の犯人であった元少年Aが「絶歌」という本を出版したことに対して、出版中止を求める声があふれましたが、そんな要求にはなんの正当性もありません。
さすがにそのことがわかってきたのか、論調が変わってきました。
 
 
坂上忍、元少年Aの手記出版を批判 - 松本人志の「僕は読まない」に共感
 
俳優の坂上忍(48)が、14日に放送されたフジテレビ系トーク番組『ワイドナショー』(毎週日曜10:0010:55)にゲスト出演し、1997年の神戸連続児童殺傷事件の加害者男性(32 / 事件当時14歳の元少年A)が手記『絶歌』(太田出版)を出版したことについて批判した。
 
同書が発売されたことを受け、小学6年生の土師淳くん(当時11)を殺害された父・守さんは「なぜこのようにさらに私たちを苦しめることをしようとするのか全く理解できません」「今すぐに出版を中止し本を回収してほしい」とコメントを発表。この出版の是非について、ネットを中心に賛否両論が巻き起こっている。
 
番組でこの話題が取り上げられ、坂上は「"表現の自由"がよく分からなくなった」と吐露。「原作者は少年Aなんでしょうが、亡くなられたお子さんも遺族の方も、もう一方での原作者だと思う」と持論を述べ、「なぜその人たちの了解を得ずに初版で10万部刷るのか。さっぱり分からない」「担当者の方にOKを編集長が出したのか分からないですけど、僕がその立場だったら無理ですね。勇気ないです」と発行元に疑問を投げかけた。
 
「法的には罪を償って出てきているわけで、出版に関して問題ないのかもしれない」と認めつつも、「やっぱり感情論としては全く納得ができない」。同じくゲスト出演した俳優・武田鉄矢(66)の「少年犯罪を分析する上で貴重な例となるのでは」という意見には、「でもそれって出版する必要あるんですかね」と問いかけ、「若い子たちが読んだら(犯罪の)助長になりかねないんじゃないか」と続けた。
 
また、同番組レギュラー・松本人志(51)の「被害者のお父さんがここまで言うなら、僕は読まない」に、「僕も読む気もない」と共感。「"読まない"ということしかできない」と悔しさをにじませていた。
 
 
要するに、出版中止要求に正当性がないことは認めざるをえないが、それでも出版に反対する気持ちがあるので、自分は読まないということを表明して抗議する、ということのようです。
 
ちなみに6月14日のフジテレビの「Mr.サンデー」においても、木村太郎氏が「表現の自由だから(出版は)しょうがないんでしょうが、私は読みません」とまったく同じ趣旨の発言をしていました。
 
読む読まないは個人の自由ですし、それを表明するのも自由ですが、この人たちはキャスターやコメンテーターです。またなにか犯罪が起こればコメントするはずで、そのときのために犯罪者の心理について知る努力をする必要があります。みずから「読まない」と宣言してしまうのは、職業意識に欠けるといわざるをえません。
 
もっとも、コメンテーターには「心の闇」という便利な言葉が用意されています。これからも「心の闇」という言葉でごまかしながら、うわべだけのコメントをしていくつもりでしょう。
 
おとなの犯罪というのは、交友関係も広いですし、複雑な利害関係もありますから、犯行の動機を解明するのがむずかしいこともあります。しかし、元少年Aのように14歳の犯行であれば、家庭と学校しか生活の場がないわけですから、犯行の原因は探すまでもありません(昔は犯罪性向が遺伝するという説もありましたが、今は否定されています)
「心の闇」という言葉を使う人は、もともと真実から目をそむけている人です。
 
アマゾンでの「絶歌」のカスタマーレビューを見ると、本も読まずにコメントしている人がほとんどです(読んでいる人はかなり高いポイントをつけています)。読まずにレビューを書くというのはマナー違反です。こういう人も真実から目をそむけている人でしょう。
 
私は「絶歌」をまだ読んでないのですが、元少年Aも目をそむけている可能性があります。しかし、それは大した問題ではありません。読む側に真実を見ようとする目があれば見えるものです。