居酒屋大手のワタミが8月11日に発表した決算は15億円の赤字で、前年の9億円の赤字から赤字幅が拡大しました。ブラック企業のイメージが響いたようです。
 
ワタミといえば、自社農園を持つなどして「食の安全」をいち早く打ち出し、居酒屋チェーンの中でもひじょうにイメージがよかったものです。それがどうしてここまで転落してしまったのでしょうか。
私の勝手な想像ですが、創業者の渡邉美樹氏が学校経営に手を出したのがつまずきの原因ではないかと思います。
 
渡邉氏は2003年、経営赤字だった私立郁文館 (学校法人郁文館学園)の理事長に就任し、中学・高校の経営に乗り出しました。ウィキペディアの「渡邉美樹」の項目によると、「赤字経営から脱却した」と書いてあるので、経営的には成功したのでしょう。
その後、渡邉氏は教育再生会議委員(第一次安倍内閣)、神奈川県教育委員会委員を務めるなどして、教育に力を入れていきます。
 
現役の大企業経営者が同時に学校経営をするというのはひじょうに珍しいのではないでしょうか(ソニーの井深大氏のように社会貢献という形で教育問題に取り組む人はいましたが)
 
「渡邉(わたなべ)美樹公式ウェブサイト」のプロフィールを見ると、『現在、「学校法人郁文館夢学園」理事長、「公益財団法人みんなの夢をかなえる会」代表理事、「公益財団法人School Aid Japan」代表理事として、カンボジア・バングラデシュの学校建設・孤児院運営にも携わり、現在合計225校(2014年度末)の教育支援に携わる』とあり、企業経営よりも教育のほうに熱心であるようです。
 
なぜそれがつまずきの原因になったと思うのかというと、企業経営と学校経営は真逆のものだからです。
企業経営は、顧客や消費者に喜んでもらうことがたいせつで、それが企業の利益になります。
学校経営では、生徒が喜ぶことは関係ありません。むしろ生徒にきびしく当たることが求められます。生徒が喜ぶような教育は、生徒を甘やかしていると批判されます。
 
教育の世界では、たとえば生徒が不登校になると、学校や教師に問題があるのではないかと考えるのではなく、生徒に問題があるという発想になります。
生徒が宿題をやってこないと、生徒が怠けているからということになり、もっときびしく指導してくださいと親から頼まれたりします。生徒がやりたくなるような宿題を出そうという発想にはならないので、教育のやり方はいっこうに進歩しません。

渡邉氏が理事長を務める郁文館夢学園では、生徒に反省文100枚を書かせるなどして退学者が続出しているという報道がありました。反省文100枚というのはさすがに驚きですが、問題を起こした生徒に反省文を書かせるというのはどこの学校でも行われていることです。

渡邉氏は教育の世界と企業経営の区別がつかなくなり、教育の世界でのやり方を企業経営の世界に持ち込み、従業員をきびしく教育しようとして、それがブラック企業化を招いたのではないかというのが私の考えです。
 
現在、渡邉氏は自民党の参議院議員です。族議員の分類でいえば、文教族ということになるのでしょう。
ちなみに安倍首相も森元首相も自民党の文教族です。
 
「愛国心はならず者の最後のよりどころ」という言葉がありますが、教育というのは、抵抗も反論もできない子どもを相手にして、結果は問われないという無責任な営みなので、「教育もまたならず者の最後のよりどころ」であるようです。