元少年Aが長文の手紙を送りつけてきたということで、週刊文春と週刊新潮がその記事を載せています。私は両誌とも立ち読みしましたが、内容はほとんど同じです。
 
ネットではここが詳しく書いています。
 
ナメクジだらけのHPよりもスゴい中身…少年Aが『絶歌』出版から逃げ出した幻冬舎・見城徹社長の裏切りを告発!
 
また、元少年Aが開設したホームページはこちらです。
 
元少年A公式ホームページ
存在の耐えられない透明さ
 
元少年Aがこの時期に週刊誌などに手紙を送ってきたのは、ホームページを開設したことの宣伝と、「絶歌」の宣伝という意図が根底にあると思われます。ここで取り上げるのは宣伝の片棒を担ぐ格好になりますが、「絶歌」についていろいろと書いてきたいきさつがあるので、やはり取り上げることにします。
 
元少年Aは幻冬舎の見城徹社長のことをひじょうに批判していて、それが手紙の主旨であるようです。
見城社長は最初は「絶歌」の出版に前向きだったのに、途中で態度が変わりました。世間の反応を気づかったものと思われますが、元少年Aはそれを裏切りととらえたわけです。しかし、見城社長は太田出版の岡社長を紹介して、最終的に出版を実現させているので、それほど不誠実とも思えません。
 
元少年Aは「かつては『心の父』と慕い、尊敬していた人物のみっともない醜態を見せつけられることほど辛いものはありません」と書いています。
「心の父」という言葉が元少年Aの思考と感情を解明するキーワードです。
 
元少年Aは両親から虐待されて育ちました。つまり親の愛を十分には受けていないわけです。そういう人は世の中に出てから、親代わりの人を見つけて足りなかった愛を獲得しようとしますが、たいていうまくいかずに人間関係のトラブルを引き起こします。心理学用語の「転移」というやつです。
 
■転移
 transference
 
 カウンセリングや心理療法をしていく中で、クライアントが無意識にカウンセラー・治療者に対して、親など過去に出会った人物に対して抱いたものと同様の感情や態度を示すときがある。
 
 これを転移といい、陽性と陰性に分かれる。陽性転移の場合は信頼、感謝、尊敬、情愛などで、陰性転移の場合は敵意、不信、恨み、攻撃性などの感情である。
 
 治療者は、これらの感情を分析することでクライアントの心の中核に迫っていき、治療に活かすことができる。
 
 クライアントが自分の依存や不安に気づき、こうした転移を乗り越えたとき、治療者との信頼が深まりカウンセリングもスムーズに進む。
 
 クライアントの転移感情は複雑で、甘えと恨みが裏表になっていたり、恋愛感情のあとに攻撃性を示したりなど、両方が現れ、陽性でも陰性でも、そうした感情が強く表れると、反対に治療者が巻き込まれてしまうことがある。
 
 治療過程で、反対に治療者の側がクライアントに特殊な感情(恋愛感情など)を持つようになることを逆転移という。
 
この解説は主にカウンセラーとクライアントの関係のことを言っていますが、見城社長のような権威ある人と新人作家の関係でも当然起こりえます。見城社長にとっては迷惑な話です。
問題は、元少年Aは自分の心理がわかっているのかどうかということです。
 
 
元少年A公式ホームページには「ギャラリー」というコーナーがあって、自作のイラストや写真が多数掲載されています。
同じモチーフのイラストが延々と続いていたり、ナメクジの写真が多数あったりして、見ていると辟易します。
 
私はその中の写真入りのイラストに注目しました。
そこには手書きで高村光太郎の有名な「道程」という詩が書かれています。
しかし、「父」という字が「母」に変えられています。
 
僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
ああ、自然よ
僕を一人立ちにさせた広大な
僕から目を離さないで守る事をせよ
常にの気魄を僕に充たせよ
この遠い道程のため
この遠い道程のため
 
この詩の横にあるイラストは、巨大なナメクジに後ろ姿の裸の男がまたがっていて、ナメクジは向こうのほうに遠ざかっていき、ナメクジの光る軌跡が手前から続いているというものです。
これは母親に対して、お前が育てた息子はナメクジと化して人生の道を歩んでいるのだということを言おうとしたものでしょう。
 
ですから、元少年Aは母親への恨みは自覚しているようです(「絶歌」においては「たっぷり愛情を注いでくれた」「僕は今でも、母親のことが大好きだ」などと書かれていましたが、やはり本心ではなかったのでしょう)
 
母親への恨みは自覚しているが、父親への恨みはあまり自覚していないので、見城社長を恨むことになっているのではないかというのが私の見立てです。
元少年Aはもっともっと自分の生育歴を顧みないといけないと思います。
 
それにしても、元少年Aは「絶歌」の出版ではひどいバッシングを受けたので、もしかして落ち込んでいるのではないかと思ったのですが、どうやら元気いっぱいのようです。常人にはない精神力の持ち主です。
しかし、前向きの気持ちがあれば再犯はないと思います。
落ち込んで、自暴自棄になって犯罪に走るというのが、犯罪の基本的なパターンです。
 
今回の手紙とホームページの開設についても、反省がない、謝罪がないという声が多数上がっています。しかし、そういう人は、元少年Aが反省や謝罪をしたら許すのでしょうか。許す覚悟のある人だけが反省や謝罪を求めるべきです。