安保法案賛成派の主張を聞いていると、要するに「日本一国では台頭する中国に太刀打ちできないので、アメリカに頼るしかない」ということに尽きます。
いろいろ突っ込みたいところはあります。安保条約ではだめなのかとか、アメリカに尽くせばアメリカがお返しをしてくれる保証はあるのかとか。
それでも、この主張が一定の支持を得ているのは事実でしょう。
 
「中国が台頭するのでアメリカに頼るしかない」という主張が一定の支持を得るようになったのはなぜかと考えると、鳩山政権時にさかのぼる必要があると思います。
 
鳩山政権は東アジア共同体構想を外交方針に掲げました。
共同体というとEUのようなものを想像して、とてもむりではないかとも思えましたが、中国や新興国の経済成長が著しいので、アメリカ寄りの外交をアジア寄りにしていこうという方向性は正しいわけです。
 
しかし、これはアメリカにとっては許せません(辺野古移設の日米合意を反故にする動きも同様です)。アメリカの意向を受けた日本の売国勢力が攻撃に出ました。
 
たとえば、200912月に小沢一郎氏率いる大訪中団が中国に行きましたが、このとき胡錦濤国家主席が民主党議員一人一人と握手して写真撮影したことがひどいバッシングの対象になりました。
その後、尖閣諸島で中国船が日本の巡視船と衝突する事件が起きたときは、中国船の船長を釈放したことやビデオを非公開にしたことがバッシングされました。
そして、2012年4月、石原慎太郎都知事がワシントンのヘリテージ財団主催のシンポジウムで講演したときに尖閣諸島購入計画を表明し、これが日本政府による尖閣諸島国有化につながり、日中関係は決定的に悪化しました。
 
ここにはひじょうに巧妙な世論操作の手口があったと思います。「日本は中国よりもアメリカを重視するべきだ」という大きな論陣を張るのではなく、胡錦濤主席と写真を撮ったとか衝突のビデオを非公開にしたとか、小さいけれども具体的なことをバッシングの対象にしたのです。
 
民主党から自民党に政権交代して、安倍首相は本音では「侵略はなかった」とか「南京虐殺はなかった」とか言いたい人ですから、中国と友好関係を結べるはずがありません。とすると、日本はアメリカに依存せざるを得なくなり、安保法制もその流れにあるわけです。
 
アメリカ、官僚組織、マスコミが一体となった、スケールの大きな巧妙な力が働いていると思わざるをえません。
 
振り返ってみると、鳩山政権が目指したアジア重視の外交や辺野古移設の見直しという方向性は正しいものでした。ただ、実行力がなかったのです。
しかし、多くの人は「実行力の欠如」と「方向性の正しさ」が区別できず、ミソもクソもいっしょにして捨ててしまいました。
「方向性の正しさ」を拾い直す必要があります。