ロシアが9月30日からシリアへの空爆を開始し、それに対してアメリカはイスラム国(IS)以外を空爆していると非難しています。
ロシアはイスラム国を空爆するということで空爆を始めたので、言っていることとやっていることが違います。
 
とはいえ、「イスラム国を空爆するのはよいが、ほかの武装勢力を空爆するのは悪い」というアメリカの論理にも説得力はありません。
 
もともとアメリカがイスラム国への空爆を始めたのは、20146月にイスラム国がイラク第2の都市モスルを陥落させ、さらにバクダッド近郊に迫り、イラク政府の存立が危うくなったからです。
アメリカは2014年8月にイラクでの空爆を始め、9月にはシリアへと空爆の範囲を広げました。
 
しかし、アメリカはシリアのアサド政権を否定する立場です。アサド政権と戦うイスラム国を空爆するのは矛盾しています。
アメリカとしては、アサド政権を否定し、イスラム色の強いイスラム国やヌスラ戦線なども否定し、欧米が支援する自由シリア軍に勝利させようというもくろみですが、そんなにうまくいくわけがありません。
 
ロシアは、ロシアのシリア空爆は国際法上も正しいものだと主張し、プーチン大統領は「軍事支援には、国連安全保障理事会の決議か、当該国の要請が必要だが、シリアでは守っていない国々もある」と、名指しこそしないもののアメリカなどを批判しています。
この点はロシアの主張がもっともです。アメリカがイラクで空爆を始めたのは、イラク政府の要請があったからで、集団的自衛権の行使といえますが、シリアでの空爆は無法行為です(ロシアの空爆はアサド政権の要請を受けています)
 
 
アメリカと有志連合が無法行為の空爆をするため、空爆のハードルが下がり、サウジアラビア、トルコ、そして今回のロシアと、空爆する国がふえました。
サウジアラビアはイエメンのシーア派武装勢力を空爆し、トルコはアメリカに同調してシリアのイスラム国を空爆すると言いつつ実際はクルド人勢力を空爆しているとされ、ロシアはアサド政権を守るために反政府勢力全般を空爆しています。
 
国際連盟も国際連合もなかった第一次世界大戦以前の世界に戻ってしまったようです。
いや、あのころはまだ宣戦布告して戦争をするというルールがあっただけましかもしれません。
 
こうした事態を招いたのはアメリカです。しかし、アメリカを批判する声はほとんどありません。まともなことを言っているのはプーチン大統領ぐらいです(ロシアのやっていることはアメリカと大してかわりませんが)
 
日本も本来ならアメリカをいさめなければなりませんが、残念ながら逆方向に行っています。