1113日、パリで同時多発テロがあり、百数十人が亡くなりました。
これについてIS(イスラム国)が犯行声明を出しています。
 
 

パリ同時テロISが犯行声明

 
パリの同時テロ事件について、過激派組織IS=イスラミックステートを名乗るグループは、14日、インターネット上に「キリスト教徒の国フランスに対するパリでの聖なる攻撃」と題する犯行声明を出しました。
 
声明の中で、このグループは、「パリの選び抜いた場所で8人のメンバーが自動小銃と体に巻き付けた爆発物で攻撃を行った」として、スタジアムやコンサートホールの名前を挙げるなどして、これらの場所を同時に攻撃したと主張しています。
そのうえで、「フランスはISの攻撃対象であり続ける。なぜならイスラム教の預言者を侮辱したり、ISの領土に空爆を加えたりしているからだ。今回は最初の攻撃にすぎず、その通告として行ったものだ」と述べ、フランスの空爆を非難するとともにさらなる攻撃をほのめかしています。
 
 
フランスは有志連合に加わってISへの空爆をしていますから、それに対する報復ということでしょう。コンサートホール「ルバタクラン」で銃を乱射した犯人は「オランドのせいだ。お前らの大統領のせいだ。シリアに介入すべきではなかった」と言っていたという報道もあります。
空爆されたからやり返すというのは、彼らとしては当然の論理です。
 
これに対してオバマ大統領は「市民を恐怖に陥れる非道な企てだ。これはフランスに対する攻撃ではなく、世界的な人権に対する攻撃だ。米国は、フランスとともにテロや過激主義に立ち向かう」と語りました。
また、オランド大統領は「攻撃はフランス国内の支援を得て、海外で計画され組織されたものだ。フランスに対してだけでなく自由な声を発する多くの国に対して行われたもので、フランス国内外でISに対して容赦ない措置を取る」と語りました。
 
ぜんぜん話がかみ合っていません。ISは「空爆への報復」だと言っているのに、オバマ大統領は「世界的な人権に対する攻撃」だと見なし、オランド大統領は「自由な声を発する多くの国」に対する攻撃と見なしています。
オバマ大統領やオランド大統領は、「ISへの空爆は正当なものだ。それに報復するのは不当な逆恨みだ」というふうに主張してこそ、ISへ反論したことになります。
 
オバマ大統領やオランド大統領は武力を使うのは得意ですが、言論を使う能力を欠いているようです。これではISがどんどん支持を広げるのは当然です。
 
9.11テロのときも同じことがありました。ビン・ラディンはアメリカの中東政策に反対してテロを行ったのに、ブッシュ大統領は「文明への挑戦」と見なして、武力行使に走りました。このときブッシュ大統領はビン・ラディンに公開討論を申し入れるということもできたはずです。
 
つまりアメリカはテロに対して言論の力を行使せず、もっぱら武力行使をしてきたわけです。
一方、テロリスト勢力は武力ではアメリカに負けるため、言論の力を頼りにせざるをえませんでした。
その結果、「ペンは剣よりも強し」というように、アルカイダは勢力を伸ばし、インターネットをより巧みに使うISはさらに勢力を伸ばしてきたわけです。
 
今私たちは、武力でテロを抑え込もうとするのか、言論の力でテロを解決するのか、分かれ道に立っています。
 
なにも公開討論をする必要はありません。アメリカはテロリスト勢力と交渉すればいいのです。
イギリスのブレア首相はIRA(アイルランド共和国軍)と交渉して、IRAのテロを終わらせました。話し合えばテロは解決できるといういい例です。
 
田原総一朗氏もツイッターでこのように発信しています。
 
 
田原総一朗 ‏@namatahara  
パリのテロでフランスは非常事態宣言をした。テロは許し難い行為ではあるが、イスラム国の攻撃を激しくしてもテロは収まらない。むしろ思い切って外交による交渉をすべきだ。どこか沖縄県と日本政府の対立と似ている。なぜ政府はもっと時間をかけて沖縄と話し合えなかったのか。
 
田原総一朗 ‏@namatahara

沖縄とイスラムを同一視してるのではないです。沖縄に沖縄の論理があるように、イスラムにはイスラムの論理がある。アメリカやフランスがイスラムの論理を踏みにじって武力で封じ込めようとするからテロが起きるのだ。

 
 
このような発想は日本人としては当たり前のことだと思いますし、こうしたことを世界に訴えるところに日本のよさが発揮できます。
 
ところが、安倍首相は「共通の価値観を奉ずるフランスが、いま困難に直面している。日本国民はフランス国民とともにある」とか「日本ができることはなんでもする」とか言っています。武力行使がしたくてたまらないようです。