ドナルド・トランプ氏のイスラム教徒入国禁止発言で共和党支持層のトランプ支持がさらに高まっています。なぜそうなるとかいうと、報道の仕方にも原因があると思われます。
たとえば次の記事は各国首脳の批判の声を伝えていますが……。
 
 
【米大統領選】トランプ氏の“イスラム教の入国禁止”発言に世界から非難集中
 
 イスラム教徒の米国への入国禁止を主張するトランプ氏に、各国の首脳らから批判の声が相次いでいる。
 
 ロイター通信などによると英国では9日、トランプ氏の入国禁止を求める署名が37万人を超え、議会で議論される可能性も出てきた。
 
 トランプ氏はさらに、「ロンドンの一部では過激思想がはびこり、警察官が身の危険を感じている」とも発言した。キャメロン英首相の報道官は「完全な誤りだ」と否定。ロンドンのジョンソン市長も「私がニューヨークの一部に行かない理由は、トランプ氏に遭遇するという危険があるからだ」と皮肉った。
 
 フランスのバルス首相もツイッターで「トランプ氏は憎悪と誤報をかき立てている」と批判した。
 
 イスラエルでは、ネタニヤフ首相が9日、トランプ氏の主張を「受け入れられない」とする声明を発表した。トランプ氏は28日に同国でネタニヤフ氏と会談する予定で、同氏は会談自体はキャンセルしない意向というが、議員の間では「人種差別主義者だ」などと糾弾する声が上がっている。
 
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報道官も8日、難民の再定住計画に「悪影響」だと非難。スコットランドの大学がトランプ氏の名誉学位の剥奪を発表したほか、ボクシング元世界ヘビー級王者のモハメド・アリ氏は9日、「イスラム教を個人の利益追求のために利用する人物に対し、抵抗しなければならない」と暗に批判する声明を出した。(上塚真由)
 
 
ここに出てくるのは欧米の声ばかりです。イスラム圏の声がまったくありません。
モハメド・アリ氏はイスラム教徒ですが、あくまでアメリカ人です。それにアリ氏は過激な言動で知られる人で、イスラム教徒を代表する立場とも思えません。
 
イスラム圏の、たとえばエジプトとかチュニジアとかインドネシアとかの政府首脳の声はなぜ紹介されないのでしょうか。
政府首脳はアメリカに遠慮して発言していないのかもしれませんが、だったらイスラム圏の一般市民や知識人の声を紹介すればいいのです。
トランプ氏は外国のイスラム教徒全員を対象に入国禁止にすると言っているのですから、その対象となる人の意見がまったく紹介されないのはおかしな話です。
 
少なくとも私が探した範囲でそういう記事はありませんでしたが、唯一の例外はマララさんの言葉を紹介したこの記事です。
 
 
■マララさん「憎悪に満ちた発言」
 
 昨年のノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさん(18)が15日、トランプ氏について「憎悪と差別的なイデオロギーに満ちた発言を聞かされるのは本当に悲劇的だ」と批判した。英バーミンガムでAFP通信の取材に答えた。マララさんはこの日、パキスタンで昨年12月に学校がイスラム過激派勢力に襲撃され、生徒ら約150人が殺害された事件の追悼式典に出席していた。
 
 
ひじょうにストレートな言葉で、それだけにこちらの胸に響きます。
 
もしトランプ氏の言うイスラム教徒入国禁止が実行されたら、大きな影響があるはずです。
たとえばアメリカを訪問するイスラム教徒のビジネスマンはいっぱいいるはずですが、そういう人が入国できなくなるとビジネスに支障が出ます。父親がアメリカで働いていて、ときどき故国から家族が会いにくるというケースでは、入国禁止は家族の絆を引き裂きます。アメリカに留学しようと思っている若い人も留学できなくなります。もちろんアメリカに観光旅行するイスラム教徒もいるでしょう。
 
そういう直接影響をこうむる人たちの声を伝えるのがマスコミの役割のはずです。
 
欧米のマスコミはIS(イスラム国)の残虐行為はよく報道し、少女が兵士の妻にされたとか、少女が教育を受けられなくなったとか、“少女ネタ”をよく使います。これはプロパガンダの常套手段です。
同じ手口で、父親に会うのを楽しみにしていた少女が会えなくなるかもしれないと思って胸を痛めているといった具体的な報道をすれば、アメリカでもトランプ氏に対する非難が巻き起こるかもしれません。
 
偏見に満ちた欧米のマスコミ(と日本のマスコミ)は、イスラム教徒がどう思っているかなど報道するに値しないと思っているのでしょう。
こういうマスコミを通して世界を見ているということを忘れてはいけません。