1月4日の株式市場は日経平均600円近く下げ、波乱の船出となりました。
これまでアベノミクスで株価は順調に上がってきましたが、そろそろ反転するかもしれません――などと私が経済予測を語っても、まったく説得力がありません。
ただ、デフレ脱却の成否については、経済指標ではなく要人の発言から自分なりに見通しています。
 

安倍首相は1月4日の年頭記者会見で、「デフレではないという状況を作り出すことができたが、残念ながら道半ばだ」「デフレ脱却というところまで来ていないのも事実」などと語っています。

丸3年やってきて、まだデフレ脱却ができていないのです。
 
では、黒田東彦日銀総裁はどういう認識かというと、昨年6月にこんな発言をしています。
 
 
日銀総裁、心はピーターパン?「疑えば永遠に飛べない」
 
「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう」――。日本銀行の黒田東彦総裁は4日、都内で開いた日銀主催の国際会議で、ピーターパンの物語に出てくる言葉を引き、物価や景気が思い通りでなくても、世界の中央銀行が「前向きな姿勢と確信」をもって政策を進める重要性を呼びかけた。
 
 会議には世界の中央銀行関係者が出席した。黒田総裁は、大量に市場に資金供給をする量的緩和などを各国で続けていても景気回復が緩やかで、かじ取りが難しいことを指摘。「ピーターパン」を持ち出し、課題の克服を訴えた。
 
 日銀が目指す前年比2%の物価上昇率も、2016年度前半ごろまでは実現が難しいと日銀自身が認める。だが、人々に「物価が上がる」と思ってもらうことが重要だとして、黒田総裁は強気なメッセージを出し続け、政策への信頼をつなぎとめようとしてきた。
 
 2月27日の講演では、「ロケット」が登場。「強力な地球の引力圏から離れる時のように、大きな推進力が必要だ」と、デフレからの脱却には2%の物価上昇を早期に実現することが重要だと強調した。
 
 追加の金融緩和をした直後の昨年11月にあった講演では緩和策を「薬」に例え、「デフレという慢性疾患を完全に克服するため、薬は最後までしっかりと飲み切る必要がある。中途半端な治療はかえって病状をこじらせる」と追加の意義を強調した。(福田直之)
 
 
ピーターパンが空を飛べるのは、ティンカー・ベルの魔法の力と、それを信じる心によるということになっています。
 
これは単におもしろいたとえ話かと思っていたら、昨年1219日の日経新聞ではこう書かれていました。
 
 
日銀の政策決定会合内にも木内登英審議委員を筆頭に、「2%にこだわるべきではない」との意見が台頭してきた。対する黒田総裁は「ここで目標を下ろしたらデフレの引力に負けてしまう」との考えを変えていない。
 
 
「デフレの引力」という言葉が出てきます。
「デフレの圧力」とか「デフレの罠」とか、ほかの言い方もあったはずですが、「引力」という言葉を使ったのは、ピーターパンのたとえとつながっています。
 
黒田総裁がほんとうにデフレ脱却に自信があったら、「引力」という言葉は逆の意味で使うはずです。
たとえば、「今の政策を続けていけば、いずれリンゴは木から落ちるだろう」といった具合です。
あるいは、記者から「デフレ脱却の兆しはまったくないではないか」と責められたら、「それでも地球は回っている」をもじって、「それでもデフレは脱却する」と言えばいいわけです。
 
ピーターパンのたとえは、黒田総裁自身がデフレ脱却を信じていない証拠です。
 
もっとも、黒田総裁はみんながピーターパンになればバブルが起きて、デフレ脱却ができると思っているのかもしれません。
しかし、日本人はバブル崩壊の記憶がまだ鮮明なので、バブルに踊るということはないでしょう。外国人が日本株を買ってくるときは、つねに日本の個人投資家が売りに回っているのが実情です。
 
そもそも3年やってだめなものは、4年やっても5年やってもだめでしょう。
 
ところで、私が今年は株価が反転するのではないかと予測するのは、アメリカが利上げして金融引き締めに転じたからです。
予測としてはありきたりです。ありきたりの予測はたいてい当たらないものです。