昨年8月に東京都中野区のマンションで劇団員の加賀谷理沙さんが殺害された事件で、警察は3月12日、戸倉高広容疑者を逮捕しました。加賀谷さんの遺体から検出された男性のDNA型と戸倉容疑者のものが一致したということです。
しかし、戸倉容疑者は容疑を否認しており、戸倉容疑者の実家への家宅捜索でも証拠品は発見されていません。今のところDNA型の一致が唯一の証拠です(14日の昼ごろになって、戸倉容疑者が「私が殺しました」と容疑を認めたというニュースがありました)。
 
警察はどうして戸倉容疑者のDNAを入手したのかというと、戸倉容疑者が「任意提出」したのだということです。
戸倉容疑者がもし犯人なら、どうして「任意提出」したのか不思議です。
いや、「任意提出」していたのは戸倉容疑者だけではありませんでした。
 
 
東京・中野の女性殺害
容疑者逮捕 1000人のDNA型捜査 任意提出受け照合
 
 東京都中野区の自宅マンションで劇団員、加賀谷理沙さん(当時25歳)が殺害された事件は、発生から半年以上が過ぎ、急展開した。警視庁中野署捜査本部は、事件当時近所に住んでいた戸倉高広容疑者(37)を殺人容疑で逮捕した。加賀谷さんの遺体からは男性のDNA型が検出されており、捜査本部は、加賀谷さんの近所にいた住民や知人らのDNA型の任意提出を受けて照合したところ、戸倉容疑者のものが一致した。これまでに任意提出を受けたのは約1000人に上るという。【山崎征克、神保圭作、深津誠】
 
 
 事件は昨年8月26日夜に発覚した。自宅玄関付近で見つかった加賀谷さんの顔にはタオルケットがかけられ、衣服を身に着けていなかった。また、加賀谷さんが直前まで着ていたワンピースや布団カバーなど十数点がなくなっていた一方、携帯電話はそのまま残されていた。
 
 現場付近は防犯カメラが少なく、目撃情報も乏しかった。捜査関係者によると、事件直後に現場付近から行方が分からなくなった人物などが捜査線上に浮上したが、いずれも容疑者ではなかった。「犯人の動機が分からないことがこの事件の難しさ」。そうつぶやく捜査幹部もいた。
 
 最大の手がかりは、加賀谷さんの遺体に残されていたDNA型だった。捜査本部は知人らからDNA型の任意提出を受けるなど「つぶしの捜査」を地道に進めた。捜査の過程で、戸倉容疑者が事件後に転居していたことをつかみ、任意提出を求めたのが2月中旬。DNA型が一致することが判明したのは、逮捕の数日前だったという。
(後略)
 
 
要するに捜査当局は、被害者の関係者や近所の人からしらみつぶしに「任意提出」させていたのです。
その中の戸倉容疑者のものが一致したので逮捕したということのようです。
 
もし戸倉容疑者が犯人なら、「任意提出」は絶対拒むはずです。結果的に提出したというのは、警察のプレッシャーがよほど強烈だったのでしょう(もし戸倉容疑者が犯人でなくて、警察のDNA鑑定がでたらめだとすると、それも恐ろしい話です)
 
DNA検査というのは、綿棒を使って口腔内の粘膜から細胞を採取するというのが一般的なやり方のようです(唾液そのものには細胞がなく、毛髪はすり替えが可能なので)
 
千人もの人が検査に応じたというのは驚きです。戸倉容疑者まで応じたくらいですから、警察はよほど断れない雰囲気で迫ってきたのでしょう。
マスコミはぜひ、「任意提出」した人たちに取材して、警察のやり方はどんなものだったのか報道してほしいものです。
 
警察のやり方がまったく批判されないのは不思議です。
このやり方が許されるなら、事件現場に犯人の指紋が残されたとき、関係者や近所の人から指紋を「任意提出」させるということも行われるようになります。
そして、それらのDNAや指紋がその事件の捜査にだけ使われるならまだしも、警察にデータとして残され、ことあるごとに“活用”される恐れもあります。
やがて全国民のDNAと指紋を採取してデータベース化し、捜査に役立てようという議論も出てくるかもしれません。
 
私がこのようなことを言うと、「捜査に役立つならいいではないか。反対する者は自分が犯罪をするつもりなのか」と反論する人がいるかもしれません。そういう人は“警察性善説”や“権力性善説”を信じているのでしょう。
個々の犯罪も恐ろしいですが、警察全体が犯罪組織化することはその千倍は恐ろしいといえます。
 
とりあえずマスコミには、「任意提出」がどのように行われたのか、「任意提出」した人はどんな気持ちだったのかを報道してもらいたいものです。