イギリスの国民投票でEU離脱派が勝利したのはびっくりでした。世論調査もブックメーカーのオッズも間違っていました。国民の潜在的な怒りが想像以上だったのでしょう。
 
国民の怒りというのは、ひとつは移民や難民に対するもので、これはよく報道されています。
もうひとつは支配層に対する怒りで、イギリス独立党のファラージュ党首は勝利宣言において「大銀行、大企業、大政党に挑んだ庶民の勝利だ」と言っています。
支配層の中でも、EU官僚に対する怒りがとりわけ大きいようです。
 
EUには28か国が加盟し、公用語として24の言語があるそうです。なにかルールをつくるとき、各国の国情を踏まえて交渉し、まとめあげるのはたいへんな作業ですから、実務を担うEU官僚の権力が強大化するのはわかります。
 
朝日新聞の記事によると、彼らは高給を取っています。
 
 
ユーロ危機以降、欧州各国で緊縮財政が続く中、庶民生活とかけ離れたEU職員の厚遇ぶりが度々、非難を浴びてきた。
 
 年金などを差し引いた平均月給は約6500ユーロ(約75万円)で、最高級の局長クラスになれば約1万6500ユーロ(約190万円)に達する。さらに、子ども1人につき月額約376ユーロ(約4万3千円)など様々な手当が上乗せされ、所得税も免除される。退職後は、最高で最終給与の7割の年金をもらえる。
 
 
アメリカの官僚組織は、民主党と共和党の政権交代のたびに上層部が総入れ替えになるということですから、官僚組織の弊害というのはそれほどないかもしれません。その代わり、二大政党が官僚化して、それに対する怒りがトランプ人気、サンダース人気になっていると思われます。
 
社会が複雑化するにしたがって専門家集団の力が強くなります。その頂点にいるのが官僚組織です。
また、トマ・ピケティの理論が明らかにしたように、金持ちはますます金持ちになっています。
その結果、官僚組織、大企業、富裕層への怒りが世界的に高まっているわけです。
 
 
では、日本はどうかというと、怒りはあるものの、そういうところには向かっていません。
国民の怒りの向かう先は、せいぜい舛添知事ぐらいです。あとは不倫芸能人とか経歴詐称キャスターとか。
 
なぜそうなったかというと、民主党政権の失敗があったからでしょう。
民主党は「官僚主導から政治主導へ」あるいは「脱官僚依存」をスローガンに、国民の怒りを集めて政権を奪取しましたが、政権運営に失敗。そして、失敗の原因を総括していません。
今は党名を変えて、その失敗をなかったことにしたいようです。
 
そのため国民は、官僚に対して怒ることを諦めています。
官僚組織と一体化した自民党政権に対しても同じです。
今、自民党政権を批判するネタは立憲主義ぐらいしかありません。
これでは参院選が盛り上がらないのも当然です。
 
今から民進党に民主党政権の失敗を総括しろといっても、今回の選挙には手遅れです。
 
政治の世界も日本は世界の潮流から取り残され、ガラパゴス化しているのは、寂しい限りです。