参院選の結果は、改憲勢力が3分の2を超すことになりました。
それにしても、改憲勢力3分の2を阻止するか否かが最大の焦点になるというのは、五十五年体制とまったく同じです。
第一次安倍政権が失敗したときは、もう改憲はまったく不可能に思えました。オセロゲームで白黒が全部ひっくり返ったみたいでした。
ところが、民主党政権の失敗でもう一回ひっくり返って、元に戻ってしまったわけです。
 
改憲勢力が3分の2を超えたからといって、発議できるだけです。国民投票では否決される公算が大だと思います。
だいたい憲法のどこを変えたいのかよくわかりません。解釈改憲をした今、九条を変える必要性は少なくなっています。そのため緊急事態条項を加えるという議論があります。
つまりなにかの必要性があって改憲するのではなく、改憲のための改憲なのです。
 
安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を言っています。日本国憲法は戦後レジームの象徴なので、なにがなんでも変えたいのでしょう。
 
しかし、ほんとうの戦後レジームは安保体制や駐留米軍の存在です。安倍首相はそこには手をつけようとしません。逆にどんどん対米従属を強めています。
 
「永続敗戦論」の著者白井聡氏は、それは「敗戦の否認」からくるものだと言っています。敗戦という事実を受け入れないので永久に負け続け、アメリカに従属し続けているというわけです。
 
 
民主党改め民進党の場合は、民主党政権が失敗したということを認めない「失敗の否認」です。
失敗したということを受け入れないので、同じ失敗を繰り返してしまいます。いや、今のところ政権の座についていないので、失敗は繰り返していませんが、もし政権を取ったら失敗を繰り返すに違いないと国民に思われているので、今回のような選挙結果になりました。
 
自民党の「敗戦の否認」と民進党の「失敗の否認」がぶつかり合っているので、本来あるはずの政策論争が起きません。
たとえば、民進党の公約の「地位協定の改定」について、そんなことができるのか、どうやってするのかといった議論があっていいはずです。
今回の選挙は各党が言いたいことを言っているだけでした。
 
 
それに加えて、日銀黒田総裁の「敗勢の否認」もあります。
 
黒田総裁は「戦力の逐次投入はしない」と見栄をきって異次元の金融緩和を行いましたが、「2年で2%の物価上昇」という目標は達成できず、第二次、第三次の金融緩和を行い、結果的に戦力の逐次投入に陥っています。しかも、今は投入できる予備兵力も底をついてきました。完全にガダルカナル状態です。それでも楽観的な見通しを語るので、最近は「大本営発表」と言われるようになっています。
 
日銀はETFとRIETという形で大量の株式と不動産を購入しています。目標通りに物価が上がれば高く売れますが、上がらないと損失になってしまいます。黒田総裁の任期は2018年4月までですが、これからどうなるでしょうか。
 
 
安倍政権の「敗戦の否認」、民進党の「失敗の否認」、日銀黒田総裁の「敗勢の否認」と、誰も不都合な現実と向き合おうとしません。
 
ただ、黒田総裁の「敗勢の否認」はタイムリミットがあります。つまりアベノミクスの失敗が顕在化するはずです。ここから日本が動き出すのではないかと思っています。