安倍首相は9月21日、国連総会で演説しましたが、演説のほぼ半分が北朝鮮の核の脅威を訴えるものでした。
しかし、世界のほとんどの国にとっては興味がなかったでしょう。インドがパキスタンの核の脅威をいくら訴えても、日本人にとってはどうでもいいのと同じです。
自国のことばかり考えての演説は世界の迷惑です。
 
とはいえ、日本にとって北朝鮮の核は切実な問題です。
安保法制が成立したから安心というわけにはいきません。
 
結局、安倍政権の安全保障政策は、「一国平和主義」という言葉にならって言えば「一国安全保障主義」です。
「一国安全保障主義」というのは要するに、アメリカに軍事的に協力することでアメリカに守ってもらえば日本は安全になるという考え方です。
しかし、世界が平和にならなくて日本だけ安全になるというわけにはいきません。
 
そもそもアメリカは世界を平和にしようとは思っていません。
アメリカが9・11テロから「対テロ戦争」を始めて15年です。これは百年戦争になってもおかしくありません。
日本が対テロ戦争に協力すると、日本がテロの標的になるのは必定です。
 
では、アメリカは平和を目指さずになにを目指しているかというと、世界の覇権です。
アメリカの軍事費は世界の軍事費の36%を占め、世界の30か国近くに軍事基地を置いています。
昔はアメリカ帝国主義といっていましたが、帝国主義というのは経済的利益を目指すイメージがあります。アフガン戦争やイラク戦争に経済的利益があったとは思えないので、覇権主義という言い方のほうが適切でしょう。
 
覇権が確立されると世界は平和になります。古代ローマ帝国の覇権が確立されたときは「ローマの平和」といわれました。しかし、これはローマ帝国に支配され、奴隷化されての平和ですから、果たして平和と呼べるのか疑問です。
 
安倍政権はアメリカ覇権主義を応援することで東アジアに「アメリカの平和」が確立されることを目指しているのかもしれませんが、これはアメリカに支配されることですから、たとえばトランプ氏が大統領になって日本に軍事費の負担増を求めてきたら拒否することはできません(現にトランプ候補の日本に負担増を求めるという政策に反論する声は安倍政権サイドからは聞かれません)
アメリカに支配されて日本人は幸福でしょうか。
 
それに、中国の覇権主義も台頭してきたので、これから米中という覇権主義国同士の争いが激化すると予想されます。
9月初めに中国杭州で開かれたG20において、オバマ大統領が空港に到着したときなにかのトラブルが起き、中国職員が米大統領補佐官らに「ここはわれわれの国だ」と怒鳴ったということが報じられました。
今後こういう非理性的な対立がふえていくと、どんな不測の事態が起こるかわかりません。
 
そういう中において、安倍政権は尖閣問題にアメリカを引き込もうとして、米中対立をあおっています。
「一国安全保障主義」がかえって世界の安全を損なっているのです。
 
 
安倍首相は国連総会で演説するなら、北朝鮮の核開発のことよりも、キリスト教勢力とイスラム教勢力の融和を説けば、会場の拍手喝采を浴びたでしょう。これこそが「地球儀を俯瞰する外交」です。
もっとも、安倍首相にも外務省にもまったく不可能なことですが。