アメリカ大統領選の第1回テレビ討論会で、日本の基地負担の問題がひとつの争点になり、トランプ候補は、「公平な負担をしないなら日本を守ることはできない」と主張しました。
きっとこの主張は、かなりのアメリカ人の共感を呼んでいるのでしょう。
このような勘違いを生んだのは日本政府のせいでもあります。
 
アメリカ軍が外国に駐留しているのは、必ずしもその国を守るためではありません。
 
アメリカ軍の駐留する人数の多い国のベスト5は次の通りです(ウィキペディアの「アメリカ軍」の項より)
 
ドイツ 68000
日本 38000
韓国 37000
イタリア 10800
イギリス 10600
 
ドイツ、日本、韓国、イタリアと、要するに二次大戦の敗戦国に主に駐留しているのです。
ですから、その国を守るためであるよりは、その国を抑えつけておくためであるかもしれません。
実際のところは、占領したときの惰性で駐留しているのでしょう。
 
ベトナム戦争のときは沖縄の基地から空爆し、コソボ紛争のときは主にイタリアの基地から空爆が行われました。
基地の地理的条件は重要ですが、基地の国籍はどうでもいいことです。
 
アメリカがいちばん守りたい国はおそらくイスラエルでしょう。しかし、イスラエルにアメリカ軍の基地はありません。
台湾も、アメリカとは蒋介石の時代からのつきあいですから、守りたい国であるはずですが、アメリカ軍の基地はありません。
 
日本は、アメリカにとって地理的に重要で、その経済力も重要ですが、守りたいというような精神的な絆はありません。
むしろ真珠湾奇襲攻撃の過去がありますから、根底には不信感を持たれています。
ですから日本は、思いやり予算を提供したり、安保法制をつくったりしているわけですが、やればやるほど信頼を得るどころか、トランプ候補みたいな考え方が広がってしまっています。
 
 
ともかく、アメリカにとっては「基地を置いておきたい国」と「守りたい国」は明確に区別されているようです。
オバマ政権は軍事費をどんどん削減していますが、イスラエルは別格です。
 
 
イスラエル軍事支援、3.8兆円 米が調印 関係改善アピール
 
米・イスラエル両政府は14日、米国がイスラエルに2018年から10年間で380億ドル(約3兆8900億円)を軍事支援する覚書に調印した。二国間での軍事支援では、米国史上最高額。オバマ米大統領は「イスラエルの安全保障への不動の取り組みの表れだ」とし、冷え込んでいた関係の改善をアピールした。
 
 新たな軍事支援は、現在の毎年31億ドルの支援の失効に伴うもの。380億ドルのうち50億ドルはミサイル防衛システムにあてられる。
(後略)
 
 
トランプ候補もイスラエルへの軍事援助をへらすべきだとか、イスラエルは応分の負担をするべきだとかは主張しません。
 
アメリカにとってイスラエルは親藩、日本は外様です。日本はなんとか譜代に昇格させてもらおうと必死のところです。
 
クリントン候補は、日本に対してトランプ候補のようにきびしいことは言いません。
かといって、クリントン候補が日本のことを思いやってくれているわけではありません。
アメリカにとって、広大な基地を提供し、思いやり予算まで払ってくれる日本は、金の卵を産むニワトリのようなものです。トランプ候補はニワトリを殺しかねませんが、クリントン候補は殺さないようにしたほうが得だと知っているだけのことです。